5後後後-05 失踪?
(鍵をかけられたわね・・・)
と思いつつ、大した問題ではなかったので口には出さなかったワルツ。
彼女の前では物理的な鍵など一切意味が無いのである。
問題があるとすれば、鍵を掛けられた理由が何なのか、だろうか。
だがワルツは、どうせエンデルシア国王が仕組んだんでしょ、と大して気にすることもなく、予定通りに事を進めることにした。
エンデルシアにいる以上、彼からの何らかの妨害(?)があるのは致し方無い、と諦めているとも言えるだろうか。
「さてと、カタリナ達に会いに行きましょうか」
「うむ。時間も限られていることじゃしのう」
クレストリングに着いた時点で朝の9時を過ぎていた。
エンデルシアが午後の何時からゾンビたちを処理するのか分からない以上、やはり午前中に事を済ませておくべきだろう。
「それじゃ、ちょっと連絡をとるから待ってて」
と言いつつ、透明なままで皆に背を向けたワルツは、
『カタリナー?生きてるー?』
返事が戻ってこなかったら無線機越しで聞いている仲間たちが心配してしまいそうな、そんな言葉を電波に載せた。
もちろん、そんな面倒なことにはならず、
『はい。クレストリングに着きましたか?』
すぐにカタリナから言葉が返ってきた。
『えぇ、ついさっきね。何か部屋に案内されて、閉じ込められちゃったみたいだけど』
『えっ?!』
無線機越しに聞こえてきたワルツの言葉で、初めて自分たちが閉じ込められたことを知る仲間たち。
ユリアとシルビアが入り口の扉を押してみたり、水竜とシラヌイで斬りかかったり、ルシアが、
ドゴォォォォォ!!
っと、光魔法を扉に向けて行使したりして、どうにか扉を開けられないか試していた。
・・・まぁ、そこまでやって壊せないわけもなく、扉だった部分には呆気無く大穴が開いたのだが・・・。
その先で、ドアに鍵をかけた本人が気絶していたが、まぁ、些細な事だろう。
そんな光景を横目で見ながら、特に木にした様子もなく、カタリナと会話を続けるワルツ。
『ま、扉なんてもう残ってないけどね・・・これ、後で修理代とか請求されないわよね・・・?』
『分かりませんけど、これ以上請求が増えないように程々にしてくださいね』
『うん!』
カタリナの言葉に、元気よく返事を返すルシア。
『それで、今どこにいるの?』
まさか、自分たちと同じようにカタリナたちも捕まっていたりするんじゃ・・・などとワルツは思ったが、
『王城の外にある宿屋です』
そういうわけではないらしい。
『・・・もしかして、国王から逃げてた?』
『いえ。王城内では、下手に機材を出して作業できませんので・・・』
どうやらカタリナは、ワルツの言いつけ通り、教わったことは他言無用というスタンスを守っているようである。
『そう。じゃ、私達も今そっちに行くわ』
『はい、分かりました。では、お待ちしてますね』
というわけで、ワルツ達はクレストリングから、エンデルシア首都にある宿屋へと向かうことになった。
・・・ただし、
「さてと、行きましょうか」
ドゴォォォン・・・(床ドン)
床を貫いて真っ直ぐに、である。
最早、修理代請求のことなど、ワルツの頭からすっぽりと抜けているのであった。
だが、ここで予想外のことが起こる。
ワルツが開けた床の穴から・・・
「・・・ふう。もう見つかってしまったか・・・」
・・・何故かエンデルシア国王が現れた。
どうやら、部屋の下部に、内部を伺うための別の部屋があったらしく、そこでワルツたちの動向を調査(盗聴?盗撮?)していたらしい。
・・・所謂、スパイ活ど・・・変態である。
彼の姿が見えた瞬間、
チュン!
チュウィーン!
無言のままレーザーを放つルシアと、透明なままのワルツ。
彼が出てきたら殺害することは決定事項なので、速やかに攻撃を開始したのである。
まさにサーチアンドデストロイである。
扱いとしては、部屋の中に現れたゴキブリよりも悪いかもしれない。
ゴキブリを殺すために、部屋ごと破壊はしないのだから・・・。
・・・まぁ、蜘蛛が嫌いなワルツの場合、部屋の中にアシダカグモが出てきたなら、家ごと破壊するかもしれないが・・・。
さて、前回はレーザーの攻撃を受け、一時的ながらも撤退した国王だったが・・・
「ふん、効かんな」
レーザーが国王に当たった部分だけ、まるで鏡のような直径5cm程度の丸い結界が生じて、傷一つ与えられなかった。
恐らく、ワルツ達がレーザーを使って攻撃してくることを想定して事前に特殊な結界魔法を展開していたのだろう。
「ならっ!」
ルシアが誘導ビーム魔法に切り替える。
ギュン!
