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14.1-30 レストフェン大公国26

「なるほど。それであれば、このような種族の御仁がおるというのも頷けるのじゃ。2人とも、よろしく頼むのじゃ?妾はテレサという」


「よ、よろしくお願いいたします!アステリアです!」

「私はジョセフィーヌ。ジョセフィーヌ=フロイトハートです。この国、レストフェン大公国で大公をしています。以後お見知りおきを」


「うむ。よろしくたのm……は?」


 テレサは耳を疑った。なぜここに国のトップたる大公がいるのか、混乱したのだ。


 しかし、ワルツとルシアがいることを思い出して、すぐに自分を納得させる。なにしろ、2人の関係者には、国家元首の他に、勇者や魔王、さらには自称神までいるのだから……。


「……ま、まぁ、いろいろあったのじゃろう。あ、ちなみに、妾は狐の獣人なのじゃが——」すぽっ「……この耳と尻尾は外れますよ〜?」


「えっ……コルちゃん?!」

「えっ……コルテックス?!」


「……っ?!う、内なるコルテックスが〜……」すぽっ「暴れ出すところだったのじゃ。危ない危ない……」


「「……紛らわしい」」


 尻尾と耳を取って、さらにはしゃべり方が一緒になれば、いったいどうやって区別すれば良いのか……。そんな悩みを抱えたワルツとルシアは、悪ふざけが過ぎると視線で訴えかけながら、テレサの事をジト目で睨んだ。


 結果、テレサの額には汗が滲み、段々と居たたまれなくなってくる。


「と、ところで、妾をここに連れてきたのはどうしてかの?」


 テレサはそう言いながら、土埃の付いた服をポンポンと払いながら立ち上がった。そんな彼女に向かって、ルシアはしばらくジト目を向けていたが、ある程度睨んだ後で、はぁ、と大きな溜息を吐くと、テレサの質問にこう答えた。


「上に行けば分かる」


「上……?あぁ、ここは地下だったのじゃな。また地下施設でも作るつもりかの?」


 テレサの問いかけに、今度はワルツが返答した。


「まぁ、そんな感じ。とにかく、テレサがいないと話が進まないのよ」


「ほう?妾がいないとダメ、とな?ワルツに求められるのなら、例え火の中、水の中、厠の中にだって付いていく所存なのじゃ!」


「じゃぁ、ちょうど良いわ?そこの階段上がって、外に出てみて?」


「……なんか、嫌な予感がするのは気のせいかの?」


「「気のせい、気のせい」」


 ワルツとルシアから同時に同じ言葉が飛んできたことで、テレサは余計に不安になるが……。ワルツからの指示と言うこともあり、仕方なく表に出ることにしたようである。


  ◇


 そしてテレサは、ルシアたちと共に、地表にあるハリボテの家まで登ってくる。地上まで200mの距離を梯子や階段で上るのは中々に骨の折れることだったので、ルシアが重力制御魔法を使い送り届けた恰好だ。


 その際、ジョセフィーヌとアステリアも一緒で、彼女たちは初めての浮遊感を体験して、手足をバタバタと動かして慌てふためいていたようである。ただしそれは、重力制御魔法を受けた者すべてが通過する儀式のようなもの。2人が慌てる様子にルシアは笑みを向けるだけで、詳しくを語ろうとはしなかった。


「というわけで、テレサちゃん。そこが外に繋がる扉だよ?」


「……出た途端、いきなり攻撃を受けるようなことにはならぬじゃろうな?」


「流石にそれは無いと思う。すくなくとも、昨日はそんな事なかったし」


「……で、外に出て妾にどうしろと?」


「思った事をすればいいんじゃないかなぁ?私にもよく分かんない。そこはテレサちゃんが判断すれば良いと思う」


「まったく……」


 ……困った妹だ。そんなことを考えながら、テレサは家の扉を開けた。


 その瞬間である。


   サクッ


 テレサの額に何やら硬いものが突き刺さる。棒に羽のようなものが付いた何か……。


 それは——、


「ちょっ?!扉を開けていきなり攻撃されぬと言ったのはどこのどやつ……あっ、ア嬢だったのじゃ……」げっそり


——外で待ち構えていた者が放った鋭い矢だった。


まったく、許しがたい所業なのじゃ。

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