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14.6-35 支援35

 固まった狩人とユリアたちだったが、どうやらワルツがしようとしていた事に対して驚いていたというわけではなかったようだ。というのも、ワルツの一言を聞いてからと言うもの、2人が揃って脂汗のようなものを流し始めたからだ。


「……?どうかしたのですか?狩人さん。それにユリアも」


「な、な、なんでもないぞう?なぁ、ユリア?」

「そ、そ、そうですよ。何でもありませんよぉ?」


「なにその、何でもあるかのような言い方……」


 ワルツがジト目を向けると、同じタイミングでジュワーとフライパンから音が鳴り始めた。


「おっと、料理料理!」


「か、狩人さん?!」


「あとは任せた!ユリア!」ズササッ


「…………」


 ユリアは、フッと顔から表情を消してしばらく考え込んだ。そして、スッとワルツの方を向いて、何事も無かったかのように口を開く。どうやら本気で言い訳を考えたらしい。


「……いや、まさか、ワルツ様がこの国でも巨大な戦艦をお造りになるのではないかと驚いてしまったんですよ」


「それならそうと最初に言えば良いのに、わざわざ言い難そうにする必要なんてどこにあるのかしら?」


「……何ぶん、久しぶりのことだったので……」


「……ユリア?」じとぉ


「…………」すっ


「…………」じとぉ


「…………」だらだら


 ワルツはジィッとユリアを見つめた。例えユリアが視線を逸らそうとも気にする事なく、ジィッと見つめ続けた。そればかりか、椅子から立って、ユリアが視線を逸らしている先から覗き込むように見つめ返した。自分がやられると嫌な事をユリアにもしようと思ったらしい。そうすればユリアが口を割るのではないかと考えて。


「…………」


「…………」


「…………!」


「……えっと、ワルツ様?睨むだけならまだ良いのですが、変顔をしながら見つめるのはやめていただけないでしょうか?」


「えっ……ごめん……。そんなつもりはなかったんだけど……」


「えっ……」


 ユリアは違う意味で顔を青ざめさせた。ワルツが否定した以上、何もしなくてもワルツが変顔だと言ったようなものだからだ。


 対するワルツは、ここぞとばかりに、ユリアのその悪手を利用する。


「えぇ、いいわ。ユリア。貴女や狩人さんが話せないことって言ったら、カタリナ関連か、コルテックス関連しかないはずだけど、カタリナが隠し事をするとは思えないから、コルテックス関連なんでしょ?きっと。でも、変顔の私には話せない、と。えぇ、コルテックスにだけ尻尾を振っていれば良いのよ。私、変顔の村娘だし……」ぷいっ


「あああああ!」


 ユリアは両手を頭に当ててプルプルと震えだした。ワルツ教(?)の敬虔な信徒(?)として、取り返しの付かないことをしてしまったと後悔していた——ことが半分と、もう一つ——、


「ヤバい、このワルツ様かわいい……」


——禁断症状を発症していたらしい。


「え゛っ」


「狩人様!このワルツ様、持って帰っても良いでしょうか?」


「あん?良いんじゃないか?私は大賛成だ」


「ちょ、まっ!」ズササッ


 ワルツは全力で後ろに下がった。ユリアの視線が、まるで獲物を見つけた肉食獣のようになっていたような気がしたからだ。


 そんなワルツの行動に「ふふっ」と笑みを浮かべた後、ユリアは改まった様子でこう言った。


「この件についてコルテックス様から言伝てを頂いております。……直接聞きに来ればお話ししますよ〜?とのことです」


 対するワルツは——、


「……ないわね」


——迷うこと無く一刀両断して、ミッドエデンに一時的にでも帰ることを拒否したのである。


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