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14.7-06 侵略6

 その姿は、学院全体どころか、遠く離れた森の外側からも見ることが出来た。空に浮かぶ雲を凝縮して固めたような白い巨体——空中戦艦エネルギアの姿である。


 突然、エネルギアの船体が学院のグラウンドに現れたことで、学院内部は騒然を通り越して静かになる。レストフェン大公国にとって、エネルギアは完全なオーバーテクノロジーと言える代物なのだ。驚きのあまり、皆、言葉を失ってしまったのだ。


 エネルギアのことを見ていた学生たちの反応は、大きく分けて2つに割れた。興味を持って眺める者と、恐怖を感じて尻込む者の2種類だ。前者は男子学生に、そして後者は女子学生に多く、エネルギアのことを格好いいと思うか、否かによって反応が分かれたらしい。


 ジャックとミレニアもその例に当てはまっていて、ジャックは——、


「ふぉぉぉぉっ!!」


——という奇声を上げながら、エネルギアに事を見上げ……。そしてミレニアは——、


「…………」ぽかーん


——と口を開けながら上を見上げたかと思うと——、


   バタッ……


——そのまま意識を失ってしまうほどに、エネルギアの姿に驚いていたようである。


 ミレニアが倒れる直前、ポテンティアが彼女の異変に気付いて、そっと彼女のことを支える。


『おや?大丈夫ですか?ミレニアさん』


「   」ちーん


『あちゃー……。これで、意識を失ったのは4日連続ですよ』


 と言って、ミレニアのことを所謂お姫様抱っこ状態で抱え上げるポテンティア。


 そして彼はミレニアのことをそのままカタリナの方へと差し出しながら言った。


『どうやらミレニア様は、連日のように気を失っていることを気にされていたようです。もしかしたら病気なのではないか、と。念のため、身体に異常が無いか調べて頂けないでしょうか?』


 対するカタリナは、ポテンティアからミレニアを受け取りつつ、呆れたような表情を浮かべた。


「……単に、ワルツさんやあなたたちが、彼女の事を驚かせすぎているだけではないのですか?」


『えぇ……否定はできません。それならそれでミレニアさんとは距離を取りますよ』


 ポテンティアがそう口にすると、彼は服(?)をギュッと握り締められる感覚を感じ取った。抱き上げていたミレニアが、無意識のうちにポテンティアのことを掴んでいたのである。


 その様子を見たカタリナが、肩を竦めながら苦言を呈する。


「単に距離を取れば良いというものでもなさそうですけどね……」


 カタリナはそう言って、ミレニアのことをポテンティアから受け取った。


 そんな時、ようやくミレニアの異変に気付いたのか、今まではしゃぎ回っていたジャックが慌てた様子で駆け寄ってくる。


「お、おい!ミ、ミレニア?!大丈夫か?!」


『えぇ、大丈夫ですとも。どうも、上を見上げている内に貧血を起こしたようです。すぐにカタリナ様が診察して下さいますから、ご安心ください』


「大丈夫……なんだよな?」


『もちろんですとも。さて、僕たちは診察の邪魔をする訳にはいきませんから、ミレニアさんの診察が終わるまで、エネルギアの中でも見学して待つことにしましょう。さぁ、どうぞこちらです。付いてきて下さい。迷子になると大変なので、離れすぎないように注意して下さいね?』


 ポテンティアはそう言ってはにかむと、ハッチの中へと歩いて行く。対するジャックは、ポテンティアとミレニアとの間で何度か視線を行き来させるものの、ポテンティアの姿が見えなくなりそうだったためか、彼の背中を慌てて追いかけていった。ミレニアのことはカタリナに任せることにしたらしい。


 そんな2人の事をハッチのところで見送ったカタリナは、ポテンティアたちの後ろ姿に向かって、優しげに目を細めていたようである。


「……シュバルちゃんにもお友達ができると良いですね」


「…………」にゅる?


 シュバルにはカタリナの呟きがよく聞こえなかったのか、彼は首らしきものを傾げるものの、既に歩き出していたカタリナが同じ言葉を繰り返す事なく……。シュバルもまた、カタリナの背中を追いかけて、艦内へと消えたのであった。


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