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14.7-08 侵略8

「「「さ、さぶい……」」」ガタガタ


「あー、良い感じね。あとは定期的に魔力を充填して、常に部屋の中を冷たい状態に保てば、長期間食料が保存できるはずよ?当番を変えながら、定期的に魔力を充填することね」


 エネルギアを見てから頭が真っ白になっていた者たちも、流石に倉庫から漏れてくる冷気までは無視できなかったらしく、ブルリと震えながら、我に返った。その様子を見たワルツが、「なるほど、この手があるわね……」などと呟いていたが、その発言が何について向けられたものなのかは、我に返った者たちには分からなかったようだ。


 と、そんな時のこと。テレサが持っていた無線機へと、声が飛んでくる。


『ワルツ様!聞こえますかー?』

『mk1?もっと丁寧に聞かないと怒られちゃうよ?』


 その声は、2人の少女たちの声。空中戦艦エネルギアの化身で、少女の姿をしたエネルギアmk1と、身長20cmにも満たない妖精の姿をしたエネルギアmk2の声だ。


 無線機の声を聞いたテレサは、再びスッと無線機をワルツへと差し出した。やはり、取り次ぐつもりは無いらしい。というよりも、目の前に本人がいるのだから渡して会話をして貰った方が手っ取り早いと考えたようだ。


 対するワルツは、とても嫌そうな表情を浮かべながらも、無線機を受け取った。エネルギアたちの問いかけに答えると、荷物の受け取りの話になり、結果的に不特定多数の生徒たちの前に姿をさらすことになるかもしれないので嫌だったらしい。とはいえ、連絡を無視するわけにもいかなかったので、仕方なく連絡を受け取ることにしたようである。


「はいはい。聞こえてるわよ」げっそり


『……!ワルツ様の声だ!』


『そりゃそうでしょ。呼びかければ返答がもどってくるのは当然だよ』


『う、うぅ……うぅっ!』ぶわっ


『ど、どうしたのさ?mk1。急に泣き出したりなんかして……』


『昨日まではどんなに呼びかけてもワルツ様からは返答が無かったのに、ようやく……ようやく声が聞けたから、嬉しくって……』ぐすっ


「あ……うん……ごめん……」


 無線機の向こう側で急に泣き出したmk1を前に、ワルツは謝罪の言葉以外に何も口にすることが出来なかった。ワルツは、エネルギアたちやミッドエデンのことを放り出して、勝手気ままにレストフェン大公国へ留学(?)したのである。そのことが、精神的に幼いmk1のことを傷付けていたことを知って、申し訳ない気持ちになったようだ。


 しかし、だからといって、ミッドエデンに帰国するかというと、そういうわけにもいかなかった。ワルツにはレストフェン大公国でやらなければならないことがあったからだ。


 ゆえに、ワルツは謝罪をしつつも、言葉を選ぶ。


「もしも声が聞きたくなったら、直接飛んでくるか、ポテンティアか誰かに電波を中継して貰えば、会話出来ると思うわ?」


『戻ってこないの?!』

『戻ってこないんですか?』


「うん。まだ戻らないわ?」


 ワルツは即答した。戻ってきて欲しいと懇願されたとしても、何を言われたとしても、その決意を変えるつもりは無かったのだ。


「(エネルギアたちは悲しむだろうけど、でも、私にも譲れないものがあるのよ。許して)」


 ワルツが心の中でも謝罪しながら、エネルギアたちの次の言葉を覚悟して待っていると、ややしばらくあってから、エネルギアたちの返答が飛んできた。


『しかたないね』


『うん、仕方ない』


『鬼の居ぬ間になんとか、じゃないけど、ビクトールさんと結婚するなら、今しか無いね』


『ふかこーりょくだね。というわけでビクトールさん。けっこんするよ!』


『ちょっ?!お前らが大きくなったら考える、っていつも言ってるじゃないか!』


『『えーっ!けちー!』』


『ケチじゃない』


 どうやら勇者パーティーのメンバーの1人、剣士ビクトールもやってきていたらしい。


 そんな3人に対し、「(さっさと結婚しちゃえば良いのに……)」と唇手前まで言葉が出かかっていたワルツだったが、どうにか飲み込む事に成功する。見ため的に、犯罪臭しかしないからだ。


「ごめん。話を遮るようで申し訳ないのだけれど、通信してきた目的は何かしら?何か理由があって……っていうか、荷物を届けにやってきたのよね?」


 ワルツが問いかけると、エネルギアたちは2人揃って嬉しそうに肯定した。やはり2人からの連絡は、食料品の受け渡しについての連絡だったようである。

 

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