表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
230/3387

5後後後-12 狩り取る者

冒険者ギルドに来ていた狩人とユリア、それにシルビア。

狩人が持っていた魔物の余剰な素材を売り払った・・・その後のことである。


「狩人さん、見てください!これ可愛くないですか?!」


「え・・・あ、うん。そうだな・・・」


「狩人さん、先輩のもいいですけど、こっちも良くないですか?」


「あ、あぁ・・・良いんじゃないか?」


サキュバス(ユリア)翼人(シルビア)に翻弄されるネコ娘(狩人)の図である。

彼女達が何をしているのかというと・・・、


「あ、これもいいですね・・・」


「先輩、もう少し明るめのほうがいいんじゃないですか?」


「後輩ちゃん、オ・ト・ナ、が分かってないなー」


「でもそれ、ワルツ様に着てもらうんですよね?」


「・・・もっと、明るいのにしよっか」


・・・仲間たちの秋-冬服を作るための素材探しの真っ最中である。


「あのだな・・・お前たち。ワルツって、自分で用意した(ホログラム)以外の服を着れないだろ・・・」


「・・・それが何故なのか、狩人さんは考えたことありますか?」


狩人の指摘に、ユリアが答える。


「・・・そういえば考えたことはなかったな。でも、好き嫌いをしているわけじゃないみたいだけどな」


普段着、メイド服、老婆の魔法使い、甲冑・・・。

まるで(?)コスプレをしているように、様々な服装を着こなすワルツの姿を思い出す狩人。


「私の見立てでは、あの大きな姿(機動装甲)に変身した際に破けてしまうからじゃないかと・・・」


「・・・なるほど」


ホログラムの原理の原理を知らない以上、こうした会話が生じるのは仕方が無いことだろうか。


「だからサイズ変更のエンチャントがかかった素材や、伸縮性に優れた魔物の素材で作った服なら着れるんじゃないかって考えているんですよ」


と言いながら、ギルドの売買カウンターに置かれた色とりどりの生地(魔物の革)を指さすユリア。


「それで、これが件の超伸縮素材ってわけです」


「そうか・・・。で、何の革なんだ?」


「エンデルシア大砂漠に生息するサンドワームの亜種の革ですね」


「あぁ・・・あのやたら伸び縮みするやつか」


普段は砂の中に穴を掘って静かに生活しているサンドワーム。

だが、その上を生き物が通った瞬間、伸長して喰らいついてくるのである。

その伸長比は元のサイズの10倍になるとか、ならないとか・・・。


「だが、私の知ってるサンドワームは毛が生えてなかったような・・・」


そう言いながら狩人が視線を向けた先にあった生地には、人の頭髪のような毛が生えていたり、羽毛が生えていたり、あるいはウロコのようなものが付いていたりと、彼女が知っているサンドワームの革とは全く異なる毛色をしていた。


「狩人さんはもしかすると知らないかもしれないですけど・・・エンデルシアのサンドワームは、空を飛んでいたり、水中に潜んでいたり、木の上に生息していたりするんですよ」


「それ、サンドワームじゃないよな・・・」


「いえ、サンドワームです」


「・・・」


何か、騙されている気がしてくる狩人。


「その顔は信じてないって顔ですねー?」


「・・・正直言うとな」


「・・・」


ジト目を狩人に向けるユリア。

だがすぐに『まぁ、仕方が無い』という表情をして、ため息を吐いた後、


「なら、ちょっと来てください」


そう言って掲示板の方へと歩いて行った。


「あ、後輩ちゃんは、素材の選定をお願いね」


「分かりました!」


ビシッ!


