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5後後後-09 どこに惚れたのか

魔神=マシンとしてお楽しみ下さい(?)

「じゃぁ、ミッドエデンに行こうか」


ギロリ・・・


仲間たちに睨まれる国王。

・・・だが、彼にそれに臆した様子は無い。


(ここまでくれば、もう天晴(あっぱれ)としか言いようが無いわよね。私ならあんな状況、絶対、耐えられないわ・・・)


ワルツがそんなことを思っていると、


「あの、国王陛下」


カタリナが口を開いた。


「なんだ?」


「ワルツさんのどこに惚れたんですか?」


カタリナは、話すことが出来ないワルツの代わりに、問いただした。


(カタリナ・・・やっぱりあなたって気が効くわね)


殺気を出していた仲間たちも手を出さないところを見ると、やはり同じように気になっていたのだろう。


「ふむ・・・。そのことか・・・」


すると国王は空に目をやって遠くを眺め、語り始めた。


「いや、な。俺はこれまでの長い人生の中で、様々な種族の様々な女性たちを妻に迎えてきた」


(うわぁ・・・それ、本人の前でいう言葉じゃないわよね・・・ま、見えてないだろうけど)


と、ワルツは思うが、仲間たちは気にすること無く、国王の言葉に聞き耳を立てているようであった。


「まぁ、それは国王であるが故に、避けられないことなんだがな・・・」


(そりゃ、跡継ぎがいないと、後々大変なことになるからね・・・)


と思いながら、大変なことになった挙句、半ば(自分達に)国を乗っ取られてしまった元姫君(テレサ)に視線を向けるワルツ。


「そして、皆も知っての通り、俺はエルフ故に、ほぼ不老不死に近い存在だ・・・」


そう言って、眼を細めながら口を真一文字に結び、眉を(ひそ)める国王。


「もう・・・見たくはないのだ・・・」


そして彼は、妻たちを思い出しながら歯を食いしばった。

亡くなっていた妻たちを思い出したのだろうか・・・。


『・・・』


辛そうに語る国王に、先程まで敵意を向けていた仲間たちも、どこか同情の表情を見せ始めていた。


「だから俺は、次の妻に、魔神を迎えようと思ったのだ・・・!」


魔神ならば長い時を共に生きていける、そう考えたのだろう。


「そう、でしたか・・・」


カタリナが納得したような声を漏らした。

周りの皆も、お互いに顔を見合わせて、どうしたものか、と話し合っているようである。

・・・ただ一人を除いて。


「(・・・カタリナ、こう問いかけてくれないかしら?『貧相な身体なのに?』って)」


パラメトリックスピーカーを使って、カタリナだけに言葉を送るワルツ。


(グハッ・・・!!・・・心の耐久値があったらなら、今ごろ5%を切ってるわね・・・)


彼女は、心のなかで吐血しながら、精神に耐久値が存在しなくて良かった・・・、などとと思うのであった。


一方、言葉を送られたカタリナは、その言葉に目立った反応を見せること無く、口を開いた。


「・・・陛下。ワルツさんは常日頃から体型にコンプレックスを持っています」


「グハッ!!」


「ん?何か今、聞こえなかったか?」


「・・・いえ、気のせいじゃないでしょうか?」


「そうか・・・で、ワルツ女史の貧相な身体付きがどうしたというのだ?」


(いや、カタリナはそんなこと言ってないし・・・)


「はい。陛下は、幼児体型のようなワルツさんでも構わないのですか?」


(えっと・・・カタリナ?幼児体型は言いすぎじゃないの?)


カタリナの容赦無い一言に、心を(えぐ)られるワルツ。

・・・だが、それは自分で招いた結果だったので、眼をつぶることにする。


一方、国王も文字通り眼を瞑り、何かを思い出しているようであった。

そして、


「・・・いや、そうではなくては困るのだ!」


カッ!


っと眼を見開いて、そんなことを口にする国王。


「・・・カタリナ。お前も、年をとれば分かる・・・」


と、言いつつ、彼はカタリナの決して小さいとはいえない胸に視線を向けた。


「・・・?」


「・・・」


妙な空気が場を支配する。


そんな空気を壊すかのようにして、国王は口を開いた。


「もう、俺には耐えられないのだ・・・妻たちの垂れた乳を見ることが・・・」


『はあ?』


「だが、ワルツ女史なら問題はないだろう。魔神なのだし、その上、貧ny『ドゴォォォン!!』ぶはあっ!!」


機動装甲の腕(未知の力)によって吹き飛ばされる国王。


「・・・ホウ?ダレガ、ひ・・・貧乳デスッテ?」


ゴゴゴゴゴ・・・!!


光学迷彩を解除したワルツが顕現する。


「ひ・・・ひぃ!!化けも『ドゴォォォン!!』ぐはぁっ!!」


「ホウ・・・ヴァケモノ・・・?」


ドス黒いオーラを放つワルツが、国王に平手打ちを浴びせかける。


「ま、この際、そんなことはどうでもいいわ・・・で、私が幼児体型の貧乳で、見窄らしくって可哀想ですって?」


なお、そんなことは、誰も言っていない。


ガションッ!

ガションッ!

