14.1-25 失踪2
「妾も、ここにア嬢が帰ってきておるとは思っておらぬのじゃ。家出をするにしても、分かりすぎる場所じゃからのう」
「まあ!随分と家出に詳しそうですわね?」
「いや、別に深い意味は無いがの?」
『ルシアちゃんの事が大切なんですねー』
「いや、あんなやつどうでも良いのじゃ」
「『またまたー』」
「…………」イラッ
ルシアの実家の扉前まで来たテレサは、扉に掛けようとしてた手を引っ込めた。一瞬、誰かの顔と、誰かの所業を思い出して、扉を開ける気が失せたらしい。しかし、扉を開かないことには何も始まらなかったので、テレサは「はぁ……忌々しい」と言いながら扉に手を掛けて、そして引っ張った。
すると露わになった部屋の中に——、
「む?ようやく来おったk——」
パタン……
——いてはならない人物がいて、目が合ってしまい、テレサは扉をそっと閉じた。雰囲気的には、扉を開けたら部屋の中に黒光りする昆虫がいて、それと目が合ってしまった、といったような状況に近いと言えるかも知れない。
「……妾……もうだめかもしれぬ……」げっそり
『ちょっと、何やってるんですか?』
「中に入らないと手がかりがあるかどうかも分かりませんわよ?」
すぐに扉が閉められたせいで、事情が分からず怪訝そうな視線をテレサへと向けるポテンティアとベアトリクス。そんな2人に対して、テレサはプルプルと震えながら、こんなことを言い出した。
「……主ら、回復魔法か聖魔法は使えるかの?」
『何言ってるんですか。僕は機械ですよ?マイクロマシンに魔法なんて使えるわけがないじゃないですか。出るのはレーザーだけです。ちなみにどこからでも出せます』ビィーン
「私もあまり魔法は得意ではありませんわ?出来ても」バチバチッ!「と雷を身体に纏ったり」ドゴォッ!「と炎を纏うくらいですわよ?」
「……人選を間違えたかも知れぬ。まぁ、仕方ない……。言霊魔法でも使ってみるかの……」
テレサはそう言うと、再びルシア家(?)の扉に手を掛けて、それを手前に引っ張った。
すると、中にいた人物が扉すぐのところまでやってきていて——、
「其方ら。さきほどから、玄関前で何をしておる?」
——背の低いテレサは、頭の上からそんな言葉を浴びせかけられ、思わずビクリと肩をふるわせた。
というのも、そこに立っていたのは——、
「『エ、エデンさん?!』」
——ワルツによって殺害されたはずのエデンだったからだ。
「なんじゃ?其方らも私のことを化け物みたいな目で見るんじゃな?」
「いやどう考えても化け物じゃろ」
「……ストレートに言われたら、それはそれで傷つくんじゃが……」
「ああ、そうそう、エデンよ。"さっさと昇天せよ"」
シーン……
「……も、もしや、化け物ではない、じゃと?!」あぜん
「……ゲンコツを張って良いか?テレサ」ニコッ
テレサは言霊魔法まで使ってエデンの成仏を試みるものの、アンデッドではなかったためか、エデンの身体が消えることは無かった。
ゆえに、3人は驚愕することになる。
「どうして生きておるのじゃ?!」
「どうして生きているのですの?!」
『どうして生きているのですか?!』
エデンは死んだはず……。そう考えていた3人は、文字通り目が飛び出さん限りに目を見開いて驚いてしまうのであった。
以前、書き忘れておったという話は、エデン殿の話だったのじゃ。
エデンの話を書かねば、ストーリーが先に進まぬからのう。