ユリアに敬礼するシルビア。

その様子を見る限りシルビアは、材料さえ手に入れば、それが何の魔物の素材なのか気にならないらしい。




「ほら、狩人さん!こっちですよ」


「あ、あぁ・・・」


ユリアに呼ばれ、狩人が掲示板のところまで移動していくと、様々な種類の魔物の討伐依頼書が眼に入ってきた。

それぞれの依頼書には魔物の特徴が簡単に描かれているのだが、その中に件のサンドワームに関する依頼があるらしい。

・・・何やら『国王』と書いてある手配書があるのは、恐らく気のせいだろう・・・。


「例えばこれがそうですね」


そう言って、一枚の依頼書を指すユリア。


「ん?この木から垂れ下がっている布みたいなやつか?」


「これ、ウッドワームって種類のサンドワームです。普段は木の枝とかに巻き付いているんですけど、下を獲物が通ると、ばくん、って噛み付いてくるんですよー」


と、手で『ばくん』を表現するユリア。


「・・・それ、サンド()・・・関係ないよな」


「いえ、サンドワームです」


「・・・」


「で、次はこれですね」


そう言って次にユリアが指したのは、空飛ぶ布のようなものの絵だった。


「これはフライングワームと呼ばれる種類のサンドワームですね。内側は空洞になっていて、皮の部分に消化器官が付いているっていう変種です。口から吸った空気をおしりから出して空を飛ぶのが特徴で、意外と速んですよ?」


