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6前-11 修復編A4

「・・・なんでここにもドラゴンがいるのよ・・・」


別の鉱山へと銅を採掘しに来たワルツが、坑道の入り口から少し入った所で寝そべる飛竜に思わず呟いた。


「お(うち)と勘違いしたんじゃない?」


そんな姉の言葉を聞きながら、飛竜を眺めていたルシアが口を開く。


「普通、彼らの巣って、入道雲の中にあるんじゃないの?」


「えっ・・・」


・・・なお、普通の飛竜の巣は、山岳地帯などの標高が高い場所に、岩を削って作られる。

もちろん、積乱雲の中に浮いている陸地があるとすれば、そこに巣を作る可能性は否定出来ないが・・・。


「まぁ、この際、飛竜なんてどうでもいいわ。さっさと、銅を掘っちゃいましょう?」


するとワルツは、重力制御で飛竜を浮かべると、力任せに明後日の方向へと放り投げた。


ギャァァァァ・・・


放物線すら描かず、真っ直ぐに空の彼方へと消える飛竜。

擬音で表現するなら、ピカァンッ!・・・というやつだろうか。


「うん。これですっきりしたわね」


「・・・お姉ちゃん、そんなことばっかりやってるから、魔神って言われるんじゃない?」


まるでアトラスの言葉を真似るようにして、ルシアが指摘する。


「・・・うん。自覚が無いわけじゃないのよ?っていうか、魔神じゃないけど」


「私は、お姉ちゃんが魔神でも神様でも構わないよ?」


「・・・ありがとう、ルシア」


「えへへ・・・」


「さてと。じゃぁ、早く終わらせて帰りましょう」


「うん!」


そしてワルツたちは、銅山の坑道奥深くへと入っていった。




そして何事もなく、銅山での採掘を終えた後。


キィィィィィン・・・


「はい、到着〜」


「お姉ちゃん、お疲れ様ー」


「ルシアもねー」


2人は、ワルツの飛行によって、王都の地下大工房へと戻ってきた。


「・・・思ったより少ないね?」


採掘してきた鉄と銅にそんな感想を漏らすルシア。


「一塊にすればこんなものよ?これを薄く伸ばして、形を作れば、もっとおっきく見えるようになるわ」


「ふーん。紙で作った小鳥さん(おりづる)みたいなもの?


「そうそう。そんな感じ」


「そっかぁ」


恐らくルシアの頭の中では、金属製の折り鶴が形作られていることだろう・・・。


「・・・ねぇ、お姉ちゃん?エネルギア君の部品って、すぐに作るの?」


「そうねぇ・・・あと、クロムとニッケルが足りないんだけど・・・あ」


そこでワルツはとあることを思い出す。


「エンチャントを付加すれば、合金にする必要は無いかもね」


クロムとニッケルを必要とする理由は、鉄に耐錆性と耐蝕性を付加するためである。

だが、エンチャントでどうにかなるのであれば、わざわざ合金にする必要は無いと言えるだろう。

ただし、その場合、部品をオリハルコン合金にしなくてはならないのだが。


「じゃぁ、もう、(鉱石)を集めに行かないの?」


「んー・・・」


そこで、一旦悩むワルツ。


(ルシアがエンチャントを掛けて、どうにかなるレベルの大きさかしらね・・・)


