14.1-22 レストフェン大公国22
ドゴゴゴゴゴ!!
「「「おぉ!!」」」
ワルツがポンプを完成させて、ルシアが雷魔法で電力を供給。姉妹で力を合わせることで、無事、ポンプの試運転は完了した。
具体的には、即席で作った溜め池にポンプを沈めて、それを稼働させただけである。水をどこかに捨てる配管があるわけではなく、ポンプの出口は上に向かってむき出しなので、ただ水柱が上がるだけで終わり。しかし、それでも、元奴隷の獣人たちは大喜びな様子で地下空間に生じた水柱を眺めていて、ジョセフィーヌやアステリアもまた——、
「さすがはマスターです!」
「魔道具でもこのような事が出来るとは聞いた事がありません。不思議です……」
——と感嘆の声を上げていたようだ。
とはいえ、ポンプ自体は完成したが、電源を供給する発電機が完成したわけではなかった。そもそも、ポンプを作ったのは、ルシアが不在の時に地下空間の排水を代行するためなのだから、ルシア自身がポンプを動かすというのは本末転倒。ポンプが完成した今、次は発電機を作る必要があると言えた。
問題はどんな発電機を作るかだ。この地方は残念ながら、地熱を利用した発電は出来そうになく、また太陽光を利用した太陽光発電も誰かにパネルをイタズラされてしまう可能性が高かったので不可能。その他、地下ゆえに位置エネルギーを使った水車の類いも難しく、あと残るは原子力くらいのもの。しかし、原子力発電に手を出すには、現状、設備的にも材料的にも困難で……。何か別の方法を考えなくてはならなかった。
ポンプの試運転を終えたワルツは、ずっとどんな発電機を作るかで悩んでいたのだが、彼女はふと思い付いた事があったらしく、ジョセフィーヌに問いかけた。
「ねぇ、ジョセフィーヌ。自動杖ってあるでしょ?アレを作る技術って、どこかで教えてくれないかしら?」
ワルツの発言を聞いて、ジョセフィーヌの表情が曇る。当然だ。ワルツが聞こうとしているのは、レストフェン大公国における機密情報。製法は他国に漏れないよう厳密に管理されているというのに、それを知りたがるなど普通はスパイくらいのものだからだ。
そして何より——、
「……作り方については、私もよく知らないのです」
——ジョセフィーヌ自身も自動杖についての作り方は知らなかった。
「やっぱり、"学院"に行かなきゃ教えて貰えない感じ?」
「!」
ジョセフィーヌはワルツに問いかけられて目を見開く。ワルツの口からその言葉が出てくるとは思ってもいなかったらしい。
対するワルツとしては、スパイ活動をするつもりもなければ、自動杖の製法が国家機密であるという認識すら無かったためか、驚いたジョセフィーヌの反応を見ても、なぜ彼女がそんな表情を浮かべているのか分からなかったようである。
「ん?なんか変なこと言った?私……」
「……いえ。確かに学院の然るべき学科に入学し、自動杖の研究を行っている研究室に入ることが出来れば、製法についても教えて貰えるかも知れません」
「やっぱ、それしかないか……。このポンプを動かすために、自動杖の技術を応用出来ないかと思ったんだけど……」
ワルツがそう口にすると、再びジョセフィーヌの表情が変わる。今度もまた、彼女は目を見開いたようだが、その視線に込められた意味は少しばかり異なっていて——、
「……そのお話、もう少し詳しく聞かせて貰えませんか?」
——ワルツの話に興味を惹かれた様子だった。それもかなり強く。




