14.3-16 中央魔法学院7
頭から煙を出して騒いでいるテレサを余所に、ルシアとワルツは学院の敷地内を進む。その隣にはジョセフィーヌやアステリアの姿もあったが、流石にワルツたちほど広域殲滅魔法になれていない事もあって、2人とも戸惑いが隠せない様子だった。まぁそれも、学院にいた学生たちや、ジョセフィーヌの後ろに続く騎士たちほどではなかったようだが。
施設内から顔だけを出して、ぽかーん、といった様子の表情を浮かべる学生たちを一瞥しながら……。ワルツはジョセフィーヌに問いかける。
「で、誰に会えば良いのかしら?ジョセフィーヌ、知り合いいる?」
「そ、そうですね……まずは学院長に会ってみましょう」
「学院長……音の響きからして、一番高そうな場所にいる、ってことでいいのかしら?」
と言いながら、ワルツが周囲を見渡すと、学院の敷地内にとりわけ高い建物の姿が目に入ってくる。時計塔だ。
「まぁ、流石に時計塔にはいないか……。五月蠅そうだし……」
「私も学院に来るのは初めてですので、誰か案内をしてくれる方を探した方が良いかと思います」
ジョセフィーヌがそう言いながら、近くの物陰にいる学生に呼びかけようとした、そんな時。
「あの……」
逆に学生の方から話しかけられる。
その人物が誰なのか見覚えがあったワルツは、ジョセフィーヌよりも先に反応した。
「あれ?貴女たしか……」
と、ワルツが名前を口にする前に、ルシアが反応する。……というより、ワルツの口から名前が出てこなかったために、彼女が代わりに口を開いたと言うべきか。
「たしかミレニアちゃんだよね?」
「は、はい。覚えていて下さったのですね」
「……?なんかしゃべり方、固くない?」
「えっ……いや……その……」
ワルツの指摘に対し、ミレニアは酷く申し訳なさそうな反応を見せてから——、
サッ……
——その場に跪いた。
「し、失礼ながらご確認させて下さい。た、大公閣下とお見受けいたしますが、相違ございませんでしょうか?」
ミレニアは、ジョセフィーヌが大公であることに気付いていたらしい。……本来、この場に来るはずのない人物が何故ここにいるのか。先ほどの大規模な魔法は何なのか。ここにいる獣人たちは何者なのか……。ミレニアの頭の中はそんな疑問が渦巻いていて、すぐにでもその疑問すべてを口から吐き出したかったようだが、まずはジョセフィーヌに対する確認を優先することにしたようだ。ミレニア自身、貴族か何かなのかもしれない。
対するジョセフィーヌは、頭を下げるミレニアのことをジッと見つめて……。そして返答を始めた。
「……いかにも。私はジョセフィーヌ=フロイトハートです。たしか、あなたはカインベルク家のご令嬢でしたね?」
「はっ!ミレニア=カインベルクにございます!」
「随分と大きくなったようですね。私が覚えているのは3年も前の事ですから、別人かと思いました」
「ご無沙汰しております。この度はお名前をご確認するようなことをしてしまい、申し訳ございませんでした」
「いえ、いいのです。あと、あまり畏まらないで下さい。今、ここに立っている私は、大公として立っているのではなく、ジョセフィーヌ個人として立っているのですから」
「ははっ!」
「(まぁ、いきなり反応を変えるというのは、難しいですよね……)」
むしろ、今までフランクな態度で接する者などいただろうか……。そんな事を考えた結果、例外が3人ほど浮かんできたジョセフィーヌは、思わずフッと笑みを零した後……。
「ミレニア様。学院長のところまで案内して貰えませんか?」
早速、用件を口にすることにしたようだ。
読みにくいのをどうにかしたいと思うのじゃが、修正すると余計に読みにくくなるというジレンマを抱えておるのじゃ。




