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14.1-02 レストフェン大公国2

「「お、おいしい……?!」」


「えっ?えっと……ありがとうございます?」


 途中からアステリアに作って貰った食事を食べたワルツとルシアは、その味の良さに驚きが隠せなかった。彼女たちが驚いた理由はそれだけではないが、そのもう一方の理由はプライバシーに関わる事なので省略する。


「私たちが作ったんじゃ、こうは……ううん、なんでもない」

「よかったね?お姉ちゃん。これで美味しいご飯が食べられるよ?」


「それはどういう——」


「「聞かないで!」」


「は、はい!」


 ワルツたちから同時に上がった声を前に、アステリアは思わず声を裏返させた。


 そんなアステリアも、ワルツたちと同じ机に着いて、食事を口にしていた。この朝食前に、当然のごとく、奴隷が主人と同じ机で食事を食べるのは云々、というやり取りがあったものの、これまた当然のごとく、同じ机で食事を採ることを半強制的に認めさせられて……。現在に至る、というわけだ。


「さて、アステリア?今日は貴女たちに仕事をしてもらおうと思うわ?」


「仕事、ですか?」


「奴隷じゃないって言っても、やっぱり働かざるもの食うべからず、だと思うのよ。今回みたいに食事を作るって言うのも……まぁ、ちょっと申し訳なく思うけど、仕事の一つとしてお願いしたいと思ってるわ?貴女も……私たちの作った食事を食べたくはないでしょ?」


「えっ?いや——」


「食べたくない、わよね?」ゴゴゴゴゴ


「ううう……(た、食べたくないって言えないのに……)」ぷるぷる


「まぁ、そんなわけだから、まず一つ、ご飯作りをお願いね?」


「は、はい……」はぁ


 安堵したように肩を落としつつ首肯したアステリアの返答を聞いて、ワルツは満足げな表情を見せた。その際、ルシアが死んだ魚のような目になっていたのは、何か傷つくことでもあったからか。


 そんな妹の反応に気付くこと無く、ワルツは話を先に進めた。


「で、やって欲しい事って言うのは、まぁ、色々あるんだけど、まずは村の人たちに挨拶する事よ?」


「はい。承知いたしました」


「次に、家具作りも必要ね。知っての通り、この家って殺風景でしょ?だから、家具を作って欲しいのよ。木材は私たちが集めてくるからさ?」


「承知いたしました。家具……ですか……。皆と話し合って、家具作りが得意な者がいないか相談してみようと思います」


「えぇ、頼むわ?あ、だけど、鋸や金槌、釘や(かんな)とかも必要よね。ちなみに……道具も作れたりする?」


「流石に金属を使う道具は……」


「そう……。まぁ、しゃあないわね。……だってさ?ルシア」


 ワルツが問いかけると、ルシアはニッコリと笑みを返した。


「アレをやるんだね?」


「えぇ。皆にも出来るようになって欲しいから、実演するわよ?」


「うん。……あ、そろそろ時間かなぁ?」


 ルシアはそう言って椅子から立ち上がると、家の玄関の方へと歩いて行った。


 そして、真っ暗になっていた地下空間の天井へと向かって手をかざすと——、


「朝だよ!っと!」


   ブォンッ!!


——宙へと向かって人工太陽を放ったのである。


 それがワルツたちの朝。地中にあるがゆえに太陽が見えない地下空間における朝の到来だった。


 そして明るくなった空間の中で、ルシアはアステリアの方を振り返って、言ったのである。


「さぁ、精錬するよ?」


 と。それを聞いていたアステリアが、「セイレン……?」と首を傾げていたのは仕方のないことか。


 その後、次々に獣人たちが家から出てきて、ワルツ家(?)の前に集まってくるのだが……。集まってくるや否や始まったワルツとルシアの金属精錬作業を前に、獣人たちが腰を抜かして座り込んでしまったこともまた、仕方のないことだと言えるかも知れない。


雰囲気的には、強くてニューゲーム、といったところかの。

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