表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2428/3387

14.0-16 新天地16

 ワルツたちが見ている前で、村長が豆腐物件(?)について説明する。


「あれは恐らくあなた方と同じ学院の生徒だと思うんじゃが、昨日、フラリとこの村に現れた2人組の女の子がおっての?その女の子たちが作った建物がこれじゃ。じゃが、今朝見たときは、もう少し砦のような形状をしておったんじゃがのう……。いつの間にか気付いたら、こんな四角い箱のようになっておったんじゃ」


 四角いオブジェのような物体が何かと問いかけられた村長は、ワルツとルシアの家を"家"だと断定出来ずにいた。中に入ったこともなければ、四角いオブジェに変わった瞬間も見ていなかったので、彼にもよく分からない建物だったのだ。


 対する女学生は、酷く不思議そうな顔をしながら、続けて質問する。


「その女の子たちは、昨日この村に来てから砦を作った後、今日になってこのような形のオブジェを作り上げたというのですか?……そのような魔法は聞いた事がありません。俄には信じられませんね……」


「うむ……。儂らも困惑しておったところじゃ。ただ、魔法なのは間違い無い。あの者たちは、ピリピリと肌で感じる強大な魔力を操っておったからの。あぁ、そうそう。2人組の女の子の内、1人は獣人じゃった」


 その瞬間である。


「「「獣人?!」」」


 女学生の他、彼女と一緒にこの場に留まっていた他の学生たちから一斉に声が上がる。


「獣人が魔法を使ったですって?!」

「ありえんだろ……」

「獣人は魔法が使えないんじゃなかったのか?」

「身体強化の魔法なら、無意識のうちに使ってるって話を聞いたことがある」


「いずれにしても、特殊な個体のようね……。もう一人の方は獣人ではなかったのですよね?」


「うむ。獣人の女の子よりも、もっと年下のように見えておった。おかしいのう……先ほどまでそこにおったんじゃが、急に姿を消してしもうたわい」


「逃げたのかしら?でもウチの学園の生徒なら、逃げるなんておかしいし……。あ、でもそっか!」


 女学生は何かを思い付いたらしい。彼女はポンと手を当てて、推測を口にした。


「学校から逃げ出した生徒がいるのね……。たまにいるのよね……。授業がキツすぎて途中で逃げる子。一緒にいた獣人の子っていうのは、その逃げ出した子の奴隷か何かなんでしょう」


 その発言にルシアが激怒する。


「(ちょっと、お姉ちゃん?あの人、なんか気に食わないんだけど!人工太陽(フレア)投げつけて良い?)」


「(フレア?あぁ……アレね……。人工太陽に名前付けたんだ……(コルテックスの影響かしら?)。流石にそれをやったら、村どころか湖一帯が全部無くなるからダメよ?絶対)」


 村に訪れる学生たちが、事あるごとに獣人を奴隷奴隷と発言している事に、ルシアの我慢は限界近くに達していたらしく、彼女の周囲の空気が魔力の高まりによってユラリと揺らめき始めていた。


 それが悪かった。この世界の人々は、魔法を使うことができる——つまり魔力を感じ取ることができるのである。そのせいで——、


「「「?!」」」


——村中にいた全員が、隠れているルシアたちに気付いてしまったのだ。例えるなら、隠れんぼをしながら、大声で自分の位置を宣言するようなものだと言えるかも知れない。


 一斉に自分に向けられる視線を感じて、ルシアは慌てて魔力の暴走を鎮めた。幸い、ルシアは、家々の隙間にあった茂みに隠れており、近くに人はいなかったので、逃げようと思えば逃げられる状態にあった。実際、彼女は、その場から逃亡しようかとも考えていたようである。


 しかし、彼女は逃げようとはしなかった。そもそも今が逃げるシチュエーションなのか、彼女は考えてしまったのだ。


「……これ、文句言わないとダメだなやつだよね?」


「え゛っ」


「だって、一方的に言われっぱなしっておかしくない?奴隷奴隷って、私、奴隷じゃないし!逃げるとかありえないよ!!」ぷんすか


 ルシアはそう言うと、ガサリと音を立てながら立ち上がった。結果、彼女の姿は学生たちや村人たちに見られてしまうが、ルシアは気にしない。


「ちょっと、人のことなんだと思ってるのさ!」


 ルシアは眉を顰めながら抗議した。


 対する学生たちはルシアの姿を目の当たりにし……。そして、ややしばらく唖然として固まってから、それぞれにこう口にした。


「……確かに獣人ね」

「だけど、俺の知ってる獣人と違う」

「あぁ、かなり違う」

「あんなシュッとしてない……」

「っていうか、あれ……」


「「「耳と尻尾を付けた普通の人間じゃん……」」」


「えっ……」


 どうやら学生たちの考えていた獣人と、ルシアたちが考えていた獣人とは大きく異なっていたらしい。そして学生たちは、ルシアの事を、こう思ったようだ。……獣人のコスプレをしたただの女の子だ、と。


いまから6年半前に物語を書き始めた時は、ルシア嬢の個性をうまく書けなくてのう……。

特徴も無い"少女っぽい何か"でしかなかったのじゃ。

シチュエーション的には6年半前に書いたときと似たような状況なのじゃが、あのころから比べると、大分変わったと改めて思うのじゃ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