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6前-01 シリウスからの言伝1

そして、次の日の夕方。

ワルツがユリア達から無線での連絡を受けた頃へと時間は進んでいく。


「・・・というわけで、なんかユリア達に呼ばれたから向かえに行こうと思うんだけど、一緒に来る?」


夕食を摂るために、(エネルギアの)食堂に集まった仲間たちに声を掛けるワルツ。

すると、


「えっと、私も一緒に行っていいですか?」


シラヌイが1番に声を上げた。


フォージハンマーの使い過ぎで、ボロボロになってしまった手を完全に治すまで、彼女は鍛冶に戻れないのである。

その間、暇を持て余していたのは、言うまでもないことだろう。


「えぇ、いいけど・・・その話をする前に、一つだけいいかしら?」


「なんですか?」


「・・・テンポ。彼女のメイクを直してあげてくれない?」


「・・・分かりました」


短くそう言って、テンポがシラヌイの前に立つと、何故か持っていた濡れタオルで、彼女の顔を強引に拭いた。


「もがぁぁぁ〜〜〜?!」


「はい、動かないで下さい」


そしてシラヌイの紅を引き直すテンポ。

・・・メイクと言っても、それだけである。


「うん、まともになったわね」


「えっ?!」


疑問の声を上げるシラヌイ。

だが、ワルツもテンポも、そして周りの仲間達も、メイクの件についてはそれ以上何も言わなかった。


・・・生まれて初めて化粧をしたシラヌイである。

果たして、一体どういう姿になっていたのか・・・。

筆舌に尽くしがたいが、強いて言うなら、東北地方で悪い子のところに出てくるという某神様のような・・・いや、なんでもない。


「でも、貴女・・・その手じゃ、一緒に来ても何も出来ないんじゃない?」


「えっ・・・えっと・・・はい・・・」


ワルツの言葉に消沈するシラヌイ。


「・・・ま、留守番してても出来る仕事を代わりにあげるわ」


「・・・?」


シラヌイが首をかしげていると、


ドン!


「はい、これ」


「えっ・・・」


ワルツは彼女の前に、カーゴコンテナから取り出した、大小様々な大きさの正方形の紙を、机の上に大量に置いた。


「折り紙は分かる?」


「えっと、はい。分かります」


「じゃぁ、鶴の作り方は?」


「つる・・・?」


どうやら、鶴の存在を知らない様子のシラヌイ。

彼女もルシアも鶴のことを知らないとなると、もしかすると、この世界には()()()()|鶴はいないのかもしれない・・・。


「えーと・・・はい、これが折り鶴よ?」


重力制御を使って、2秒で折り鶴を作るワルツ。

もちろん、手足のない、普通の折り鶴である。


『すごっ・・・』


ワルツの早業に思わずそんな言葉を漏らす仲間たち。


「ま、作り方がよく分からなかったら、アトラスかコルテックスにでも聞いてみて?もちろん、全部、一人で折る必要はないわよ?適当に暇そうな人を捕まえて作ってくれればいいわ」


