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14.0-22 新天地22

「自動杖っていうのはね——」


 ルシアの問いかけに応じ、女学生が自動杖について説明しようとした時の事だった。


「委員長。自動杖の事は……」


「……あぁ、そうだったわね。ごめんなさい。自動杖が魔法を使うための杖の代わりだって事以外、口外するのは禁止になっているの。残念だけど、学院の関係者にならないと知ることができないわ?」


 女学生は、他の学生に口止めされてしまい……。ルシアたちはあと一歩のところで自動杖についての情報を得る事ができなかった。


 それでもルシアは問いかける。詳細は聞けずとも、他に聞けることがあると思い出したらしい。


「えっと、どこで売ってるかも教えて貰えないの?」


「そうねぇ……公都に行けば売ってるはずよ?この村から歩いて3日くらい行った場所に公都があるわ?」


 そういえば村の近くに大きな町があった……。そんな事を思い出しながら、ルシアは意見を確認するためにワルツへと視線を向けようとすると、女学生から追加でこんな言葉が飛んでくる。


「そんなに自動杖に興味があるなら、学院に入って調べてみたら?」


「「……えっ?」」


「学院は才能ある人たちに対して、身分や年齢に関係無く、広く門を開いているわ?まぁ、才能が無ければ入るのは大変なのだけれど、あなたたちがそこの"家"を魔法で建てたって言うなら、才能的には問題無いでしょう。だったら、自動杖について私たちから中途半端に聞くよりも、学院の生徒となって正しく学んだ方が良いと思うの」


 女学生のその言葉に、ルシアは、なるほど、と内心で相づちを打つ。話を聞いていたワルツもまた悪くない手だと考えたようだ。


 だが、これまでの人生の中で学生になった事が無かったワルツとしては、学生になるというのはとても恐ろしい事だった。ただでさえ他人とのコミュニケーションに難がある彼女にとっては、学生になっても1人も友人が出来ず、いわゆるボッチになる未来しか想像出来なかったのだ。


 そんな悲しい展開を覚悟してまで学生になる必要はあるのだろうか……。そう考えたワルツの答えは決まっていたようだ。


 一方、ルシアはルシアで、学生になる事に躊躇があった。


「(尻尾と耳が付いてるから、ダメだよね……)」


 学院があるレストフェン大公国において、獣人の身分は極めて低いのである。もしも魔法学院が門を広く開いているとしても、自分が学院に入れば、いらぬ波風を立てることになるかも知れない……。ルシアは、ワルツとはまた別の理由で、学生になることに抵抗を持っていたようだ。


 そして2人ともに共通していたことは、彼女たちがミッドエデンから一時的に逃避行をしている状態にあり、長時間、この場に留まれるか分からないという点だった。学生になれば杖のことだけを調べられるというわけではないのだ。他にも授業を受けて、試験を受けて、学生らしい生活を送らなければならないのである。タイムリミットがいつ訪れるとも分からない2人にとって、悠長に学生ライフを満喫しながら、杖のことを調べるなど不可能だと言えた。


 ゆえに——、


「んー、まぁ、考えておくね……」

「そうね……」


——2人は、女学生の提案に対し、中途半端な返答をするしかできなかったのである。


 さて、どうしたものか……。2人が悩んでいると、村の外が騒がしくなってくる。どうやら今になって、女学生たちの事を助けるために、他の学生たちや教師たちが援護にやってきたようだ。


ちなみに妾自身は、学校が嫌いな模様。

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