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14.6-28 支援28

 ポテンティアが騎士たちに対して妙な性癖(?)を植え付けてから、元の少年の姿に戻った後。ジョセフィーヌは改まった様子で服の裾を整えてから、おっほん、と咳払いをして、要件の続きを話し始めた。


「もう一つ、感謝申し上げることがございます。先日、学院内に運び込まれた物資の件です。本当は昨日の段階でご挨拶に参ろうかと思っていたのですが——」


「私たちの教室に来る直前で誘拐された、と。なるほどね」


 ワルツが相づちを打つと、ジョセフィーヌが申し訳なさそうに首肯する。


「はい。そうなのです。もしもあのとき、私が護衛を付けて歩いていれば……」


「結果的には何も変わんなかったと思うわよ?」


「……そうですね。そうかもしれません。いずれにしても、物資のご提供について感謝申し上げると共に、ご挨拶が遅れてしまったこと、心より謝罪申し上げます」


「別に気にしてないわ?それに、物資の話は私たちも昨日送ってくるとか知らなかったし、中身とかも知らなかったし、欲しいものも入ってなかったし……」


 ワルツが不満げにそう口にすると、ルシアは何度も頷いていた。もはや怒り心頭といった様子だ。稲荷寿司が物資の中に入っていなかったことが気に食わなかったらしい。物資輸送の責任者が近くにいたなら、恐らくは氷魔法か何かで八つ裂きにしていたに違いない。


「そんなご謙遜を……。ご提供頂いた物資は、我が国では手に入らないような高品質のものばかりだと聞いております。そのような高級品をご提供いただけるなど——」


「正直、その辺、何が高級品なのかよく分からないのよね……。使えれば皆同じような気がするし……。まぁ、とにかくよ?私たちに感謝されても困るわ?90%くらいは無関係だから」


 では残り10%は何なのか……。ワルツの話を聞いていたジョセフィーヌは脳裏でそんな事を考えるが、ワルツが謝辞を向けられる事に忌避感を感じているのは目に見えて明らかだったので、余計なツッコミやこれ以上の謝辞はやめておくことにしたようである。


「では、今回、物資のご提供を計画された方や、輸送に携わった方々に、感謝している旨をお伝え下さい。また、直接感謝できないことをお許し下さいとお伝え下さい」


「あ、うん。輸送した人物ならそこに……まぁ、いっか。計画した人間は、多分、呼べば来ると思うけれど、カオスになるだけだからやめておいた方が良いと思うわよ?」


「えっ……カオス……?」


 カオスという言葉に、ジョセフィーヌが首を傾げた瞬間だ。


   ガチャッ……


 ノックも無く、大講義室の扉が開かれた。しかし、その向こう側には廊下ではなく、真っ暗闇が広がっていて、ただ扉が開かれたわけではないことは明らか。コルテックスの魔道具"どこ()でもドア"の効果だ。どうやら噂をすればなんとやら——というより、呼ばれるのを待っていたようである。……原理は不明だが。


 しかし、扉の向こうから現れたのはコルテックスではなく——、


「!ワルツ様!ルシアちゃん!テレサ様!おひさしぶr——」


——情報局局長のユリア——、


   ドンッ!


「ぐへっ?!」


   ドサッ!


——の姿もチラリと見えたが——、


「ワルツ!」


——最後に扉の前に立っていたのは狩人だった。なお。ユリアは後ろから出てきた狩人に轢かれて(?)その場でそのまま動かなくなってしまった模様。


 大講義室に現れた狩人は、知った顔であるルシアとテレサを見つけて、顔をぱぁっと明るくさせるが、その場に目的の人物の姿を見つけられなかったせいか、今度は急激にしょんぼりとしていく。


「ワルツが……いない……」しゅん


 頭の猫耳を倒して残念がる狩人に対し、ワルツは言った。


「あの、狩人さん?ワルツならここにいますけど……」


「うん?ワルツがここに……ハハ……いやいや、待ってくれ。……まさか……そんなことが……」


「どんな勘違いをされているのかは分かりませんが、これが本来の私の姿です」


「ど、どうして……どうしてなんだっ!ワルツ!」わなわな


「えっ……いや……どうしてと言われましても……機動装甲を失っt——」


「前よりも可愛くなっているじゃないか!」がっ!


「……いや、むしろ、どうしてそう思ったのか、私が聞きたいくらいなんですけど……」


 まるで、久しぶりに会った姪っ子が思いのほか大きくなっていて、それを見て大喜びする叔母のごとく、狩人はワルツに抱きついて、その頭を撫で回した。


「ちゃんと食べているか?最近痩せたんじゃ……いや、小さくなったよな?今日は差し入れを持ってきたから一緒に食べよう!ルシアもテレサもだ。二人はちょっと見ない間に大きくなったんじゃないか?ルシアは縦に高くなったみたいだが、テレサは横に広くなっているみたいだ!」


「ちょっ?!馬鹿なっ?!」

「えっと……少し背、伸びたかも知れないです」

「(滅茶苦茶、狩人さんのテンション高いわね……)」


 狩人の言葉に、テレサとルシア、それにワルツがそれぞれ異なる反応を見せていると——、


「し、死ぬかと思いましたよ……」よろよろ


——物言わぬ屍と化していた(?)ユリアが復活して戻ってきた。


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