と、手で内側が空洞になっていることを表現するユリア。


「・・・やっぱり、それ、何か違」


「サンドワームです」


「・・・」


飽くまでもサンドワームらしい。


「やっぱり、直接見てみないと、納得出来ないな・・・」


「そうですか・・・なら、この町の近くでも亜種が生息しているみたいなので、見に行ってみましょうか?」


と言いつつ、一枚の依頼書を指すユリア。


「・・・だが、時間は大丈夫か?」


「何言ってるんですか、狩人さん。何のために無線機をワルツ様に(たまわ)ったと思っているんですか?」


「そりゃ・・・あ、なるほど」


狩人は、今でも、無線機の有用性に気づいていなかったようである。


ユリアはバッグの中からハートマークの付いたハンカチに包んで保管していた無線機を取り出すと、ボタンを押した。


『ワルツ様ー?今、お時間、よろしいでしょうかー?』


すると、直ぐに、


『何かあった?』


ワルツから返事が戻ってきた。


『数刻程度、狩人さんと狩りに出かけたかったのですが、もしかすると集合時刻に遅れそうなので、一応連絡を入れておこうかと思いまして』


『あー、なるほどね。いいわよ。何だったら迎えに行くから、終わったら連絡頂戴?』


『分かりました。お手数をお掛けします。それでは失礼致します』


そしてユリアは、再び大事そうに無線機をハンカチで包んだ後、バッグへと仕舞いこんだ。


「・・・なんか、随分と使い慣れてるな・・・」


「はい。コルテックス様に色々と教わりましたので」


「あ、そっか。ユリアは新設された情報部の部長だったな」


「はい。まぁ、無線機の使い方は情報部とか関係ないんですけどね」


なお、ホントのところは、ワルツと会話したいがために、コルテックスに通話の仕方を教えてもらっただけだったりする。


「では、素材の購入が終わったら行きましょうか」


「別に依頼の契約はいらんよな?」


「行って戻ってくるまでの時間がもったいなので、契約は要らないと思いますよ?」


「そうだな・・・」


そして、狩人達は、シルビアが四苦八苦しながら品物の選定を続けている売買カウンターへと戻っていくのであった。

・・・依頼書に何やら『増殖注意』と赤字で注意書きがしてあることを見落として・・・。




狩人達は、品物の購入が終わった後、エンデルシア首都郊外のとある()へとやってきた。


「で、ここにサンドワームがいると?」


「はい。亜種ですけどね」


「狩人さん、サンドワームが見たいとか、物好きですね・・・」


「いや、待ってほしいシルビア。普通じゃないサンドワームがいると言われれば、見てみたいと思う。それが女心じゃないか?」


『はあ・・・』


それは紛れも無く、狩人魂、である。


「それにしても、畑にサンドワームが出るとか、聞いたこと無いんだが?」


狩人の視線の先には、何も植えられていない広大な畑が広がっていた。

所々に掘り返したような様子が残っているのは、サンドワームが出てきた跡だろうか。

畑に何も植えられていないのは、地下にサンドワームが潜んでいて危ないから、ということなのだろう。


「ダメですよ狩人さん。先入観を持って魔物と対峙しちゃ。いつか足元をすくわれますよ?」


「・・・肝に銘じておくよ・・・」


・・・釈迦に念仏、である。


「・・・で、ここにいるサンドワームはどんな種類のサンドワームなんだ?」


「えっ・・・狩人さん見てなかったんですか?」


「・・・いや、てっきりユリアが見ているものだと」


・・・2人揃って、依頼書に書いていたサンドワームという単語と、場所の説明しか見ていなかったらしい。


「ここまで来たはいいが、普通のサンドワームしかいなかったりしてな」


「いえ、ここは砂漠ではないので、それは無いと思いますよ」


普通のサンドワーム(?)は、今、狩人達が立っている場所のような硬い土の中では生息できないのである。


「まぁ、せっかく来たんだし、顔くらい拝んでいくか・・・」


そう言って、狩人が畑へと足を踏み出した。


ふにゃ・・・


「ふ、ふにゃ?」


足から伝わってくる、何か柔らかいものを踏んだ感触に思わず後退する狩人。


「狩人さん・・・いくら猫人族だからって『にゃ〜』は無いと思いますよ?」


「いや、違うって。何か踏んづけた気が・・・」


狩人がそんな事を言った瞬間だった。


ドゴォォォゥゥゥン!!


辺り一帯をまるで地震のような振動が支配する。


そして、


ニュルニュルニュル・・・


ソレは現れた・・・。


「これがエンデルシアのサンドワーム・・・」


妙にテカリのある皮膚に、等間隔に並ぶタテ縞。

一番太い部分の直径は10mほどだろうか。

そして何より・・・


「長っ・・・!!」


延々と続いていた畑全体から、その巨体が文字通り湧き出てきたのである。

全長は優に1kmを超えているのではないだろうか。


「絶対これ、サンドワームじゃないだろ!」


その見た目はサンドワーム・・・ではなく、巨大なミミズであった。

・・・まぁ、ミミズとサンドワームの違いは不明だが。


「これ、実は地竜の類じゃないよな・・・?」


水竜の元の姿よりも太く長いミミズ(?)に、そんな疑問を口にする狩人。


「サンドワームですね」


「いや、何で断言できる・・・」


「これはガイアワームと呼ばれる種のサンドワームだと思います。ただ、私の知っている種とは随分大きさが違うので、亜種かもしれませんね」


「もう、なんでもいいよ・・・」


面倒くさくなった狩人は『でかいミミズ』と納得することにした。


「さてと、方付けるか・・・」


『えっ・・・』


すると、顔を真っ青にするユリアとシルビア。


「いや、狩人さん。冗談ですよね?」


「いくらなんでも、無謀すぎですよ!絶対、災害指定される類の魔物ですって・・・!」


今更になって、ここに狩人を連れてきたことを後悔し始めるユリアとシルビア。

だが、彼女達の懸念とは裏腹に、


「そこに未知の魔物がいるというのに挑まないなんて・・・狩人の名折れだろ?」


キラッ!


っと笑みを見せた後、狩人は愛用のダガーを振りかざして、魔物へと突っ込んでいった。


ズバァァァン!!

ドシャァァァッ!!

ニュルニュルニュル・・・


「・・・ねぇ、後輩ちゃん」


「・・・帰りましょうか先輩」


巨大ミミズにシルビアが懸念したような強さは無かったが、色々な意味でグロテスクな光景に、2人は思わず眼を(そむ)けるのであった・・・。




・・・そして数十分後。


「・・・やっぱり、無理・・・」


ぜぇはぁ言いながら、膝に手を付いている狩人の姿があった。


「切ったら増えるとか、おかしいだろ・・・」


狩人が巨大サンドワーム(ミミズ?)を切った回数分だけ、独立して動くサンドワームが増えていた。

最早、ミミズというより、プラナリアと言ったほうが良いかもしれない。


「もう、刃もないし・・・」


狩人の両手に握られていたダガーの刃は、元より折れていたというのに、それに輪をかけて更に短く、そしてボロボロになっていた。


「これ・・・無理だな」


『えっ・・・』


広大な畑全体を覆い尽くすかのようにして、のたうち回る複数の巨大な(サンドワーム)を前に絶句するユリアとシルビア。


「それ、(まず)いんじゃないですか?」


「ギルドと契約してないって言っても、バレたら訴えられると思いますよ?」


「・・・そんなこと言われても、もう本当に無理だ・・・」


2人がなんと言おうと、狩人にはもうどうすることも出来なかった・・・。

そもそも、もう武器が無いのである。


「・・・そうやってすぐに諦めるから、ワルツさんにも『スタミナが無い』とか言われるんですよ」


「えっ・・・」


ユリアのまさかのカミングアウトに、思わず顔を上げる狩人。


「いいんですか、狩人さん?ワルツ様に嫌われても?」


すると狩人の眼つきが変わる。


「・・・う、うわぁぁぁぁぁ!!」


・・・そして、狩人は、サンドワーム(ミミズ)へと突進していった。


「えっと・・・よかったんですか、先輩?そんな変な火の着け方をして・・・」


妙な火の着き方をした狩人を見送りながら、シルビアが口を開く。


「・・・やっぱり、拙かったかな?」


そう言ってから少々後悔するユリアだったが・・・後の祭りであった。




ズバァンッ!!


