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14.2-13 視察4

「魔物かっ?!」

「?!」

「っ!」きゅぃぃぃん


「ちょまっ?!」


 音の聞こえた茂みの方へとルシアが目を向けた瞬間、茂みに足が生えて急に立ち上がった。その姿を見て、ルシアは慌てて魔法の行使を止める。具体的には魔力ビームの放出を。


 足の生えた茂みを見たジョセフィーヌは、何が何だか分からないと言わんばかりに険しい表情を浮かべていたようだ。色々な意味で、彼女には不可解な状況だったので、当然の反応だと言えるだろう。


 しかし一方で、ルシアとテレサにとっては、よく見慣れた光景(?)だったようである。


「お姉ちゃん、何やってるの?危ないなぁ……」

「スニーキングかの?」


 茂みを手で持って被るなど、1人しかいない……。そんな確信を持って問いかけると、案の定、茂みの持ち主が、茂みをその場に置いて表に出てくる。


「なんかね……暇だったから、森でも散歩しようと思っていたのよ。で、茂みを持って移動してたら、見つかりそうになってさ……」


「う、うん?」

「どういう状況なのかよく分からぬのじゃが……つまり、森に入る姿を誰にも見られたくなくて、茂みを持って移動しておった、とな?」


「うん、そう。なんていうか……見られたら負けだと思って」


 ワルツはそう言いながら、屍の山(?)と化していたその場の景色に目を向けた。


 そんなワルツの言動に、直前まで首を傾げていたルシアも事情を理解する。


「つまり、この人たちは、お姉ちゃんの隠れんぼを見つけちゃったんだね……」


「……うん」


「隠れんぼで見つけたら昏倒させられるって、どんな罰ゲームなのじゃ?」


「いやね?最初は見つからなければそれでいいと思っていたのよ?でも、途中まで姿を見られずに済んでいたのに、最後の最後、ギリギリのところで見つかりそうになってさ?で、見つけそうになった人を倒したら、次々と人が湧いてきて、気付いたらこんな状況になっていたってわけ。不思議よね」


「不思議……なのかなぁ……」

「まぁ、いつものワルツなのじゃ」


 ルシアもテレサも考えるのを止めた。ワルツはこういう人物だったと思い出したのだ。


 一方、ジョセフィーヌの方はどういうわけか複雑な表情を浮かべていた。それはワルツが乱暴を働いたから、というだけでは説明が付かない表情で、何かを言いたげだと言える表情だった。


 そんなジョセフィーヌに気付いて、ワルツが問いかけた。


「……もしかしてジョセフィーヌ、怒ってる?」


 ジョセフィーヌの表情は、どう見ても怒っているようには見えなかったが、ワルツには怒っているように見えたらしい。怒られるようなことをしたという自覚はあるのだろう。


 対するジョセフィーヌは、「えっ?」と驚いたような反応を見せた後で、首を横に振りながら、ワルツに向かって返答を始めた。


「いえ。怪我人が出ているわけではないので怒っているわけではありませんが……何と言えば良いのでしょう……」


「「「?」」」


「……我が国の騎士たちは、少女1人にすら勝てないくらい弱いというのが、恥ずかしいのです。それも彼らは近衛騎士。この国最強の騎士たちのはずなのですが……」


 と言って、地面に転がる騎士たちに視線を向けるジョセフィーヌ。そんな彼女がもしも怒りの感情を抱いていたとしても、その怒りはワルツではなく、騎士たちに向けられていたと言えるかも知れない。


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