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14.4-19 学生デビュー19

 中央魔法学院の図書館。それは、大陸中から魔法の研究に関する書籍を、国で最も多く保管する図書館である。大陸中の様々な国にある図書館の中でも上位3位に入るほど大きく、最早、建物そのものが本の塊のような場所だった。


「「「「…………」」」」ぽかーん


 そんな図書館にやってきたワルツたちは、唖然として固まっていた。開いた口が塞がらないとは、今の彼女たちの事を言うのだろう。


 しかし、その理由は、4人でそれぞれバラバラだった。ルシアとアステリアの2人は、どこまでも続きそうな本棚の海を見て純粋に驚いていた一方で、ワルツとテレサは——、


「……これ、どうやって探すの?」

「検索システムは……あるわけ無いの……」


——大量の本の海からどうやって教科書を探せば良いのかで悩んでいたようだ。というのも、ハイスピアから授業に必要だと教えて貰ったものは、本の名前だけであり、その本が図書館のどこにあるのかまったく書かれていなかったのだ。


 ちなみに、他の学生や教員たちは、魔道具を使って本を探している。現代世界の書籍検索システムと同じで、図書館の所々に検索用の魔道具が置かれてあり、その上に本の名前が書かれた紙を置くと、場所を教えてくれるという装置だ。


 本来であれば、ハイスピアが教えることなのだが、どうやら彼女はすっかりと失念していたようである。他の学生たちは、春から始まる新学期に一斉に入学してきた際、先輩たちなどから人伝(ひとづて)で図書館の使い方を知ることになるので、ハイスピアたち教員は図書館の使い方をわざわざ教えないのだ。


 そう言う意味では、ワルツたちも右に(なら)えで、先輩や他の学生たちなど、図書館にいる他の誰かに聞けば良かったのだが——、


「聞こうにも誰もいないわね……」

「……皆、寮に引き籠もっておるせいかのう……」げっそり


——図書館はもぬけの殻状態。人っ子一人いなかった。あるいは他のフロアや本棚の影の方にはいるかも知れないが、少なくともワルツたちが見える範囲には誰もいなかったのである。……ワルツが生体反応センサーで誰かの存在に気付いていたとしても、コミュニケーションに難のある彼女が人に本の探し方を尋ねないことについては、もはや言うまでもないだろう。


「仕方ないわね……。皆で片っ端から探すしかないでしょ」


 果たしてどれほどの時間が掛かるのだろうか……。ワルツはそんなことを考えながら、本棚を見渡した。


 とはいえ、彼女は機械。そして、テレサも機械。背表紙さえ視界の中に入れば、一気に検索することは可能だった。ただ、広大なフロアと本棚をすべて歩き回る必要があったのと——、


「それじゃ、私はあっちの棚から見てくるね?」

「私はあっちを探してきます!」


——ルシアとアステリアを蔑ろにできなかったので、彼女たちが見落としてしまう可能性を考えれば、それなりの時間が掛かるのはほぼ確実。今夜は帰れるのだろうかと頭を抱えながら、ワルツとテレサは仕方なく本を探し始めた。


「図書館の中では静かにするのがマナーだから気をつけてね?」


「「!」」


 ワルツが忠告すると、ルシアとアステリアが口を押さえてコクコクと頷いてから、その場から走り去って行く。そんな2人の背中を見送ってから、ワルツとテレサがそれぞれ教科書を探しに行こうとした——そんな時だ。


   チュィーンッ!

   ギュウンッ!!


 図書館であってはならない光景が、ワルツたちの視界の端の方に見え隠れした。


 一つは、ルシアが去って行った方向だ。なにやら、光の球のようなものが、大量に棚の隙間を漂い始めたのだ。


 そしてもう一つはアステリアが歩いて行った——いや走って行った方向だ。まるで狐か猫のごとく走る音は立てていないものの、ほぼ全力疾走と言った様子で、アステリアが図書館の中を走り回っていたのだ。


「何やってんの……あの娘たち……」

「さぁ?」


 ワルツとテレサが揃って首を傾げた——そんな時。


「「あった!」」


 2人の声が図書館の中に小さく響き渡る。どうやら2人とも図書館の中で騒ごうとしていたわけでなく、それぞれの方法で真剣に本を探していただけのようである。


当たると死ぬ(?)書籍検索魔法なのじゃ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 2567/2567 ・狐の勝利! まさかまさかの機械に勝った [気になる点] デッドリー検索魔法 [一言] 光速で動ければ楽勝なはず
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