ワルツ達が修復しようとしていたエネルギアの部品は、シルビア達の部屋ユニットまるごと1つ分であった。

面積にするなら、およそ200平米だろうか。

それだけの大きさの構造物全体をエンチャントするというのは、一般的に考えると、非常識としか言いようが無いのである。


・・・それでもルシアなら、簡単に実現してしまうことだろう。

しかし、『防錆』『耐蝕』『耐久』のエンチャントを重ね掛けした場合、彼女には相当の負荷がかかるのも、また確かなことであった。

彼女の仕事がエンチャントだけなら、それでもいいかもしれないが、恐らくルシアは、その程度の手伝いでは黙っておらず、追加でワルツの手伝いに参加してくることだろう。


ともすれば、ワルツがルシアの魔力的余裕を考えるのは、姉としては当然のことと言えよう。


「・・・いえ、やっぱりクロムとニッケルは必要だと思うから、明日採掘に行きましょう」


ワルツはそう判断を下す。

・・・だが、


「・・・うん」


ルシアからの返事は芳しくなかった。

エネルギア少年のことが心配らしい。


「大丈夫よルシア。1日や2日待っても、エネルギアの損傷が広がることはないんだから」


なお、1日や2日どころではなく、半永久的に損傷箇所が拡大することはない。

だが、それでも期間を提示したのは・・・できるだけルシアを落ち着かせたかったワルツなりの思いやりと言えるだろうか。


「うん・・・じゃぁ、今日はもう終わり?」


「そうね。あとは工房にある炉を使って精錬できるから、今日はもうおしまいにしましょう?その代わり、明日は朝早くから作業を再開するから、その時、手伝ってくれる?」


外はまだ暗くはなっていなかったが、クロムやニッケルが採れる火山への往復や、採掘、精錬などの時間を考えると、帰りは相当に遅くなってしまうことは明白であった。

ワルツだけなら不眠不休で作業を進められるが、まだ子供であるルシアを連れて作業するというのは、やはり危険であると言わざるを得なかったのである。


「うん。分かった」


素直に頷くルシア。

どうやら、そんな姉の懸念が、ルシアにも伝わったようである。


「じゃぁ、また夕食の時間に会おうね」


そう言うとルシアは王城に繋がるエレベーターの方へと走っていった。


「・・・ふぅ。今度こそ、私の修理が出来るかしらね・・・」


そう言いながら、石油を精製している化学プラントの方へと足を向けるワルツ。

中々進まないホログラムの修復に、彼女は頭を悩ませるのであった・・・。




そして夕食の時間。


「今日のメニューは・・・ワルツの大好きなグラタンだ!」


エネルギア内の食堂が使えなくなったために、臨時の食堂と化した大工房の長机に集まった仲間たちを前に、狩人が声を上げる。


「・・・あの、狩人さん?いつも、私の好きなメニューって言って食事を用意してくれますけど、私、ニンジン(とヘルチェリー)以外に好き嫌い無いですよ?」


『えっ?!』


・・・ワルツのまさかの暴露に、驚愕の視線を向ける仲間たち。


「お、お主、ニンジンが嫌いじゃったのか?!なんと勿体無いことを・・・」


「・・・そういうテレサだって、最後まで残してるじゃない・・・」


「・・・バレておったか・・・」


『・・・』


どうやら、ニンジンが嫌いなのは、ワルツだけではなかったようである。


「ダメだぞ?お前たち。ニンジンには」


「ニンジンにはビタミンAや食物繊維が豊富に含まれていて、風邪の予防や、貧血、むくみ、そのほか美容にも効果があるんですよ?」


狩人の言葉を遮って、カタリナが口を開く。


「・・・そうだったのか・・・」


・・・カタリナの言葉に感心する狩人。

狩人が言わずとも、十分以上にカタリナが説明してしまったようだ。


「・・・ニンジンを食べたら、身長は伸びますか?」


どこか悲しげな顔をしながら、シラヌイがカタリナに問いかける。


「そうですね。ニンジンを食べて身長が低くなるという話はないので、食べておいて損は無いはずですよ?」


なお、食べなくても・・・いや、偏食せずバランスよく食べることが、成長には必要なのである。


「分かりました。頑張って食べようと思います」


どうやら、シラヌイもニンジン嫌いだったらしい。


「あ、でも、今日のグラタンに、ニンジンは入ってないからな?」


「・・・話の内容からすると、てっきりニンジンが入っているような感じだったので・・・少し残念です」


折角、身長が伸びるかもしれないのに・・・といった様子で、グラタンを見つめるシラヌイ、他1名。


「さぁ、冷めない内に食べてくれ」


満面の笑みを浮かべながら、狩人が食事を促した。


『いっただきま~「ちょっと待って」え?』


皆の『いただきます』に割り込むワルツ。


「ねぇ、誰かルシア知らない?」


「そういえば、いないですね?」


ワルツの言葉で、初めて気づいた様子のテンポ。


『ルシア?』


ワルツが無線機に向かって問いかけるも・・・応答はない。


「えっと、私、見てきますね〜」


そう言ってユリアが席を立とうとするが・・・


「いや、私が見てくるわ」


ユリアよりも先にワルツが部屋から出て行った・・・。




「ルシア?」


ワルツは最初に、地下工房にあるルシアの部屋の中を覗き込んだ。

・・・だが、部屋の中は真っ暗で、誰かがいる気配はない。

実際、生体反応は無かったので、部屋の中にルシアはいないようである。


「・・・?(王城)かしら」


先ほど、彼女と別れた際、王城へと走っていったルシアの姿を思い出すワルツ。


『・・・コルテックス?そっちにルシア行ってない?』


無線機でコルテックスに確認を取るが・・・


『来てませんよ〜?』


『ごめんなさいね。ありがとう』


・・・コルテックスのところには行っていないようである。


(・・・稲荷寿司屋?)


王都のメインストリート近くにある空き家に繋がるエレベータに乗って、稲荷寿司屋へと向かうワルツ。

・・・だが、


「定休日・・・」


という看板が屋台に掛けられ、誰もいなかった。


「・・・」


ここにきて・・・いや、ここに来る前から、何となく嫌な胸騒ぎがしていたワルツは、確信する。


(あの子、一人で採掘に出かけたわね・・・)


・・・どうやらルシアにとっては、余程、エネルギア少年のことが心配だったようである。

いや、まだ暗くなる前に作業を終えたため、体力を余していた、とも言えるだろうか・・・。

随分な量の魔物(ドラゴン)がミッドエデン内に蔓延っておるようじゃ・・・。

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