14.6-17 支援17
自動杖の仕組みについて教えて貰えないことは予想出来ていたためか、ワルツの立ち直りは早かった。……というより、彼女は今回の授業内容に大きな懸念を抱えていたので、凹む余裕が無かったと言った方が良いかも知れない。
彼女が心配していたのは、自動杖の使い方についてだった。もしも自動杖を使う事自体に、魔力か、あるいは魔力の操作が必要になるというのなら、魔力が無いワルツにとっては扱えない代物、ということになるからだ。もしもそうだとすれば、ワルツが学院にいる理由は無くなり、機動装甲の再建造計画にも大きな変更が生じるのは間違いなかった。
ゆえにワルツはハイスピアの話に意識を集中させた。吉と出るか、凶と出るか……。気分はおみくじかを引くのと同じ、といったところか。
対するハイスピアは、ワルツから向けられた並々ならぬ熱意を感じ取っていて、人知れず緊張していたようだ。ハイスピアとしては、ワルツたちに対して仕組みを教えられなかったことで申し訳なさを感じており、使い方をちゃんと説明できるのか心配していたのである。
しかし、このまま黙っているわけにはいかず……。ハイスピアは意を決すると、自動杖を手に持ちながら説明を始めた。
「自動杖を使うために、2つ必要なことがあります」
「……!(ふ、2つ……?!1つは魔力をあらかじめ充填しておくこととして、もう一つは……やっぱり……)」
ワルツは内心、びくりとした。展開的に、魔力の操作が必要、と言われるような気がしたのだ。
目を見開いたワルツを前に、ハイスピアは内心慌てた。自分が何か言ってはならない事を言ったのではないかと心配になったのである。
「(えっ……2つよね?3つあったかしら?)」
「(えっ……なんでそこで黙るの?)」
ハイスピアとワルツとの間で妙な空気が流れる。まるで駆け引きをするかのように、お互いの視線が交差する。
その様子を見ていた他の3人は、怪訝そうに顔を見合わせた。
「(あの2人、何してるんだろ?)」
「(睨み合っておるようにしか見えぬのじゃ。喧嘩なんぞしておったかのう?)」
「(話の内容的には、ぶつかり合うような内容なんて無かったですよね?)」
いったい、ワルツとハイスピアは何をしているのか……。ルシアたちが不思議そうに首を傾げていると、事態がようやく動き出す。
「……先生。自動杖を使うためには、一体何が必要だというのですか?」
ワルツが痺れを切らして、話の続きを促したのだ。
対するハイスピアは、まるでテストを受ける学生のような気分になりながら、恐る恐る説明を再開した。
「……自動杖に必要なのは、事前の魔力充填と——」
「(まぁ、そうよね。それで次は……!)」
「魔力の——」
「魔力?!」ゴゴゴゴゴ!
「えっと……あの……ワルツさん?すごく違いのですが……」
「……おっと。これは失礼」
ワルツは知らず知らずのうちに、ハイスピアへと迫っていた。特に、2つ目の要件の冒頭に"魔力"という言葉が出てきてからは、2歩も前に進んでいたようだ。それも大股で。
「それで……2つ目は何なのですか?何だと言うのですか?!」
ワルツは震えそうになる声をどうにか抑えながら、ハイスピアに対し再び続きを促した。
対するハイスピアは、ワルツのプレッシャーが大きかったためか、今にも泣きそうな表情を浮かべながらも、どうにかこうにか、話を続けた。
「ま、魔力の……」
「魔力の?!」
「せ——」
「制御?!」
「……?い、いえ、制御は必要ありません。"自動杖"と言うくらいなのですから、使用者が制御する必要はありませんので」
「あ、はい……そうですよね……(はぁ……良かった……)」
「魔力の選択が必要になります。……コレです。ここにある小さな魔法陣に指を乗せると、自動杖の魔力回路が反応して、発動する魔法の種類を決める事が出来るのです。一般的に、自動杖が対応している魔法は1つの属性のみで、ここで調整できるのは、出力と範囲の2種類になります」
「なるほど……(それならそうと早く言ってくれれば良いのに……)」
ワルツは内心で胸をなで下ろしながら、もう少しで口から出かかっていた心の声をどうにか飲み込んだ。普段は空気を読めない彼女でも、流石にその一言を口にするのは拙いと分かっていたようである。
……と、いったように、ワルツは安堵していたわけだが、そんな彼女に更なる試練(?)が襲い掛かる。
「では、実際に使ってみましょう」
自動杖を使った魔法の実体験が始まろうとしていたのだ。
今日でこの話を書き始めてから丸7年。365×7=2555日間、一日も休むこと無く連続で書き続けてきたわけじゃが、まったく成長せぬ駄文に未来はあるのじゃろうか……。いや、そもそも、未来とは何なのか……。
……もうダメかも知れぬ☆




