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6前-10 修復編A3

エネルギアで爆発が起った日の午後のこと。


「あー、もう!アイテムボックスが無いって、何でこんなに面倒なのよ・・・」


王都からほど近い山岳地帯にあった鉱山で、穴を掘りながらワルツが嘆いた。


「お姉ちゃん・・・まだ2回目だよ?」


鉱石を採掘して、精錬して、工房に転移させて・・・のループ2回目である。


「あのね、ルシア。もしもここにアイテムボックスがあったら、この鉱山を1時間で枯渇させることだって出来るのよ?精錬して体積を減らす必要もないし、作りたい時に作りたい分の合金も用意できるし、何だったら転移させる必要もないし・・・分かる?」


「んー、よく分かんない!」


「だよね〜。でも、お腹減った時、いつでも稲荷ずs」


「あー、もう!アイテムボックスが無いって、何でこんなに本当に不便なんだろうね、お姉ちゃん!」


「・・・あ、うん・・・そうよね・・・」


嘆いている割には、そんなノホホン(殺伐?)とした空気を漂わせながら、ワルツとルシアは作業を続けていた。


ここで採掘しておきたいのは、前回のターボ分子ポンプの製造で、材料としての実用性が確認された、オリハルコン魔法合金の材料・・・まぁ言うまでもなく、オリハルコンである。

他には、鉄や鉄、それに鉄くらいだろうか・・・。

まぁ、鉱山では、鉄とオリハルコン以外には採掘できないとも言えるが。


ところで、何故ワルツ達は、普通の鉱山に来ているのか。

ここはワルツが発見した脱法鉱山(?)ではなく、ミッドエデン国家の所有する由緒正しき鉱山である。

いつものワルツなら、見知らぬ鉱夫たちが働いている鉱山に好きこんでやって来ることはないのだが、この日は少々訳ありであった。

・・・もちろん、エネルギアの為に身も心も削って我慢した結果・・・なんてことはありえない。


「ねぇ、お姉ちゃん?大丈夫かなぁ・・・洞窟の中に魔物が出るっていう話・・・」


・・・そう、鉱山の中に魔物が住み着いたために、鉱夫たちが採掘作業を中断していたのである。

要するに、坑道の中には、ワルツとルシア以外に誰もいなかったのだ。


「やっぱり、怖い?」


「んー、怖くないって言ったら嘘かも」


「そっか。まぁ、採掘しながら周りの様子を確認してるから、私から離れなければ問題無いわよ」


「・・・うん」


そして、ワルツの足元にくっつくルシア。


(そんなに怖いの?)


むしろ、ルシアがいることで、坑道に入りこんだという魔物の方が怖がっているんじゃないか、と思うワルツ。

もちろん、そんな余計なことは口にしないが。


そして、鉱石が大分溜まった所で、比較的広い空洞部分まで移動して、精錬の作業に移る。


「じゃぁ、ルシア?炭を頂戴?」


「はい」


ルシアが頷いた瞬間、


ドゴォォォォン!!


・・・突如として虚空から、坑道を埋め尽くさんばかりの大量の炭が現れる。


「やっぱり何度見ても凄いわね。転移魔法って」


「うん!」


大工房の中に大量の炭を事前に用意しておいて、必要になった時にルシアの(逆?)転移魔法を使って召喚すれば、アイデムボックスが無くとも自由に炭の調達が出来るのである。


「じゃぁ、行くわよ?」


そう言うと、いつも通りに鉱石と炭を宙に浮かべるワルツ。

すると、


「加熱するね」


何も言われなくとも、まさに流れるようにして、超大出力の火魔法を行使するルシア。


「はい、おしまい」


「・・・早いわね・・・」


200tにも及ぶ鉄鉱石の加熱が、たったの5秒で終わった。

エネルギーに換算するなら、定格出力はおよそ4.8GWギガワット

原子炉に換算すると約5000機分の出力に相当するだろうか。


(もう、ルシアが魔神って言われても驚かないわよ・・・)


と思うワルツだったが、人のことを言えた義理ではないので、頭を切り替えることにする。


「さてと。じゃぁ、この金属も、工房に転移させてもらえる?」


「はい」


ルシアが赤熱する金属に手を翳すと、


ブン・・・


金属が虚空へと消えた。

恐らく、地下大工房の滑走路上には、赤熱したままの金属塊が転がっていることだろう・・・。

・・・もちろん、ニトログリセリンを放置した場所とは異なる場所に、である。


「んー、もう鉄は十分だと思うから、次の・・・そうね、銅山に行きましょうか」


「うん。分かった」


そう言ってルシアが入口の方を振り返った時だった。


ドン・・・ドン・・・ドン・・・


そんな足音のような地響きが、坑道の中を()るがす・・・。


「ん?魔物かしらね?」


「・・・やっぱり、怖い・・・」


そう言いながら、ワルツよりも先に歩いていたルシアは、再び姉の足へとしがみついた。


(んー、怖がる必要なんて無いと思うんだけど・・・仕方が無いかしらねぇ)


そんな怖がり(?)な妹に内心で苦笑しながら、ワルツは坑道を入口の方へと移動し始めた。


すると、


ドシン!

ドシン!

ドシン!