狩人が、刃のないダガーを使って、サンドワームを無理矢理に叩き切る。

いや、引きちぎる、というべきか。


「ガァァァァァ!!!」


無我夢中の狩人は、衝動のまま雄叫びを上げた。


ズドォォォン!!


獲物の刃がないなど関係無かった。


ズドォォォン!!

ズドォォォン!!


ただひたすら、一心不乱に叩き切る(潰す)


「ああアあぁァァあアぁ!!!」


狩人の雄叫びに異変を察知したのか、それまで特に狩人に対して反応を見せていなかったサンドワーム達が後退を始めた。


だが、


スパァン!

スパァン!

スパァン!

・・・


まるで凶悪なカマイタチが通過するかのように、宙を舞うサンドワーム()()()何か。


切って切って、切り刻んで・・・

いつの間にか狩人の周辺には、鋭利な刃物で切られたような断面をしたサンドワームの亡骸が山積みになっているのであった。

まさに、死屍累々である。


「ちょっ・・・狩人さん、何か怖い・・・」


「・・・先輩が焚き付けたからですよ?」


もしも、彼女が敵だったなら・・・。

そう考えると足が震えてくるユリア。


そして、しばらくすると、


シーン・・・


畑からは一切の音が消え、ただ真っ赤な血の海が広がるのであった。

・・・その中心に、真っ黒なオーラに包まれた少女(狩人)を残して。


ゴゴゴゴゴ・・・


最早、狩人の雄叫びは聞こえなかったが、彼女を取り巻く雰囲気は、極めて異質なものであった。

彼女を中心として、一切の色が失われていくのである。

乾燥地帯であっても辛うじて土色をしていた地面は、まるで砂漠のような白色の砂に変わり、サンドワームの体液も蒸発したかのように消え失せていく。

その上、近くにあった雑草、それについていた虫、更には吹いていた風までが、その息吹を止めていた。

そして何よりも異質だったのは、壊れて使い物にならなくなったはずのダガーが、光を一切反射しない真っ黒な何かに変わっていることだろうか。


そんな光景を見たユリアの口から言葉が漏れる。


「死神・・・」


そう、すべての命を()り取る存在。

今の狩人は死神としか形容できない姿だったのである。


そんなユリアのつぶやきが聞こえたのか、俯いて表情の伺えない狩人がユリア達の方を振り向く。


そして、


ニタァ・・・


笑みを浮かべた。


『ひぃっ?!』


顔面蒼白になるユリアとシルビア。


「ちょっ、先輩、まだ死にたくありませんよ!どうにかして下さい!」


「いや、私にも無理だって!まさか狩人さんがあんなになるなんて・・・」


そんなやり取りをしていると、


ふらっ・・・


狩人の姿が消えた。


そして彼女が次に現れたのは、ユリア達の眼の前であった。


『っ・・・!』


硬直する2人。

そして、ユリアは最期の言葉を口にした。


「ワルツ様・・・助けて・・・!」


「え?呼んだ?」


ドゴォォォン!!


そんな気の抜ける声とともに、轟音が辺り一帯を支配した。


「いやー、あんな気持ち悪いのを相手に、狩人さんはよく戦えるわよね・・・」


と言いつつ、ユリアとシルビアを重力制御で浮かべ、狩人の間合いの外へと逃がすワルツ。


「でも、狩人さん。仲間に刃を向けちゃダメですよ?」


とワルツが言うものの、


「・・・」


狩人は俯いたまま無言であった。


「・・・?」


そんな彼女の様子に首を傾げるワルツ。

すると、


「・・・ワ・・・に・・・ない・・・」


消え入りそうな声で何かを呟く狩人。


「えっ?」


ワルツ・・・ではなく、ユリアが思わず聞き返す。

すると、


「ワルツに嫌われたくないんだぁぁぁ!!」


そう叫び声を上げながら、狩人は真っ赤な視線をワルツたちへ向けた。


(眼を真っ赤に光らせるのって、最近流行ってるのかしらね・・・)


とテレサの事を思いつつ、


ペシッ!


