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14.1-28 レストフェン大公国24

 テレサはその場から消える直前、エデンの真意を確かめるための言葉を考えていた。どんな言葉をエデンに向ければ、彼女から真意を聞き出せるのか……。


 そんなことを考えている内に、テレサの脳裏に1つの妙案が浮かんでくる。


「(……うむ。決めたのじゃ。何を考えておるか喋るよう言ったところで、妾たちが求めるような回答が得られるとは限らぬのじゃから、まずは敵か味方かをハッキリさせようではないか!)」


 テレサはそう決めて——、


「……分かったのじゃ。エデンよ。今一度問わせて欲しいのじゃ」


——という言葉をエデンに向けたのだ。そして目を瞑り、覚悟を決めて……。テレサは思いついた言葉を口にしたのである。


   ブゥン……


「"お主。妾のことをどう思っておる?"」


 と。


「…………」


「…………え?」


 次の瞬間、テレサは『え』と口にしたまま固まった。目を開けたらそこにいたのはエデンではなく、まさかのルシアだったからだ。しかも何やら口をパクパクと動かしながら、言葉に詰まっている様子。


 何がどうなっているのか……。テレサの頭の中が混乱で真っ白になっていると——、


「っ!」


   ドゴォォォォン!!


 突然、ルシアがビームを放ってきた。その際、ルシアが半泣き状態になりながら、何かを口にしていたようだが、魔法の爆音で掻き消え……。テレサの耳どころか、周囲にいた者たちの耳にすら、ルシアの言葉は届かなかったようである。


  ◇


「……どうして妾がこんな目に……」げっそり


「言霊魔法を使ってきたテレサちゃんが悪い!」ぷんすか


 ルシアの攻撃によって、テレサは、地面を何度も跳ねながら吹き飛び、大岩に当たって、その大岩を後頭部で真っ二つにたたき割るという即死間違いなしの大事故(?)に遭うことになったのだが、幸いと言うべきか、彼女が怪我をしたり傷ついたりすることはなかった。コルテックスと同じく魔改造された機械の身体は、ルシアの攻撃でもビクともしないからだ。


 しかし、テレサの心は、ボロ雑巾のようにズタズタになっていたようだ。エデンと話をしていたら、突然訳の分からない(召喚)魔法をルシアに使われ、そして召喚された先で強力な魔力ビームを受けたのである。そんな虐げ(?)を受けても、心にも体にもダメージが無いとすれば、それはもはや人間をやめているか、特殊な性癖があるかのどちらか。その内、まだ人間をやめていなかったテレサにとっては、耐えがたいダメージになっていたようだ。


「そもそも、エデン殿と話しておる時に召喚するア嬢が悪いのじゃ!」


「そんなこと……えっ?エデン……さん?」


 テレサの反論にルシアが目を丸くする。ルシアはエデンが目の前で消し飛んだ姿を見ていたので、彼女が死んでしまったと思っていたからだ。それが生きているかもしれないというのだから、驚くのは当然の反応だった。


 更に言えば、ルシアは、自分の出生の秘密を、エデンの消滅と共に知ることが出来なくなったと思っていたのである。エデンが生存しているとなれば、ルシアはこれから先、出生の秘密を知ることが出来るということ。


「うむ。ピンピンとしておったのじゃ?一瞬、幽霊かと思ったのじゃが、残念ながら生きておったのじゃ」


「……そ……そっか……」


「……うん?どうかしたのかの?」


「ううん……なんでもない……なんでも……」


 テレサの返答を聞いたルシアは、なんでもないと言いながら、顔を青く染め上げた。その様子は、まるでトラウマを掘り返されたか、大きな懸念を思い出したかのよう。


 対するテレサは、ルシアに対する苛立ちがあったので、彼女に対してトドメの1つでも刺してやろうかと考えたようだが、すんでの所で思いとどまった。なにしろ、ルシアがここにいるということは——、


「……む?!ワルツはどこかの?!」


——大好きなワルツが近くにいるということ。結果、彼女は周囲を見渡すのだが——、


「……あれ?おらぬ?」


——そこにいたのは、ルシアの他に、知らない女性と少女が1人ずつ。そしてもう1人。


「……何よ?」


 どこかで見たことのある少女——いや幼女が、1人いるだけで、見慣れたワルツの姿はその場に無かったのである。


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