文字通りドンドンと、足音が大きくなってくる。


「・・・やっぱりこれ、近づいてるわよね?」


「う、うん・・・」


それでも、足を止めずに進んでいくワルツ達。


・・・そして、小さな横穴から、入り口へと続く大きな坑道へと足を踏み出した・・・その時であった。


『あ・・・』


「グルルルル・・・」


ワルツたちは件の魔物と鉢合わせしてしまったのである。

もっと具体的に言うなら、全長15m程度の黒っぽい色をした地竜と、出会い頭に視線が合った、といった様子だ。


「・・・ま、どうでもいいけどね」


「えっ・・・」


全く緊張感も殺気もないワルツの言葉に、思わず驚くルシア。


「いや、だって、相手はたかだか地竜1匹よ?しかも小さいやつ。今更、驚くことでもないじゃない?」


なお、比較対象である水竜の元の姿は、全長50m程である。


「んー、確かに、姿が見えなかった時は怖かったけど、相手が何かって分かったら大したことないかも」


・・・なお、一般的な冒険者は、地竜と鉢合わせした場合、『知らないほうが良かった・・・』と思うのが普通だ。


「じゃぁ、帰りましょうか」


「うん!」


そしてワルツとルシアは、地竜の横をすり抜けて、出口へと向かおうとする。


・・・だが、そんな隙だらけの彼女達を見逃すわけもなく、


「ガァ!!」


地竜が大口を開けて、噛み付こうとしてきた。

そして、そんな地竜の攻撃を、逃げようとも避けようともしなかったがために、


ガキン!!


ワルツは噛みつかれてしまった・・・。

・・・しかし、同時に、何かが折れるような音が聞こえてくる。


「ガァ?!?!」


突然の痛みに、地竜は思わず後退(あとずさ)った。

どうやら、ワルツを噛み砕こうとした歯が、ボロボロに折れてしまったらしい。


・・・ちなみに、彼ら地竜の主食は、動物の肉や骨、さらには鉱石・・・に含まれるマナである。

そのため、硬い岩盤を噛みちぎる程に歯と顎が発達しているわけだが・・・ワルツには全く()が立たなかったようだ。


「うわぁ・・・きったない・・・何でヨダレまみれにするのよ・・・」


身体に付着した地竜の唾液を、重力制御で浮かせて落とすワルツ。

まさに、洗剤要らず・・・どころか、(こす)る必要も無い。


なお、この唾液は強酸性な上、強力な金属分解酵素が含まれているため、普通の金属なら、一瞬で溶けてしまうほどのものであった。

もしもこれが、エネルギア少年が使っているロボットなら、ひとたまりもなかったことだろう。

尤も、機動装甲には関係のないことだが。


「どうするのお姉ちゃん?消し飛ばしちゃう?」


「うーん。別に私に噛み付いた所で、何も害はないし別に放っといてもいいんじゃない?」


(というか、女の子がそんなこと口走っちゃダメよ・・・)


と思いつつも、言葉を飲み込むワルツ。


「お姉ちゃんがそう言うなら、良いのかなぁ・・・」


ルシアは、地竜が住み着いてしまったために、仕事ができない鉱夫達のことを心配しているようである。


「あんまり、能力の安請け合いをしちゃダメよ?その内、無理難題を押し付けられても嫌だし・・・」


と、兄姉に度々仕事を押し付けられていたことを思い出すワルツ。


「んー、よく分かんないけど、分かった。じゃぁ、次の所に行こっか」


どうやらルシアは、考えることを止めたようである・・・。


「うん、行きましょう」


・・・というわけで、坑道に地竜を放置して、出口の方へと向かおうとしたワルツ達だったが・・・

地竜がいつまでも歯の痛みに狼狽えている訳がなかった。


「グルルル!!」


そんな唸り声と共に地竜の周囲に発したのは、坑道を埋め尽くさんばかりの石礫(いしつぶて)

そんな壁のような大量の岩石が、一斉に動き出す。

・・・もちろん行き先は、地竜に背を向けて歩いているワルツとルシアだ。


ヒューン・・・


殆ど音もなく、ワルツ達の背後から殺到する直径5cmほどの岩石に、気づかない様子の2人。

衝突まで5mを切っても背を向けたままの彼女たちに、地竜は自分の勝利を確信する。


・・・まぁ、その程度のことで、ワルツとルシアにケガを負わせることが出来るはずもなく、


コツン・・・

コツン・・・

コツン・・・


彼女たちに当たると、まるで重さが無いかのようにして、地面に落ちるのであった。


『ん?』


後ろから飛んできた発泡スチロールのような軽さの何かに、振り向くワルツとルシア。

その際、ワルツの眼が赤く輝いていたところを見ると、どうやら重力制御を使って石礫の質量を打ち消していたようである。


「小石?」


「・・・崩落しかかってるのかしら?」


ドゴォォォォン!!


そして、実際、崩落する坑道。

全く崩れる兆候のなかった坑道が崩れてしまったのは、どういうわけだろうか。


「あー、崩れちゃったわね」


「うん、もう少しで危なかったね。・・・あの地竜さん大丈夫かなぁ?」


恐らく崩落に巻き込まれてしまっただろう地竜を心配するルシア。

仕事を失いかけている鉱夫のことも、彼らから仕事を奪っている地竜のことも心配しなくてはならないというのは、中々に忙しいことである。


「んー、大丈夫じゃない?さぁ、行きましょうか」


「うん!」


・・・こうして、地竜を生き埋めにしたワルツは、ルシアと共に次の鉱物を採掘するため、別の鉱山へと向かったのであった。

書いてて思ったのじゃが、修復編と言うよりは採掘編かもしれぬのう・・・。

じゃがこの話が無いと、エネルギアの・・・いや、何でもないのじゃ。


ん?何じゃ主殿?

・・・妾の絵が()けたと?!

ふむ。で、いつ見せてくれるのじゃ?

気が向いたら?・・・主殿、それは描けたと言わぬのじゃ・・・。

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