14.2-21 Exception5
「……というわけで、ジョセフィーヌを匿うことになったワルツよ?よ・ろ・し・く?詳しい話は貴方たちの団長に聞いてね?あと、もう一つ。……ウチの家族もそうだけど、獣人の事を奴隷とか言ったり、蔑んだりしたら、その時点で八つ裂きにするからね?そこのところ重要だから覚えておいて」
「ボッコボコにしてやるのじゃ!」ゴゴゴゴゴ
「んー、あんまり怒りはしないけど……そういうことを言う人は、月の出てない夜に歩かない方が良いかなぁ?」チュィィィィン
「「「?!」」」
ワルツたち一行は、村長の館で情報共有を終えた後、村から少し出たところにある空き地で野営しようとしていた騎士たちのところへとやってきた。そして、いつも通りのショートカット事情説明だ。面倒なので詳しいことは喋らない。"というわけで"の一言で説明は終了である。
そのせいもあってか、騎士たちは、怪訝そうな視線と、警戒の視線をワルツへと向けていたわけだが、ルシアが魔力を放出して収束し始めた時点で、騎士たちの表情は一変どころか激変。あまりに強大な魔力を前に、腰を抜かしてその場に崩れ落ちる者や、逃げ出す者、あるいは命乞いを始める者まで出始める始末だった。
そんな騎士たちを見て、テレサが一言。
「……ア嬢。弱い者イジメはダメだと思うのじゃ」
「いや、別に虐めてないし。あと騎士さんたちは弱くないし」
「……妾の目を見ながら言うのじゃ?」
「…………」スッ
テレサがルシアの事をジーッと見つめていると、ルシアは余計にそっぽを向く。
そんな2人のやり取りを微笑ましげに眺めながら(?)、ワルツはその場にいた騎士たちに聞こえるよう声を上げた。
「で、続き。いま言ったとおり、ジョセフィーヌを匿わなければならない状況になっているから、貴方たちにこの場でで大々的に野営されるとすっごく困るのよ。防衛的にも、村的にもね。というわけで、野営場所を案内するから付いてきて。こっちよ?」
ワルツはそう言って1軒の家に、騎士たちを案内した。どこからどう見ても100人を超えるような騎士たちを収容出来るような家には見えなかったが、騎士たちからただの一つも文句が出なかったのは——、
「ホレホレ?ア嬢?何故こっちを見ぬ?何か後ろめたいことでも——」
「ウザい」
ドゴォォォォン!!
「ふべっ?!ちょっ、何をするのじゃ!」
——ルシアが莫大な魔力を収束させたビームをテレサに当てて、それをテレサが何事も無かったかのように弾き返したからか。……それも、周辺の森に生えていた木々を巻き添えにしながら。
そんなカオスな光景を余所に、騎士たちの行列の先頭部分が家屋に到達する。そこにいたのはワルツとジョセフィーヌ、そして騎士団長の3人だ。
「あの……ワルツ様?」
騎士団長は恐る恐るワルツに向かって問いかけた。相手は幼女と言って良いような見た目の子どもだが、思わず"様"を付けてしまうような何かを感じ取っていたらしい。
そんな騎士団長に、ワルツは言った。
「あー、皆まで言わなくても何が言いたいのか大体分かるわよ?こんな家に、騎士が100人も入るわけないって言いたいんでしょ?まぁ、良いから付いてきなさいよ。ねぇ?ジョセフィーヌ」
「そう……ですね。入れば分かります。あと、腰を抜かさないように注意して下さい。身体を支えるのに杖を用意しておいた方が良いかも知れません」
「はあ……」
まるで迷いの無い大公を前に、騎士団長に否やは言えず……。ワルツに誘われるまま家屋の中に入り、そして彼は地下への階段を下ったのである。
ア嬢が妾にだけ乱暴な件。
あれは多分、イジメだと思うのじゃ……。




