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5中-18 バーテン

コンコン


酒場のドアをノックする音である。


普段のワルツなら、酒場の戸などノックせず、そのまま入ったことだろう。

長く合っていない相手と会おうとすると、親しかった相手でも他人行儀になる、というやつだろうか。


「ごめんくださーい!」


『開いてるよ』


酒場の中からそんな低い声が聞こえてきた。

どうやら酒場の店主のものではないらしい。


ワルツが扉を開けて中を覗き込むと・・・いい体格をした見知らぬバーテンダーが、夜に向けての準備なのか、一つ一つコップを磨いていた。

先ほどの女性が言っていた『怖い人』とは、彼のことだろう。


「あのー、店主さんはいらっしゃ・・・あっ!?」


ワルツは、自分の声に振り向いたバーテンダーを見て、思わず驚いた。


「うん?兄がどうかしたか?」


(えっ、兄?じゃぁ弟?・・・あぁ、誰かに似てると思ったら、店主さんだったのね・・・)


と少々混乱しつつも、


「えっと、店主さんにご挨拶がしたかったんですけど・・・」


と、遠慮がちに話すワルツ。

どうやら、相手はこちらには気づいていないようだ。


と、そんなとき、


「か、カノープス殿?!」


ワルツの後ろから店内を覗きこんでいたテレサが思わず声を上げた。


そう、バーテンダーの正体は行方不明になっていたカノープスだったのである。


「て、テレサ様?!・・・どうしてこんなところに」


「それはお互い様じゃ」


何がなんだか、と言った様子で戸惑う両者。

そんなやり取りをしていると、


「なんか、嬢ちゃん達の声が聞こえた気が・・・おう、やっぱり帰ってきてたか」


数ヶ月前と何ら変わらぬ様子で、店主が現れた。


「ご無沙汰しています店主さん・・・えっと、何から話せばいいのか・・・」


「何、色々忙しかったんだろ?3ヶ月や1年くらい、ご無沙汰って内にも入らないぜ?弟なんて5年ぶりに帰ってきたくらいなんだからな」


そう言いながら、乱暴にカノープスの肩を叩く店主。


「ちょっ・・・兄貴。何で、この店にテレサ様がやってくるんだよ?」


「あれ?言ったなかったか・・・3ヶ月くらい前に、向かいの家に引っ越してきたぜ?」


「は?」


「うむ。今は成り行きで王城に住んでいるが、妾達の家は向かいの家じゃな」


と、誰かに手入れされているのか、草一つ生えていない工房の方に視線を向けるテレサ。


そんな彼女の言葉では全く納得出来ない様子のカノープスだったが、言うべき言葉を思い出したのか、神妙な顔をして告げた。


「・・・申し訳ございません、テレサ様」


そう言って彼は頭を下げる。


「ん?何がじゃ?」


「・・・勝手にお暇を頂いたことです」


「あぁ、なに。たまにはいいのではないか?」


一度は彼が行方不明になったことに頭を抱えていたテレサだったが、今の彼女からそういった様子は感じられなかった。


「・・・処分などは?」


「いらぬ。妾だって、今、私用で抜けだしておるのじゃし・・・」


「はあ・・・」


やはり、テレサの言葉が理解できない様子のカノープス。


・・・だが、無理矢理自分を納得させたらしく、表情が変わった。

どうやら、ここにテレサがいることよりも、更に大きな疑問があったようだ。


「では、失礼ついでにお聞きしたいのですが、この者たちは・・・」


傍から見ると、何故か国のトップ(議長)を連れ回しているように見えるワルツたち。

カノープスは、テレサがここにいる理由が彼女たちにあるのではないかと考えたらしい。


「・・・ワルツ?どうする?」


素性を説明してもいいかワルツに問いかけるテレサ。


「まぁ、いいんじゃない?店主さんの弟なら、全く関係ない人ってわけでも無いし」


と言いながら、一瞬でメイドの姿に変わるワルツ。

テレサが言う前に、自分から説明することにしたようだ。


「・・・確か、議長側付きメイド・・・」


「うん。正解(本当は違うけど)」


ワルツはカノープスの記憶力に感心しながら、元の姿に戻った。

どうやらカノープスはワルツの変身を見ても何も思わないらしい。

むしろ、ワルツとしては店主が何も言わない事の方が気になっていたのだが。


「他にも、施術士のカタリナ殿に、アレクサンドロス領主代理のリーゼ殿か・・・・・・ん?サキュバスに堕天使?」


カノープスは扉の外から中を伺っている一行を一瞥して言った。

どうやら、彼には人間に変身しているユリアの正体が分かるらしい。


なお、シルビアはそのままの姿である。

本人(シルビア)曰く今の姿が本当の姿なので、カノープスの認識で彼女たちの一族(?)を見るなら、全員が堕天使ということになるのだろうか。


そんな中、


「・・・どこかの店主と同じで失礼ですね」


ルシアと自分のことだけ、何も言われなかったことを気にするテンポ。

まぁ、2人とも彼とは接点が一切無いので、仕方のないことである。


「・・・一体どういうメンバーなのですか?」


そんなカノープスの問に対して、


「一言で言うなら、これから神とかいう面倒臭いやつを倒しに行くメンバーだけど?」


テレサではなく、ワルツが答えた。

彼女の横に立つ仲間達は、皆、その言葉に苦笑を浮かべる。

だが、その視線は本気だった。


そんなワルツの言葉と、彼女たちの様子に、


「神・・・神って、メルクリオのか?!」


目を大きく開け驚愕するカノープス。


「よく解ってるじゃない」


「不可能だ!」


ワルツの言葉に、迷うこと無く断言した。


そんな彼の言葉が気に食わなかったのか、


「・・・やってみなきゃ分からないでしょ?」


そう言いながらロックオン3つ分のプレッシャーをかけるワルツ。


だが、相手はミッドエデン最強の魔術師。

プレッシャー(殺意)をかけても、動じる素振りは一切見せない。


ワルツでは話が通じないと思ったのか、カノープスは視線をテレサに向ける。


「・・・テレサ様。本気でおっしゃっているのですか?」


「うむ。本気も本気じゃ。神とか言うやつをどうにかせねば、妾達の明日は無いからのう」


「・・・魔女認定ですか」


「うむ」


「・・・」


すると、途端に黙りこむカノープス。

魔女の事情についてある程度知っているらしい。


そしてしばらく考える様子を見せた後、


「・・・ならば、その力、見せてはもらえないだろうか」


無駄死にさせるくらいなら、痛手を負う前に出鼻を(くじ)こうと思ったのか、そんなことを口にした。


ワルツとしては特にメリットもないので断ろうかと思ったが、それを口にする前に、


「・・・ワルツ。任せても良いか?」


テレサが暗に、戦え、と振ってきた。


相手は国内最強の魔術師である。

彼を倒せなくて、神が倒せるはずがないと思ったのかもしれない。


「えっと・・・いいの?相手は一応普通の人間なのよね?」


「・・・カタリナ殿に直してもらえるレベルで戦ってもらえると助かるのじゃ」


「んー、まぁ分かったわ」


というわけで、急遽、カノープスVSワルツパーティー(?)の戦闘が開かれることになった。


「ま、怪我しない程度にな」


そう言って何事もなかったかのように皆を送り出す店主。


「・・・本当、店主さんて一体何者・・・いえ、やっぱり聞かないでおきます」


酒場を出る際にそんな言葉を零したワルツに対して、店主は苦笑いを浮かべるのであった。


長くなりすぎたので適当なところでカット・・・

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