「ふぎゃっ!!!」


・・・狩人にデコピンを喰らわせる機動装甲(ワルツ)


「貴女たちもよ?」


ペシッ!

ペシッ!


「ったぁ!!!」

「はきゃっ!!!」


ユリアとシルビアもデコピンを喰らった。


「全く・・・なんで私が狩人さんを嫌わなきゃなんないんですか?」


そう言いつつ、額を押さえながら俯いている狩人を優しく抱き寄せるワルツ。


「・・・ワルツ・・・?」


ようやくマトモな気を取り戻したのか、普段通りの表情になった狩人が、ワルツを見上げてきた。


「・・・わ、ワルツ!!うわあぁぁぁ・・・」


そして、狩人は機動装甲に抱きついたまま泣き始めた。


「いや・・・泣くほどのことでも・・・」


そんなに痛かったかなぁ・・・と思いつつも、ワルツも狩人を抱きしめ返すのであった。


「・・・貴女達も、不用意に人を焚き付けたりしたらダメよ?」


そう言って、真っ赤な複眼をユリア達に向けるワルツ。


「う、うぅ・・・ぐすっ・・・」

「・・・以降、気をつけます・・・」


泣き始めるユリアと、不承不承な様子で頭を下げるシルビア。

シルビアの場合は、ユリアに巻き込まれただけ、とも言えるだろうか。




しばらくすると、泣き疲れたのか、それとも無理して身体を動かしたためか、狩人はワルツに抱かれたまま寝てしまった。

そんな折、


「・・・ワルツさん、ずっと近くで見てたんですか?」


助けて、と叫ぶと同時にやってきたワルツの事を思い出しつつ、ユリアが問いかける。


「いや、さっきまでクレストリングにいたんだけど、あんな大規模に戦闘してたら、どこからでも見えるわよ・・・。ちなみに、一瞬で来れたのは、私の全力短距離ダッシュ(空間歪曲移動)のおかげね」


「・・・えっと、よく分かりませんが、助かりました・・・」


そう言ってワルツに抱きつこうとするユリア。


・・・だが、


「・・・どさくさに紛れて抱きつこうとしても無理よ?」


重力制御で押し返される。


「ぐぬぬぬ・・・」


斥力に逆らうように、ワルツに向かおうとするユリアだったが、


「・・・無理・・・」


バタリ・・・


その場にへたり込んでしまう。


「だから言ったじゃないですか先輩。ワルツ様は難攻不落なんですから、皆で協力して落とそうって」


「やっぱり、それしか無いか・・・」


「・・・それ、覚えておくわ」


・・・そして人知れず、ワルツの対人セキュリティーが、また一段階、上がったのであった。




「さて、クレストリングに戻りましょうか」


ユリアたちも落ち着いたようなので、頃合いを見計らってそう口にするワルツ。


「なんか、飛行て・・・エネルギアの方から来てもらったほうが早そうですけどね・・・」


空をジグザグに飛んで行くエネルギアを見上げながら、そう呟くユリア。


「んー、多分、彼、呼びかけても私たちのことが見えてないと思うのよ・・・」


「彼・・・あぁ、ワルツ様に()()見えないという男の子のことですね?」


「・・・えぇ、そうよ?」


(なんか、改めてそう言われると傷つく気がする・・・)


豆腐よりも柔らかいワルツのハートが、何気ないユリアの一言に粉砕しそうになっていると・・・


ドゴォォォン・・・


何やら空の方から、爆発音が聞こえてきた。


『あ・・・』


空を見上げたワルツ達の眼に入ってきたもの。

それは・・・


ドゴォォォン!!

ドゴォォォン!!


クレストリングに接岸(?)しようとしたエネルギアに対する、砲撃であった。

どうやら、空気を読んで(?)エネルギア少年が仲間たちを迎えに来たところを、狙われたようである。


時間があれば、もっとゆっくりと書くんじゃがのう・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