「えっと・・・はい、分かりました。頑張って作ります!」


ワルツの作った折り鶴を手の上で弄びながら、シラヌイは折り鶴づくりを快諾した。


「あと、他に来るって言ったら・・・剣士と賢者さんくらい?」


「何で俺は呼び捨てなんだよ・・・」


「じゃぁ、剣士様?」


「なんで様づけなんだよ・・・」


「面倒だから、剣士と賢者でいっか」


「・・・私はそれでも構わん」


逆に敬称が無くなったが、特に気にした様子が無い賢者と、


「・・・」


どこか釈然としない様子の剣士。


「ま、暇そうだし、わざわざ聞かなくても分かるけど、もちろん来るのよね?」


「・・・暇ではないが、勇者が飛行艇から降りようとしないからな・・・仕方ない。付いていこう」


勇者と共に歩むことを決めた仲間らしいことを言う賢者。

なお勇者は、今日も集中治療室前で(睡眠ガスを吸って)昼寝をしていることだろう。


「・・・俺は遠慮しておこうかな」


・・・一方、剣士は違ったようである。


「え?拒否権は認めないわよ?」


「・・・なんか、嫌な予感がするんだよ・・・」


そういいながら腕を組んで難しい表情を浮かべる剣士。


「一体、どんな予感があるわけ?」


「んー、分からん。ただ、なんか、こう・・・強敵の前に立った時に感じる、命の危機感・・・って言ったらいいのか?」


「・・・よく分からないわね。まぁ、死なないかぎりどうにかなるわよ」


但し、その場合は、ただでさえ忙しいカタリナの手を更に煩わせることになるので、ある意味、死ぬよりも辛い目に遭う可能性は否定出来ないが・・・。


「すっげぇ、行きたくない・・・」


青い顔をしながら呟く剣士を無視して、ワルツは話を進める。


「あとは・・・テレサも水竜も狩人さんも今は忙しいわよね?」


「うむ。申し訳ないのじゃ」

「はい。出来るときに仕事は方付けておこうかと思っておりますゆえ」

「ノースフォートレス・・・狩りの聖地かぁ・・・行きたいなぁ・・・。まぁ、流石に今は無理だけどな。おとなしく待ってるよ」


その他、カタリナはここには居なかったが、彼女はどのメンバーよりも忙しかったので、ワルツが声を掛けることはなかった。

ただし、エネルギアの中に医務室と集中治療室があるので、結局、一緒に移動することになるのだが。


なお、テンポには、そもそも行くかどうかすら聞かなかった。

一緒に行く、行かない・・・ではなく、連れて行く、一択である。


「あとはルシアね」


食堂にいない彼女の名前を口にするワルツ。

すると彼女は何もない空間に向かって、声を上げた。


「エネルギア?ルシアはどこ?」


『・・・』


ワルツの声に応答しないエネルギア少年。


「今日も、ルシアに運動の方法を教わってるのかしら」


恐らく彼は、ロボットの中に入っているために、返事が出来ないのだろう。


(ま、ルシアは、エネルギアと一緒にいるなら、声を掛けなくてもいいでしょ)


常に、どこかに出かけるときは、姉と一緒に行動してきたルシア。

もしもエネルギアと共に艦内にいるというのなら、特に声を掛けなくとも、今回も一緒に付いてくることになるだろう。


「それじゃ、申し訳ないんだけど、出発組の晩ごはんはこの食堂で。留守番組は、王城の食堂で食べてもらえるかしら?」


ワルツのそんな言葉に、頷く一同。


というわけで、今晩の食事は、移動しながら、ということになった。




ゴォォォォ・・・


王都を出発し、一路北へと進路を進めるエネルギア。

その艦橋で・・・


「120羽・・・凄いじゃない」


「うん!」


姉に褒められ喜ぶルシア。

この2日間でひたすら大量の折り鶴を作り続けていたのである。


「あのねぇ・・・これ、エネルギア君と一緒に作ったんだよ?」


「ふーん、ちゃんとエネルギアに運動の方法を教えてあげてるのね」


「うん!」


(・・・でもこの折り鶴・・・何で、全部、手足が生えてるのかしら・・・)


・・・一部に手とも足とも言いがたい、謎の5本目の腕(?)を生やした折り鶴(?)もいたが、ワルツは努めて気にしないことにした。


「ところで、どうして全部コピー用紙なの?それも使い古しの」


ちなみに、このコピー用紙は、ワルツが日夜書類と格闘しているコルテックスたちのために作ったものである。

作り方は・・・まぁ、説明しなくてもいいだろう。


「えっとねぇ、練習用の紙を頂戴って、アトラス君に頼んだら、たくさんくれたの」


「あぁ、そういうことね」


コルテックスのところから廃紙をもらってきた事を理解したワルツ。

すると、


「・・・ねぇ、お姉ちゃん」


先程まで明るかったルシアの表情が、突然曇る。


「・・・これをたくさん作れば、リアお姉ちゃん、直るの?」


手に持った(いびつ)な形の折り鶴(?)に視線を落として、心配そうな表情を浮かべながら呟くルシア。

果たして自分がしていることが、本当にリアのためになるのか、疑問に思ったのだろう。


そんなルシアの頭に手を置いて、優しく撫でながら、ワルツは口を開いた。


「えぇ。リアに治ってほしいって気持ちを込めながら折れば、必ず治るはずよ?」


「えっ・・・」


・・・どういうわけか、ワルツの言葉を聞いたルシアが固まる。


「・・・たぶん、半分くらい、リアお姉ちゃんのこと考えてなかったかも・・・」


最初は全く折り鶴(?)を作れなかったルシア。

アトラスに教えられてようやく折れるようになったとはいえ、一人の時やエネルギア少年に教えているときは、必死になって折っていたのだろう。


「いや、今から気持ちを込めても間に合うと思うから、大丈夫よ?」


「・・・ホント?」


「もちろん本当よ」


「よかった・・・」


そしてルシアは、手足の付いた折り鶴(?)を、大事そうに抱きしめるのであった。


・・・そんな時、


「・・・あのー、おねえちゃん?」


今度はワルツにしか見えないエネルギア少年から声が飛んで来る。


「そろそろ、とうちゃくするよ?」


「早いわね・・・っていうか、何で貴方、艦橋のスピーカーを使って喋らないの?」


「とびながらだと、むずかしい?」


「・・・この前、剣士さんがケガをした時はやってたじゃない・・・」


「・・・?」


(なんで、そこで不思議そうな顔をするのよ・・・)


