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14.0-01 新天地1

「こうやって、人が住んでるところを探してお姉ちゃんと一緒に飛ぶのは2回目だね。あ、でも、今度は逆かな……。あのとき私、お姉ちゃんに連れられて飛んでたし」


「そうね。まさか私も、こうしてルシアに引っ張られて飛ぶことになるなんて思わなかったわ」


 ルシアとワルツは青い海の上を飛んでいた。ミッドエデンやエクレリア、エンデルシアなどの国々がある大陸を出て、真っ直ぐ西に向かって飛んでいたのだ。


 行き先はこれといって決まっていない。強いて言うなら、2人とも、ゆっくりと静かに暮らせそうな場所が良いと考えていたようだ。


 ワルツの事を妹か何かのように両手で抱えながら、ルシアが()に向かって問いかける。


「どこがいいかなぁ?」


「海沿いはやめましょ?コルテックスたちが追いかけてきたら、真っ先に海沿いを探すでしょうし……」


「コルちゃんならそこまで考えて、敢えて山を探s……ううん。なんでもない」


「あ、そうだ。やっぱり山にしましょ?」


「えっ?どうして?」


「山なら鉱物資源が豊富そうだから」


「……お姉ちゃんは、どこにいても、どんな姿になっても、お姉ちゃんだね……」


 移住した先でも、やはり鉱物を探すのか……。ルシアは思わず苦笑した。どこかこそばゆいような、嬉しいような、そんな複雑な苦笑だ。


 ルシアが超音速で海を飛んでいると、元の大陸から2000kmほど離れた場所に陸地が見えてくる。高高度から見ても陸地に切れ目は見えず、島という大きさではなさそうだった。


「お姉ちゃん!陸だよ?」


「新大陸ね。人がいなかったらどうする?魔物しか住んでいないとか……」


「んー……どうやってお寿司を買えばいいか悩んじゃうかなぁ……」


「あ、うん……そう……」


 自分の価値観はズレているのだろうか……。ワルツはそんな事を考えながら、ルシアの発言に曖昧な相づちを打ちつつ、見えてきた大陸を見渡して……。そしてとあるものを見つけた。


「あ!町があるわよ?」


「えっ?あっ!ホントだ!しかもおっきい!」


「というわけで、あの町の周辺は無しね」


「あ、うん……そうだね……」


 ワルツは、ルシアが微妙そうな返答をしている様子に気付かず、そのまま言葉を続ける。


「でも、町とは近からず遠からずの場所が良いわよね。キャラバンとかが大きな町から荷物を運んでくるのにそう時間が掛からない場所っていうの?」


「たしかに、何かものを頼んでから、届くまで時間が掛かってると困るよね……あ、でも、自分で買いに行っちゃえば——」


「そこは敢えてキャラバンを使いましょうよ。静かに暮らしたいのなら、やっぱり目立つ可能性のある事は避けるべきだと思うのよ」


「……もしかしてお姉ちゃん、アルクの村に住んでた頃、そんなことを考えてたの?だから、サウスフォートレスとかにも殆ど行こうとしなかった?」


「まぁね。でも、あれはちょっと自重が足りなかったと思うのよ。だから今度こそ、もっと自重して静かに暮らそうと思うわ?」


「う、うん……(無理じゃないかな?)」


 結局はそのうち自重を忘れて、以前と似たような事になるのではないか……。ルシアがそんな確信を抱いていると、地面を見下ろしていたワルツが声を上げた。


「あっ!あそこが良いわ!」


「えっ?どこ?」


「あの湖の畔。山にも近くて、町からもそう遠く離れてなくて、良い感じじゃない?」


「えっと……あぁ、あの湖かぁ……。何か近くに大きな建物が建ってるっぽいよ?村みたいなのもあるけど……お城ではないみたい?」


「まぁ、なんかよく分かんないけど、良いんじゃない?」


「適当だね、お姉ちゃん……」


 結局、湖の畔で暮らしたいだけなのではないか……。そう考えるルシアだったが、彼女のその予想は図星だったりする。


 というのも、ワルツはホームシックに罹っていたからだ。1200年前の世界で月の質量を削り取ってまで、元の世界に戻るための機能を修復したというのに、アルタイルを葬るためにそれを機動装甲ごと失ってしまったのである。帰りたいが帰れない。帰る手段も無い……。そんな状況にあったワルツがホームシックに罹ってしまったとしても、仕方がないことだと言えるだろう。


「ともかく行ってみましょ?前みたいに人に見つからないよう、森の中に降りて、ね?」


「うん。こんな風に降りていくの、懐かしいなぁ……」


「言葉が通じると良いわね」


「お金も使えると良いね?」


「そうね……まぁ、私、お金持ってないけど」


「あ、うん……。私が持ってるから大丈夫……だと思う」


 ルシアは森目掛けて高度を落としていった。着陸目標地点は、湖の畔に出来た村まで500m程の場所。近くにある街道に出れば、簡単に歩いていける、そんな場所だ。


さらっと伏線を書くという……。

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