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5中-11 今更なこと

ワルツ達は議長室に戻り、仲間達を集めた後、事の顛末について説明した。

すると、


「わ、ワルツ様・・・遂に魔神になられたのですね?!」


と、目を輝かせている魔族(サキュバス)のユリア。


「流石お姉さま。魔女から、神認定のマシンにジョブチェンジとは・・・すごい出世ですね」


といつも通り、マシンネタに触れてくるテンポ。


更には、


「・・・魔神(マシン)って魔王より強いのか?」


「バカっ!お前、死ぬぞ!」


ドゴォォォ!!


「グヘェッ!!」


余計なことに触れたがために、重力制御6Gを喰らい、カエルのように地面にへばりつく剣士。


「言わんこっちゃない・・・」


額に手を当て、触らぬ神に祟りなしとワルツに聞こえないように呟く賢者。


「本当、神とか魔神とか、そういうのやめてほしいわね」


残念ながら、剣士は魔神ワルツの生贄になったようだ。


・・・という冗談はさておき。

これ以上、魔神ネタに触れられぬよう、ワルツは本題を切り出すことにした。


「・・・ま、そんなわけだから、神とかいう面倒な奴を倒しに行くついでに、勇者たちを助けに行くわよ」


勇者たちが神に捕らえられているという確証はなかったが、元天使の証言、『にげろ』という書き置き、更には剣士と賢者をおいていったまま迎えにこないこと・・・などの情況証拠から、捕まっているかそれに近い状態と判断しても問題ないだろう。


「それで、問題はどうやってメルクリオに乗り込むかなんだけど・・・」


「対策も無しに直接と言うのは危険でしょう。恐らく、神を自称する者も、派遣したはずの天使が帰って来ないことに、警戒を強めているはずですから〜」


とコルテックスが、懸念を伝える。


「面倒だから、いっその事、ICBM(弾道ミサイル)か何かで爆撃しちゃおうかしら・・・」


『?』


ワルツの言葉を理解できない、半分以上の仲間達。


「あ、気にしないで。独り言だから。あと、テンポ。本気じゃないからね?」


その手があったか!、と言った様子のテンポに釘を刺す。


「そうですか・・・大掃除にはいい案だと思ったのですが・・・」


「うん。やらないわよ」


相手は操られた一般人である可能性が高いのである。


「どうやったら、天使を無効化出来るかしらね・・・」


「・・・では、皆、堕天させるというのはいかがですか?」


と再びテンポ。


「・・・なんか嫌な響きね。ちなみにどうやって?」


すると彼女は少し考えて口を開いた、


「やはり背徳的な行「却下」」


テンポが言い終わる前に、即答するワルツ。


「・・・相手は、一応、一般人なんだから、ありえないわ」


「・・・冗談です。要は、神の禁に触れればいいのですよね?」


「そうよ。でも、自ら堕天してくれるなんてことは正気ならまずありえないはずよ」


まさか、ひとりひとり捕まえて、禁句を喋るように脅迫するわけにもいかないだろう。


「・・・禁に触れたという判別はどのように行われているのでしょうか?」


「喋ったか喋ってないかだから、やっぱり、音声的なものじゃないの?どうやって声を拾っているかは分からないけど・・・」


水竜に掛けられていた『言霊』の縛りと同じようなものではないかと考えるワルツ。


「なら、お姉さまかルシア様の力を使えば、後はどうとでもなるのではないですか?」


つまり、


「・・・パラメトリックスピーカーを使って天使の声帯を振動させるとか?あるいは、ルシアの風魔法を使って天使が喋っているように見せかけるとか?」


「ダメでしょうか」


「アイディアとしては悪くないかもしれないけど・・・」


だが、


「・・・それで、禁を犯したと判定されるのかしら・・・」


天使を堕天させるという作戦を採用するなら、全ての問題はそこに集約されるだろう。


「あくまでも推測なので、実際に確かめてみないことには分かりませんね」


「そうよね・・・」


(まぁ、実験をして確かめてみる価値はありだけど・・・)


「あとは、カタリナの(自白剤)を空からばら撒くという手もありますね」


「却下」


「えっ・・・私は一向に構いませんよ?」


カタリナは前向きのようだ。

だが、ワルツの精神衛生上、受け入れられなかったので、


「それでも却下」


その作戦は認められなかった。


「・・・まぁ、冗談です。実はあの蟲は作るのに相当な手間暇が掛かるんですよ。流石に何万人いるか分からない天使たち全員の分を作ると考えると、今すぐというのは難しいですね」


