14.0-14 新天地14
「「何?」」
「お二人は本当にどこのどなたなのでしょうか?一瞬で家を建ててしまうほどの上位魔法の使い手であり、村の外を歩いても魔物に襲われないその圧倒的な気配……。只者では無いのは確かでございましょう?」
村長はワルツたちの事を2つの意味で疑っていた。身分を隠してこの村に隠れ潜んでいる政府高官か、あるいは、魔物たちを使役して村を襲う悪者のどちらかだ。その内、前者だったなら、魔物を退治する手伝いをしてもらおうと考えていて……。逆に後者だったなら、村から追い出そうと考えていたようである。
対するワルツとルシアは、村長の問いかけを聞いて、二人で顔を合わせると、思わず相談を始めてしまう。
「(やっぱりなんかまともな言い訳を言わなきゃダメそうじゃない?これ……)」
「(って言っても……何て答えるの?素直に勇者って言う?)」
「(いや、それはちょっと……。ルシアがそれを言うなら、私、魔神って答えなきゃいけなくなるじゃない……)」
「(……試しに、勇者って正直に言ってみたらどうなるかなぁ?)」
「(……9割9分、スルーされるだけだと思うわよ?)」
「(じゃぁ、試しに言ってみるね?なんか、耳と尻尾が生えてるってだけで、白い目で見られるの嫌だから……)」
結果、ルシアは、正直に正体を言ってみることにした。
「う、海の向こうにあるミッドエデンという国で勇者をしてるルシアです!」
「…………」
「…………//」カァッ
「……すまん。よう聞こえなかったから、もう一度言ってくれんか?」
「(やっぱダメだった!)」ブワッ
「(でしょうね……)」
勇者という単語自体は通じるかも知れないが、少なくともこの状況においては、村人たちに受け入れて貰える気配は無さそうだった。ゆえにワルツは、新しく黒歴史を作り上げたルシアの頭の上に手を置いて彼女の事を宥めながら、即席のプランBを発動する。
「……おっほん。実は、私たち迷子です!あと……記憶もありません」ドンッ
背の低い少女たちが森の中で迷子になり、偶然この村に辿り着いた……。そんな理由なら、無難に村人たちに受け入れて貰えると思ったらしい。
そして極めつけは記憶喪失であるという設定だ。根掘り葉掘り余計な事を聞かれたくないワルツとしては、記憶喪失であるという設定は必要不可欠。ある意味、究極の防具になると考えていたようだ。尤も、記憶喪失であることを確かめるために、余計に根掘り葉掘り聞かれる可能性も否定は出来ないのだが。
対する村長たちは、迷子、というありきたりな(?)理由に納得していたようである。よほど、海外の国からやってきた勇者や魔神という説明よりもすんなりと受け入れられたらしい。
一方で、記憶が無い、というワルツの発言は、村人たちの間で新たな議論を呼んでいたようだ。ただし、彼女の発言を疑っていたというわけではない。むしろ、ワルツたちの事を心配しての議論だ。
数秒後、何か可哀想なものを見るかのような視線がワルツたちに向けられる事になる。
「(あの視線、なんかイラッとするわね……)」
「(記憶喪失だって言うのが悪かったんじゃないかなぁ?)」
「(だって、記憶喪失だって言わないと、色々追求されそうじゃない?細かく言い訳を考えてたら、いつか破綻すると思うし……)」
「(う、うん……)」
そんなやり取りをしながら、村人たちにどう対応しようか、とワルツが考えていると——、
ザワザワザワ……
——村の入り口の方が騒がしくなる。どうやら、村に来客があったらしい。それも1人2人ではなく、大量の来客が。




