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14.6-15 支援15

「……あれ?私、なんでこんなところに……って、テレサちゃんが私に言霊魔法を使ったんだね?!しかもなんか身体が重いし……。何をしたのさ!」


『おや?もしやルシアちゃんも記憶が無いのですか?奇遇ですね?僕もです』


「……ワルツよ。妾は何を間違えたのじゃろうか?」


「……強いて言うなら人生そのもの?」


「……もうダメかも知れぬ」げっそり


「えっと……何の話ですか?」


   ざわざわ……


 皆が記憶を失ったことで、学院内全体が大混乱に陥っていた。今から10分ほど前、生徒たちは授業を終えるか否かといったところで、皆が昼休憩の時間を今か今かと待ち構えていたわけだが、その後から現在までの記憶がすっぽりと消えていたので、皆、自分たちが突然廊下に転移してしまったかのように思えていたようだ。騒ぎになって当然だと言えるだろう。


 ちなみにワルツとテレサは、他の生徒たちが我を取り戻す前に、ルシアとアステリアを連れて教室内へと撤退済みである。ポテンティアと壁は放置したままだ。壁はともかくとして、流石に黒い昆虫を持って移動することは出来なかったらしい。……主に精神的に。


「説明して欲しいんだけど?」


「……ア嬢に無理やり魔力を注がれて、言霊魔法が暴走したのじゃ。もうすこしで死ぬかと思ったのじゃ」


「え゛っ……わ、私がテレサちゃんに魔力を……?」カァッ


「……何、顔を赤くしておる?」


「もう……お嫁に行けない……」ガクッ


「何の話なのじゃ……」


 ルシアをこのまま放っておくと、彼女の思考が明後日の方向に離陸していきそうだったので、テレサは失われた10分間に何が起こったのか事情を説明した。ただし、アステリアから魔力の提供の申し出があったという話は伏せてある。話がややこしくなるので省略したのだ。


「うわぁ……。道理で手がべとつくと思った……」


「…………」じとぉ


「でも、どうして私たちも言霊魔法の影響を受けちゃったんだろ……。いつもはテレサちゃんが狙った相手にしか影響ないよね?」


「恐らくはア嬢から受け取った魔力を御しきれず、全方位に言霊魔法を放ってしまったせいだと思うのじゃ。もしかすると、廊下に出ておった学生たちだけでなく、他の者たちの記憶も消えておるかも知れぬ。良くは分からぬが、そんな感じの手応え……まぁ、気配のようなものがあったのじゃ」


 テレサの予想としては、精々、同じ建物内にいる人々の記憶が消えているかも知れないという程度のものだった。この時の彼女は、まさか、惑星全体のすべての生き物の記憶が消えているとは微塵も思っていなかったに違いない。なお、彼女たちがそのことを知るのはもうしばらく先の話である。


「変な影響が出なければ良いのじゃが……」


「テレサ。それフラグよ?フラグ」


 と言って身構えるワルツ。大抵こういう場合、自分たちにトドメを刺してくるような何か良からぬ事が起こるというのが彼女の経験則だったのだ。だが、今回に限っては特に何も起こることはなく、無事に昼休みは経過していった。回復魔法を受けたミレニアや、彼女のことを介抱したジャック少年も、ポテンティアが作った壁の前からいつの間にか消えていて、ひとまず、2人がワルツたちの教室に乗り込んでくるような事にはならなかったようである。


 なお、その後、ありえないはずの場所に壁が作られていることに気付いた教師たちと、ワルツたちとの間で一悶着があるのだが、テレサが再び言霊魔法を使って有耶無耶にした上で、ポテンティアが壁を元通りに戻したので、事態は一応の収束へと向かったようである。


 というわけで、午後の授業だ。今日の授業は今までと少し毛色が違っていて、ワルツたちとしては心待ちにしていた授業だったようである。


 授業の内容は実技講習だった。それもワルツが欲している自動杖を使った実技の。

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