ガションッ!

・・・


普段は立てない足音を上げながら、国王に迫るワルツ。


「ぬっ・・・ま、まさかお前・・・ワルツ女史か?!」


「気づくのが遅すぎたわね・・・消えなさい」


そして機動装甲(ワルツ)がトドメの一撃(平手打ち)を放とうとした瞬間であった。


「・・・かつて鬼神を妻に迎えた時に身につけたこの防御魔法を使うことになるとは・・・絶対隔壁!」


そう言って、その名前に恥じない究極の結界魔法を展開した国王。

・・・どうやら、彼のG(ゴキブリ)並の生命力は、妻からのDV(家庭内暴力)に耐える為に身につけた能力のようである・・・。


まぁ・・・ワルツにそんな結界魔法が通用するわけもなく・・・


《ジェネレータブースト Y/N Y》

《CODE:0001 アクセプト》


ゴォォォォ!!


国王は、オゾン臭を放ちながら紫電を(まと)わせた彼女の腕に、


パァンッ!!


まるで最初からそこには何もなかったかのように、吹き飛ばされたのであった。

それも文字通り、血しぶきにされながら・・・。


「はい、ゴミ処理完了」


(なんか、まだ湧いてきそうだけど・・・)


周囲に漂う赤い霧(血しぶき)にそんなことを思うワルツ。

赤い霧の中に佇む機動装甲の姿は、まさしく魔神(マシン)そのものであった・・・。


『・・・』


そんなワルツの姿を見た仲間たちが、絶対に体型ネタは口にするまい、と思ったのは言うまでもないだろう。


「そうじゃったのか・・・ワルツはそんなコンプレックスを持っておったのか・・・」


・・・まぁ、テレサには理解できなかったようであるが。




「それじゃ、帰りますか」


再び、機動装甲の姿を不可視化させながら宣言するワルツ。


「えぇ・・・なんか、どっと疲れてしまいました・・・」


頑張ってゾンビたちを救う方法を探していたというのに、結局実を結ばず、骨折り損になってしまったカタリナが呟く。

まぁ、人をゾンビ化させて操ることの出来る細菌を手に入れたので、単に骨折り損と言うわけではないのだが。


(あ・・・天界とかいうやつについて聞くのを忘れてたわ)


ワルツとしては国王に会う予定は無かったので、最初からTodoリストには無かったとも言えるだろうか。

ちなみに、その情報を(もたら)した賢者天使(?)の事は勇者に丸投げである。


(ま、その内勇者たちが戻ってきたとき聞けば分かるでしょ)


「・・・そうだ。お姉ちゃん!帰る前にお土産買っていかないと」


「偉いわねルシアは。ちゃんと覚えてたのね」


「うん!」


「というわけで皆?エンデルシアで買い物してから戻るわよ?」


『はい(うん)(うむ)(承知しました)』


と、仲間達がワルツに返事した。

そんな時のことである。


「はぁー・・・本気で死ぬかと思った・・・」


そんなことを言いながら、再びエンデルシア国王が沸いて出た。


『・・・』


最早(さげす)む視線は無く、半分、畏怖を込めて国王を見つめる仲間たち。


「ん?・・・そうかー。皆、ようやく俺の偉大さと懐のデカさが理解できたか!」


正しくは、気味の悪さと往生際の悪さを理解した、である。

絶対的な魔力を誇るルシアでさえ、眼に生気が感じられなかった。


「そこにいるんだろ?ワルツ女史。では、改めて・・・。俺と『グサッ!!』ぐふっ?!」


突如として腹に生えた金属製の銛(?)に、思わず言葉を中断する国王。


「テレサ様。お見苦しい所を見せてしまい、誠に申し訳ございません」


そう言って小太りの中年男性・・・エンデルシア宰相が現れた。


「おらっ!糞国王、帰るぞ!」


(かえ)しがいくつも付いた銛を引っ張りながら、お世辞にも綺麗とはいえない言葉を自分の主であるはずの国王に向ける宰相。


「おまっ・・・俺の一世一代の晴れ舞台(プロポーズ)を台無しにするつもりか!」


「あ゛?あまりわけの分かんねぇこと言っていると、鬼目ヤスリで削んぞコラ」


すると何故か顔を青くしながらビクリと身体を硬直させる国王。

・・・実際に削られた経験でもあるのだろうか。


「・・・では、テレサ様。大変見苦しいところをお見せいたしまして誠に申し訳ございませんでした。国王は私達の方で連行いたしますので、どうか本日はごゆるりとクレストリング(首都)をご観覧下さいませ」


まるで能面を被ったかのようにして表情がガラリと変わる宰相。


「うむ。手数を掛けるのう」


テレサにそれを気にした様子はなく、淡々と返事をしていた。


「それではこれにて失礼致します」


そう言って頭を下げた後、彼は、銛が刺さったままおとなしくなった国王を連行していった・・・。

時折、国王が物悲しげにワルツたちの方を振り向いていたのだが・・・


(・・・なんか、鳥肌が・・・)


気味が悪い・・・ワルツはただただそう思うのであった・・・。


貧乳はステータス・・・ではない。

・・・この世のコトワリじゃ。

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