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14.1-34 レストフェン大公国30

 テレサの願いは、ワルツとルシアの2人が揃っていれば、叶えられる可能性があると言えなくない内容だった。ただ、彼女の願いは、あまりに漠然としていたと言わざるを得なかった。なにしろ、単純に機動装甲と言っても、色々な種類があるからだ。


 テレサもそのことには気付いていたらしく、彼女はとても恥ずかしそうに何故かモジモジとしながら、希望をもう一言付け加えた。


「空が……空が飛べるやつが良いのじゃ?」


 テレサのその願いを聞いて、ワルツもルシアも、同じ言葉を口にする。


「懲りないわね……」

「懲りないね……」


 航空機を作ろうとして、テレサは1度命を落としたのである。にも関わらず、また空が飛びたいという彼女を前に、ワルツもルシアも呆れざるを得なかったらしい。


 そしてもう一つ。ワルツたちには呆れてしまう理由があった。


「っていうか、ウチの連中が、王都で新しい機体の開発を進めてるんじゃないの?」

「ブレーズおじさんが、それっぽいのを作ってるの見たことあるよ?」


 ミッドエデンで仲間たちが新しく航空機を作っているというのに、それを無碍にして別に航空機を作るというのはどうなのか……。2人が問いかけると、テレサは首を振った。


「アレはアレ。コレはコレなのじゃ。これから初めて空を飛ぼうとしておる雛鳥で戦えると思うかの?」


「あっ、戦う気なんだ……」

「誰と戦う気なのかは知らないけど、速攻でやられて墜ちるのがオチなんじゃない?いや、駄洒落じゃないわよ?」


「そうならぬように、耐久性や防御性に優れた機動装甲が欲しいと言っておるのじゃ。……ダメかの?」


「ダメとは言わないけど、私のやつが完成した後じゃないと着手は難しいわよ?」


「やはり、ワルツは機動装甲を作る気でおるのじゃな?」


「そりゃ、私の身体の一部みたいなものだし……。でもさ……テレサは何と戦う気でいるわけ?ただ空を飛ぶだけなら、機動装甲なんていらないでしょ」


 ワルツにそう問いかけられたテレサは、これ見よがしに肩を落とした。ただ、その内心では、その質問が飛んでくるのを待っていた、とほくそ笑んでいたようである。なにしろ、機動装甲が欲しいとこのタイミングで切り出したのは——、


「実はのう?エデン殿が生きておっての?彼女が話しておったのじゃ。……アルなんとかが、まだ生きておる、と」


——その一言を使って、ワルツたちを説得するためだったからだ。


「アルタイルが……生きて……る……?」

「えっ……エデンさんが生きてる?!」

 

「うむ。エデン殿と会って話をしたのじゃ。アルなんとかは次元の裂け目で生き残っておって、そしてこの世界に戻ってこようと画策しておる、と。ワルツは機動装甲を犠牲にして、アルなんとかのことを異相空間に閉じ込めたのじゃろう?そのとき彼奴のことを——」


「……確かに殺してはいないわね。異相空間とこの空間との接続を切ったら、永久的に閉じ込められると思ったんだけど……」


 果たして異相空間から、こちらの世界に戻ってくることなど出来るのだろうか……。ワルツはそう考えたようだが、実際、自分たちガーディアンは、好きなときに異相空間に出入りできるので、もしも魔法で同じ事が実現出来るのなら、アルタイルが元の世界に戻ってくることもありえるかも知れない、という結論に至ったようである。


 何しろワルツは今、機動装甲でも魔法が使えるよう自動杖についての情報を集めようとしているのだ。逆にアルタイルが、魔法を使って科学と同じ事を実現しようと考えているとしても、何ら不思議では無いと言えよう。


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