14.4-16 学生デビュー16
「あー、丁度良いところに来たわね?コルテックス。ちょっと聞きたいんだけどさ——」
「そういうのは無理です」
「……えっ」
何も言っていないというのにいきなり断られたためか、ワルツはそのまま固まってしまう。ただ、そんなやり取りは前にもあったためか、硬直は長く続かず、彼女はすぐに復帰する。
「ちょっと待って。私が何を言いたいのか分かってるってこと?」
「えぇ、わかりますとも〜。妾の魔法の使用回数制限を取り払いたいと仰りたいのですよね〜?」
「なんで知ってるの?もしかして盗聴してるとか?」
「盗聴ではありませんが似たようなものかも知れませんね〜。半身を分けているような関係にある妾の考えは、わざわざ会話をしたり、盗聴したりしなくても、筒抜けで分かりますからね〜」
「「え゛っ」」
そんなコルテックスの発言に、ワルツの他、テレサの声も重なる。テレサも、まさかコルテックスに自身の考えが筒抜けだったとは思っていなかったらしい。
「逆に妾には、コルの考えが分からぬのじゃが……」
「そこは訓練次第でどうとでもなりますよ〜?特別な力を使っているわけでもありませんし〜。ほら、お姉様の考えなんて、妾以上にもっと分かりやすいではありませんか〜」
「……なるほどの」
「いや、何がなるほどなのよ?!」
何やら2人で納得したような表情を見せるテレサとコルテックスを前に、憤るワルツ。その際、彼女は気付いていなかったようだ。テレサたち以外の他の2名も——、
「(まぁ、確かにね……)」
「(えぇ、確かに私でも何となく分かりますね……)」
——まったく同じ表情を見せていたことに……。
「まぁ、そんなことは置いておいて〜」
「そんなことって……納得出来ないわね……」
「まぁまぁ、そう仰らずに〜。時間もそんなにありませんから〜。で、さきほど言っていた妾の魔法制限の話ですが〜……前に検証したことがあるのですよ〜。妾の尻尾を増やせないか、って〜。実験自体は成功して、妾の尻尾を増やす方法自体は分かったのですが〜……」
「拡声器を持つと増えるやつよね?」
「そうです。ですが、魔法の使用回数が増えるわけではなく、増えた尻尾の分だけ1発の魔法を強化することしかできず、しかも、魔法の使用回数は逆に減るという結果になってしまいました〜。その辺はお姉様もご存じだと思います」
「ふーん。ってこは、コルテックスでもお手上げ?珍しいわね?」
「……お姉様は知らないでしょうけれど、妾の尻尾はお姉様が思っているよりも遙かに危険なものなのですよ〜?私も何度、消し飛ばされそうになったことか〜」
「……え゛っ?」
「妾の尻尾は、一言で言うなら、魔力が固まって出来た魔石……そう、魔石のようなものなのです。しかも魔石とは違って不安定。ですから、外してその辺の置いたりして、ちょっと衝撃を加えると、大爆発しかねません。まぁ、妾の腰に付いている分には、何故か安定しているようですけれどね〜」
「それ初耳なんだけど?まぁ、でも、しっくりきたわね。テレサって、実は魔物だったってことでしょ?そうだと思ったわー」
「いや妾も初耳……っていうか、そうだと思ったって……妾はワルツの中でどんな生き物なのじゃ?!」
魔石は基本、魔物の体内で生成されたり、自然界においてマナが結晶化してできるものである。人の体内で作られたという報告はなく、本来ありえない事だった。魔力の保有量で言うなら、ルシアの方が圧倒的に多いので、ルシアの体内に魔石が出来るならまだしも、そういった事件は未だ起こっていないのだ。にもかかわらず、テレサが魔石を生成出来るという方がありえない事だと言えた。……まぁ、実際に魔石を作っているわけではなく、尻尾が魔石に近い存在だというだけのただの例え話なのだが。
「どんな生き物か、か……。強いて言うなら、獣?ほら、なんかよく分かんないけど、私のあられも無い姿を写真に撮るとかいつも言ってるし……」
「それに、狐を見たら、何故か手をワキワキしてるし……」
「き、狐……?私の事ですか?!」
「ひ、酷いのじゃ……。コルからも何か言って——」
「……というわけなので、妾の尻尾を増やすことはできません。徐々に溜まるのを待つか、あるいは誰かから魔力を貰うしかありません」
「 」ちーん
コルテックスにすらスルーされたテレサは、真っ白になった。元々、銀髪だったゆえに、大した違いは無いと言えなくもないが、ともかく真っ白になっていたようだ。
しかし、そんな彼女の反応は誰にも気付かれない。というのも、コルテックスが最後に口にした言葉に皆が反応していたからである。
「魔力を……貰う……?渡せるの?」
と。




