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14.0-24 新天地24

 ワルツたちは、ほとぼりが冷めるまで、村からほど近い距離(徒歩3日)にあるという公都へ行くことを決めた。その目的は、自動杖を購入。その他、この国"レストフェン大公国"がどのような場所なのかを知るということも、公都に行く目的の一つだったようである。多くの人々が集まる公都に行けば、手っ取り早く国の雰囲気を知ることが出来ると考えたのだ。


 2人は空を飛んで移動した。ルシアが重力を魔法で操作し、自らの身体とワルツの事を宙に浮かべて運んでいく。


 道中、飛んでいる姿を人に見られないよう、ワルツが周囲の生体反応を確認しながら移動した。それでも移動速度は歩くよりも遙かに早く……。森を越え、草むらを越え、湿原や沼地、さらには川も何本か越えて、公都と思しき町に着くまで10分も掛からなかった。ちょっとコンビニに行く程度の時間だ。


「思ったほど遠くはなかったわね」


「そだね。近所だね」


「まぁ、あの町が公都かどうかは分からないけれど……」


「……それね」


 村からほど近い大きな町、という情報を元に彼女たちが辿り着いた町は、典型的な城塞都市だった。少し盛り上がった丘の上に巨大な城が建てられ、周囲を大きな壁が取り囲み、その内側の隙間に町が作られているという構造の町である。


 町まで歩いて1時間ほどの距離に着地したワルツたちは、降り立った場所の近くにあった道を散歩するような気分で歩いて行く。


「ミッドエデンの王都とは全然違うね?」


「そうね。あの王都……えっと名前なんて言ったっけ?まぁ、いっか。あの王都にも、町を取り囲む壁はあるけど、城塞都市って訳じゃないからね。お城を中心に町が広がってる、ってわけでもないし、そもそも今はお城なんて無いし……」


「人が住む場所って意味ではまったく同じはずなのに、なんでこんなに違うのかなぁ?」


「歴史の影響だったり、地理の影響だったり……。特に戦争が多い場所なんかでは、こういう丸いモンブランケーキみたいな町が作られることが多いみたいよ?」


「ふーん。じゃぁ、この国……レストなんとか公国では、戦争が多いのかなぁ?」


「さぁね?昔は多かったけど、今は少ない……とかかしら?壁の外にもある程度町が広がってるみたいだし」


 ワルツたちはそんな取り留めの無い会話を交わしつつ、周囲の景色に目を奪われながら、遠くに見える大きな町を目指して歩き続けた。道は綺麗に整備されていたこともあり、2人は目測通りに1時間ほど歩いて、町の入り口へと辿り着く。


 2人がやってきた町の入り口は異様だった。巨大な金属製の扉が、何人(なんぴと)たりとも通さない、と言わんばかりに立ち塞がっていて、町の入り口を完全に閉鎖していたのだ。


「うわぁ……何メートルくらいあるのかなぁ?」

「30mちょっとってところかしら。この扉だけで、建物3つ分くらいの重さはありそうね」


 圧倒的な威圧感を与える扉の前に立ったワルツたちは、思わずその荘厳さに目を奪われた。


 そしてややしばらくあってから、2人はある事実に気付くことになる。


「ところで、入り口どこかなぁ?入れそうな場所はどこにも無いんだけど……」

「んー、やっぱり、これじゃない?この大きな扉」


 目の前に大きな扉はあっても、人が出入り出来るような入り口は、周囲に無かったのである。唯一、出入り出来そうな場所は、彼女たちの目の前にある巨大な扉だけ。しかし、その扉は完全に閉じられていて、歩いてはいる事は出来なさそうだった。ついでに言うと、壁の外側に出来た町の周囲には、人っ子一人おらず、辺りはシーンと静まりかえっていたようだ。


「もしかして営業時間外?」

「いや……流石にそれは無いんじゃないかなぁ……」


 天上で燦々と太陽が輝くその下で、ワルツたちが町の入り口はどこかと探していると、門の上の方から声が飛んでくる。門の上には何人か人が立っていて、門の警備をしていたようだ。


「お前たち!」


「えっ?私たちのこと?」

「まぁ、私たち以外にいないよね?」


「そうだお前たちだ!ここは危ないからあっちの方に逃げろ!今ならまだ逃げ切れるはずだ!」


「えっ……何言ってんの?あの人」

「危ない……?何か来るの?」


 2人が門番の発言に戸惑っていると、町の周囲の景色に変化が生じる。何か煙のようなものが、地平の先からモクモクと湧き上がってきたのだ。それも町を取り囲むように。


 それは魔物の大群が移動の際にあげた土煙だった。どうやらこの町は、今ちょうど、魔物たちの襲撃に曝されていたようである。

 

町の者たちが、ア嬢の魔力に恐れおののいた、という展開もアリかと思ったのじゃがの……。

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