無数のビームが国王に向かって飛んでいき、その全てが国王を捉えた・・・ように見えたが、
「ふっ・・・対策は万全だ」
まるで雨粒が当たっているだけ、といった様子で国王は仁王立ちしながら涼し気な表情を浮かべていた。
国王の纏う結界魔法は、レーザーだけでなくビームも無効化してしまうらしい。
そんな対策をするほどに、エンデルシアの国王の職は暇なのだろうか。
「ふーん・・・」
そんな国王を目を細めて見つめるルシア。
そして、
「じゃぁ、これは?」
ルシアがニヤリと笑みを浮かべた瞬間、
ドゴォンッ!!
クレストリングの天井の外壁から床の外壁まで、相当な勢いで直径5mほどの岩石の塊が貫いていった。
隕石の類だろうか。
そして、そんな岩石と共に・・・国王はいなくなった。
一見すると、岩石にぶつかって一緒に何処かへ飛んでいったようにしか見えなかったが・・・
「・・・逃げられちゃったと思う」
手応えがイマイチだったのか、そんなことを呟くルシア。
そんな彼女とは対照的に、
『えっ・・・』
潰れて肉塊になってしまったの間違いじゃ・・・、などと思う仲間たち。
だが、前回の戦闘で、国王は高速で転移魔法を使っていたのである。
高速で岩石をぶつけたとはいえ、再び逃げられた可能性は否定できなかった。
悔しそうな表情を浮かべるルシアに対して、
「えーと、ルシア?分かってると思うけど、本当に殺したりしたらダメよ?」
今まで煽ってたワルツが手のひらを返した。
「えっ・・・」
「えっ・・・殺すつもりだったの?」
「えっと、うん」
素直に認めるルシア。
「・・・ごめんなさい、ルシア。私が国王のことを殺すって言ったの、あれ、冗談よ?」
『えっ・・・』
「もしかして、みんな本気だと思ってたの?」
「妾は、てっきり本気じゃと思っておった」
「私もです」
「同じく」
「・・・そう。とにかく、冗談よ?」
「えっと・・・うん」
全力でレーザーを撃たなくて良かった・・・と思うルシア。
まぁ、既に国王が他界している可能性も否定はできないのだが。
「それじゃぁ、ゴキブリもいなくなったことだし、カタリナ達のところに行きましょうか」
『はい(うん)(うむ)!』
こうしてワルツ達は、床に空いた大きな穴から、首都に向かって飛び出していった。
・・・ただし、フリーフォールを嫌がるシラヌイを強制的に連れ出して・・・。
ゴォォォォォ・・・
「うわぁぁぁ!!!おーちーるーーーー!!!」
空中でジタバタと暴れるシラヌイ。
「いい風じゃ」
耳と尻尾をバタつかせながら、身体をすり抜けていく風を感じているテレサ。
「少々流れは強いですが、元の姿に戻って泳いでいる気分でございます」
鉾を上手く使って、空中を移動している水竜。
「急降下って、後で翼が痛くなるんですよね・・・」
「あ、もしかして、先輩もですか?」
フリーフォール談義を展開しているユリアとシルビア。
そして、
「・・・」
膝を抱えながら、一人無言のまま落下していくルシア。
そんな彼女達の様子を見ながら、ワルツもまた、エンデルシア首都に向かって落下を続けていた。
(・・・やっぱり、さっきのこと気にしているのかしら・・・)
ルシアはワルツの冗談で殺人を犯したかもしれないのである。
落ち込んだり、ショックを受けていてもおかしくはなかった。
(・・・今度から、言葉には気をつけなきゃね・・・)
既に終わってしまった今回のことは仕方が無い、と思うワルツ。
そんな事を考えていると、
「そろそろ減速するわよ」
急激に地面が近づいてきている様子が眼に入ってきた。
そしてワルツは重力制御を仲間の周囲に展開し、緩やかに減速を始める。
地面に着く頃には歩く程度の速度まで落ちており、
シュタッ!
といった様子で皆、地面に降り立った。
シラヌイが、ぜーはー、と息を切らしているが、まぁ、極度の高所恐怖症ではない限り、その内、慣れることだろう。
「さてと・・・じゃぁ、カタリナたちのところに・・・って、あれ?」
ワルツは地面に着いたところで、一人いないことに気づいた。
それも、最も大切と言っても過言ではない者の姿が。
「えーと、ルシアは?」
つい先程まで、共に落下していたはずの妹が、何故か忽然と姿を消していた。
今週末は、色々と修正したいのじゃ・・・。
じゃが、どうして秋はこんなに眠いのじゃろう・・・。
やっぱ、眠いと色々間違うのう・・・
というわけで修正したのじゃ
・・・殆ど変わってないけど




