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14.6-33 支援33

 ワルツが居残りで(?)自動杖の実験を行い、冷凍庫の実現に向けた足がかりを確立した後。いつもの4人の他、狩人とユリアの合計6人は、一緒になって下校をしていた。


 ちなみに、狩人とユリアは、幻影魔法によって人の姿に変身している。学院の者たちに人族ではない姿を見られれば、大騒ぎに発展するのは不可避。しかも、騒ぎが生じれば、その中心になるのはワルツたちなので、彼女たちに迷惑を掛けたくないと気を配った狩人とユリアが、自発的に姿を変えたのである。


 そして陸橋の先にある村へと辿り着いてから、軽く村の中を見て回った後、一行は村の地下にある大空間まで戻ってきた。大空間が見下ろせる場所までやってきたところで、狩人は、驚くことなく、むしろ納得げに、目に見える景色の感想を口にする。


「やっぱり、地下に家を作ってたんだな……。上の村といい、地下の空間といい……アルクの村を思い出すようだ」


「まぁ、このくらいのサイズの村が生活しやすいですからね。あまり大きくなると人目が気になりますし……」


「……なぁ、ワルツ。まさかと思うが……この村にも、私みたいな騎士がいるのか?」


「狩人さんみたいな騎士、ですか?いえ、いないと思いますよ?少なくとも、私は見たことが無いです。ただ、地下で生活している人たちの半数は、ジョセフィーヌの近衛騎士ですけれどね?」


「……そ、そうか……」


 狩人は一瞬だけフラリと足をもつれさせて、頭を抱えた。どうやら急な立ちくらみに襲われたらしい。一体どんな理由で立ちくらみに襲われたのかは不明だが、彼女はブツブツと——、


「私のアイデンティティーって何だ……」


——などと口にしていたようだ。なお、ワルツがそれに気付いた様子は無い模様。


 というのも、彼女は自宅に繋がる長い階段を下りながら、ユリアとも話をしていたからだ。


「で、ユリアたちの目的は何なのかしら?単にジョセフィーヌや学院長に挨拶をしに来た、ってわけじゃないわよね?」


 対するユリアはニヤリと意味深げに笑みを浮かべると、ワルツよりも数段先に降りたところで、くるりと後ろを振り返り——、


「ふふっ!実はですね……ただ遊びに来ただけです!」


——そんな事を言い出した。


「……えっ?」


「カタリナ様とコルテックス様だけ、ワルツ様たちに会えるなんてズルいと思いませんか?それに私、まともに休日すら取れていないんですから、このくらいの我が儘をしてもいいと思うんです」


「あ、うん……なんかごめん。休みが取れるよう、今度、コルテックスに言っておくわ……」


 もしやミッドエデン政府は、所謂ブラックな職場になっているのではないか……。そんな確信めいた不安を感じながら、ワルツが謝罪すると、ユリアは苦笑しながらもう一言、言葉を追加した。


「まぁ、休暇と言っても、今日の夕食を食べたら帰らなきゃならないんですけどね」


 そんなユリアの発言に、ワルツは珍しく空気を読む。


「……ごめんね。ユリア。私たちが学生をしてるから、その分、忙しくなっちゃってるんでしょ?」


 対するユリアは即答で首を横に振った。


「いえ、全然」


「……えっ?」


「ワルツ様方がいてもいなくても、円滑に国を回すというのが私たちの使命。なので、ワルツ様方がいなくなることで私たちに負担が掛かるような事はありません」


「……ごめん。それってつまり、私たちは——」


「もしも私たちの手に余るような事件が起こったときは、遠慮無くお声かけさせて頂きます」


「……なんか、取って付けたような言い訳に聞こえなく無いけど……まぁ、良いわ」


 実のところ、自分たちは、ミッドエデンにとって不要な存在なのではないか……。そんなことを考えるワルツだったものの、それをユリアに問いかけるのはあまりに恐ろしすぎて、ワルツは敢えて問いかけるようなことはしなかったようである。


 そうこうしているうちに、一行は地下の自宅へと辿り着いた。


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