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14.2-07 獣人たちと魔法7

 ワルツが扉から出るタイミングを計っていると、村人たちが集まってくる。突然、気を失った村人たちの異変に、皆が気付いたのだ。


 誰にも見つからないように家から出る事だけを考えるなら、誰彼構わず、そこに集まってきた村人たち全員を昏倒させてしまえば事足りるはずだった。しかし、流石のワルツも、あまり多くの村人たちを昏倒させる訳にはいかないと考えたらしく、暴力に訴えたプランは気が引けていたようである(?)。


「(……それにしても、随分と村人たちが多いわね。こんなにいたかしら?)」


 今まで村人たちとの繋がりが無かったためか、ワルツは今いる村の名前も規模も知らなかった。ゆえに、今の状況が正常なのか、あるいは異常な事なのか、判断が付けられなかったようである。……そう、そこに集まってきた村人たちが、皆、屈強そうな男性ばかりであっても、だ。


 結果——、


「(まぁ、こんなもんでしょ)」


——ワルツは深く考えるのを止めた。村人たちがいくらいようとも、あるいはどんな者たちだったとしても、自分ルールを達成して森に辿り着くことに、違いは無いからだ。


「(数が増えたところで、ザルはザルでしかないわ!)」


 ワルツは増えた障害物(?)を前に、やる気に満ちあふれていた。


  ◇


 数分後。


「(お、おかしい……)」


 ワルツの表情は、数分前の彼女と比較して、雲泥の差。とても険しくなっていた。


 というのも、彼女が外を観察していると、新たに別の村人(?)が同じように仮設住居を眺め始めたので、最初の者たちと同じように昏倒させたところ、また新たに別の者たちがやってきて……。それを何回か繰り返していると、いつしかフル装備の甲冑を着込んだ騎士ような者たちが、仮説住居を眺め——いや、監視するために集まってきていたのだ。


 それが少し前の事だ。最初は5人ほどだった騎士たちは、今ではどういうわけか20人に増えていて、皆が仮設住居のことを睨み付けていたようである。誰がどう見ても、彼らは村人ではない。どこかの大規模な騎士団が、出会え出会えと仮設住居前に集まってきている、といった様子だ。


 しかし、それでもワルツは、現実を直視しようとはしなかった。フル装備の騎士が集まってきていても、村人がレベルアップした程度の認識だった。


「(この村って、大量に騎士が住んでいるのね……。近くに訓練施設でもあるのかしら?)」


 ワルツはそんな脳天気な推測を頭の中に浮かべながら、森への脱出ルートを諦めずに模索する。ただし、今の彼女に余裕は無い。本気の脱出だ。


 村人たち(?)が全身甲冑を着込んだ辺りから、低周波音を使った音響攻撃は効きにくくなってきていた。彼らの事を確実に昏倒させるには、仮設住宅の壁を壊す勢いで壁を揺らさなければならず、ワルツはここに来て作戦を変えざるを得なくなる。


 ワルツは壁越しに弱い重力場を発生させると、壁の向こう側にあった小石を持ち上げた。それを一番近くにいた村人の背中目掛けてぶつけて、他の村人たちの様子を確認する。


   ズドォォォォン!!


 確認は壁越しで行った。X線を目で見て、その反応を観察する。


 結果は上々だ。小石が当たった村人(?)が木の葉のように宙に舞うと、それを見ていた他の村人たち(?)が、ワンテンポ遅れてからクモの子を散らすように一斉にその場から走り去っていったのだ。


 その瞬間、ワルツは迷うこと無く扉を開けた。ただし、音は出さない。加速した時間の中で、可能な限り音を出さずに扉を開け放ち……。そして遂に家の外へと躍り出た。

こういう物語ばかり書くというのも良いかも知れぬのじゃ。

……ちょっと頭がおかしいと言われそうじゃが。

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