エネルギアのことをもう少し問い詰めたいワルツだったが、目前でユリア達を待たせるわけにもいかないので、頭を切り替えることにした。


「さてと・・・降りましょうか」


「そらで、まってなくていいの?」


普段のワルツは、わざわざエネルギア(飛行艇)を地面に下ろさずに、乗り降りしていたのである。

エネルギア少年がそんな疑問を持つもの仕方なの無いことだろう。


「えぇ。空中で待機してたら、ここにいるみんなが来た意味が無いし、降りたほうが良いかなって思って」


「ふーん。わかった」


すると急激に高度を下げていくエネルギア。

・・・そして、


ドゴォォォン!!


山脈の中腹辺りにある木の生えていない山肌に突き刺さった。


「ちゃくりくできそうなばしょがなかったから、これでいいよね?」


「えぇ。構わないわ。ありがとう、エネルギア」


ワルツの言葉に、嬉しそうな表情を浮かべるエネルギア少年。


(なんかやっぱり、ルシアに似てる気がするのよね・・・)


ワルツがそんな事を思っていると、


「・・・いつもながら、豪快な着陸だな・・・」


エネルギアの着地(?)の仕方に、剣士が呟いた。

するとどういうわけか、そんな彼の言葉に反応して、


『だって、やまだから、ちゃくりくするところがなくて、しかたなかったんだもん!』


突然エネルギア少年が、艦橋のスピーカーを使って喋る。


『?!』


「え!?これがエネルギア君の声?!」


ルシアが声を上げると、


『?!・・・』


・・・それっきりエネルギア少年は黙ってしまう。


「・・・?どうしたの、エネルギア?」


「・・・なんか、はずかしい」


ワルツが話しかけると、何故か赤い顔をしたエネルギア少年が、ワルツの視界の中だけに現れる。


「剣士さんと話すのはいいのに?」


「うん。ビクトールさんはいいの」


「ふーん・・・」


ワルツとエネルギアがそんなやり取りをしていると、


「お姉ちゃん?エネルギア君に何かあったの?」


心配そうな表情を浮かべながら、ルシアが声を掛けてきた。


「いいえ。大丈夫よ。なんか、喋るのが恥ずかしいんですって」


「えっ・・・そうなの?」


「・・・ほら、ルシアも心配してるから、喋ったほうが良いわよ?」


「えっ・・・」


ワルツの言葉に、ルシアの顔を恐る恐る覗きこむエネルギア少年。

・・・まぁ、ルシアからは、エネルギア少年の姿は見えないので、ビクビクしても意味は無いのだが。


「・・・分かった」


ルシアの顔を見て、どこか申し訳無さそうに呟いてから俯くと、彼は姿を消した。


すると再び、艦橋のスピーカーから、彼の声が聞こえてくる。


『・・・ルシアちゃん。はじめまして。エネルギアです』


「・・・!えっと、初めまして・・・かな?ルシアです。よろしくね?」


『・・・うん。ことりさんのつくりかたをおしえてくれて、ありがと・・・』


「どういたしまして!」


その後も、2人の間で、会話は続いていった。

最初は恥ずかしいと言っていたエネルギア少年だったが、どうやら、直ぐに慣れたようである。


「じゃぁ、今回は、ルシアに船番を頼んでもいいかしら?」


キリの良さそうな所でワルツが話しかける。


「うん、良いよ?」


「じゃぁ、行ってくるわね。エネルギア?何あった時は呼ぶから、その時は迎えをお願いね」


『うん、わかった』


こうして、ワルツ、テンポ、剣士、賢者は、エネルギアを降りて、ユリア達の待っていると思わしき場所へと足を進めたのである。




・・・その際、


「本当に思念体が存在したんですね・・・。残念です」


テンポが言葉通りに残念そうにしながら、エネルギアの方を振り返りながら呟いた。


「いや、だから言ったじゃない。本当にいるって」


「そうですか。では、もう暫く待ちますかね・・・」


「・・・待っても、機動装甲は渡さないわよ?」


「・・・ちっ」


「ちょっ・・・」


・・・そんなやり取りをしながら、ワルツたちは山道を歩いて行った・・・。

やはり、まともなサブタイトルをつけたほうが本文を書きやすい気がするので、6章以降はちゃんと名前を付けていくのじゃ。


・・・ところでじゃ、主殿?なんか、妾の出番が少なくなる予感がする展開なのじゃが・・・大丈夫なのじゃろうか?

・・・え?ならリアはどうするのかじゃと?

意識のない者と、妾を比べてどうするのじゃ・・・。

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