と、カタリナ。

彼女の口ぶりだと、時間をかければ可能、ということだろうか。


「うん。それは今度、都合のいい実験体(どうしようもないクズ)を確保できたらやってみましょう」


「分かりました」


ワルツの言葉に、カタリナは大人しく引き下がった。


「他に良い案は無い?」


「なぁワルツ?」


と今度は狩人が口を開く。


「天使たちを無視して、神さまだけ()るっていうのはどうなんだ?」


「・・・暗殺っていうことですか?」


「あぁ。ワルツや私の隠密スキル、それテレサやユリアの変身魔法を使えば、難なく侵入できると思うんだ。それで、トップを潰せば・・・」


「天使たちも開放される・・・ということですね」


「まぁ、これも憶測でしか無いがな」


「そうですね・・・一番堅実な方法かもしれませんね・・・」


尤も、見つかってしまうと、相手もこちらも悲惨なことになりそうだが。


「でも、上手く忍び込めたとして、神さまの息の根を簡単に止められるでしょうか?」


「あぁ。私には無理だな」


即答する狩人。


そこにユリアが割り込む。


「神さまに喧嘩を売るサキュバス・・・魔族なら一度はやってみたいシチュエーションですね」


「なら、私達が潜入を助けるから、ユリアが暗殺してみるっていうのはどう?」


「む、無理ですよ。幻術魔法(せいしんこうげき)以外に戦う手段が無いんですからっ!」


「うん言ってみただけ。でも、囮としては使えそうだから、前向きに検討してみるわ」


「えっ・・・ええ!?」


ワルツの言葉に取り乱すユリア。


そんなやり取りをしていると、


「だが、ワルツなら問題は無いだろう?」


狩人が、当然出来るだろう、といった様子で、ワルツに問いかけてきた。


「まぁ、戦ってみないことには分かりませんが・・・何れにしても、どうにかするしか無いのは確かですね」


この後も様々な仮定の話が飛び交っていたが、確実に言えることは、ワルツが神をどうにか出来ないと、彼女たちが神に攻撃を仕掛けた時点で、全滅を免れないということだ・・・。

とはいえ、神をどうにかしない限り、ワルツが現代世界に戻ることは叶わないのだが。




結局、仲間達から上がってきた案の中で実現可能な作戦は、『天使を堕天させる作戦』『神さま暗殺作戦』の2つだけだった。


「まぁ、普通に考えればこんなところよね・・・」


というわけで、その2つの作戦を基軸にこれからの行動を話し合っていこうとした・・・そんな時である。


「お姉ちゃん?」


ルシアから声が上がった。


「何、ルシア?何かアイディアがあるの?」


「うん!」


姉の言葉に嬉しそうに頷くルシア。


だが、直後にしょんぼりとする。

そして、少し悩んだ様子を見せた後、再び口を開いた。


「もう壊されちゃったけど、地下で作ってた船を使って戦うっていうのはダメなの?」


やはり、2ヶ月に渡ってコツコツと作っていた航空戦艦が一瞬にして破壊されたことは、ルシアにとっても相当な痛手だったようだ。


「えっとね。今回は、誰も死なせるわけにいかないのよ。みんな神さまに騙されているだけだから・・・」


「・・・天使って、倒そうとしても中々死なないのに?」


(やっぱり、育て方を間違え・・・あれ?)


そんな、ルシアの言葉を聞いたワルツの電脳に衝撃が走る。

そう、天使は未知の魔法(リペア)を使えるため、一瞬で絶命させない限り、簡単には死なないのである。


「あ、そっか。別に、死ぬとか死なないとかって、気にしなくてもいいんじゃない?」


「・・・まさかお姉さま・・・」


「・・・おいワルツ・・・やるのか?」


ワルツとルシアの言葉に顔色を変えた仲間達。


そんな仲間達に対して、ワルツはニヤリとした笑みを浮かべて言った。


「正面から戦って、堂々と神とか言う奴を倒してやろうじゃないの」


「正気か?ワルツ殿」


彼女たちのやり取りを静かに見ていた賢者も、思わず口を開いた。


「えぇ、正気だし本気よ。コルテックスはどう?勝算があると思う?」


ワルツの言葉に、コルテックスは少し考えた後、口を開いた。


「敵の戦力がどの程度なのか分からない以上明確な回答は致しかねますが〜・・・現在建造中の2番艦を武装すれば、天使達と真正面から戦ったとしても、特に問題はないのではないでしょうか〜?」


そんな彼女の言葉に、


(・・・武装する気は無かったんだけどね・・・)


と、内心で頭を抱えるワルツ。


実は、彼女たちの航空戦艦はある用途に使用するため、防御力を特化させるつもりで建造していたのだ。

それも、全ての攻撃手段を捨ててまで・・・。


そういう意味では、戦艦とは言わないのかもしれない。


「・・・でもねコルテックス。あの戦艦の使い道を分かってるでしょ?」


「はい。なら、勇者様方の分とは別に、もう1隻追加で建造しては如何でしょうか〜。ガーディアンとしての、私の名前の由来通りに」


そう言って笑みを浮かべるコルテックス。

つまり彼女は、合計で3隻、戦艦を建造すればいいのではないか、と言ったのである。


「・・・」


そんな彼女とは対照的に、難しい表情を浮かべるワルツ。


「あれ造るの、簡単じゃないんだけど・・・」


「今更ではないですか〜。ここには皆さんたちがいるんですし、別に問題は無いのではないでしょうか〜?」


とコルテックスはあたかも簡単なことであるかのように言うが、


(・・・そのみんなに迷惑をかけるのが嫌なのに・・・)


彼女にとっては、戦艦の建造の難しさは二の次であった。

問題は、長時間に渡って、仲間の行動を束縛してしまうことにあったのだ。

本来なら、彼女たちは戦艦を造るために、ワルツに付いて来ているわけではないのだから。


ワルツは悩みながら、視線を仲間の方に向けた。


すると、


「もしかしてお姉ちゃん、遠慮してるの?」


「何か遠慮することなんてあるか?」


「私はワルツさんの弟子なんですから」


「妾はワルツにどこまでも付いていくぞ?」


「お、お手柔らかに・・・」


悩んでいるワルツの様子に気づいたのか、仲間達はそれぞれに口を開いた。


「お姉さま?」


最後にテンポが、


「今更です」


無表情で告げた後、微笑を浮かべた。


「・・・いいの?本当に」


『今更です(だ)(じゃ)(だよ)』


ワルツはそんな仲間達の言葉に、顔を伏せて、はにかみながら、


「・・・ありがと」


と小さく呟いた。


「・・・なら、今作ってる船を2週間で武装して完成させるわよ!あと、これはメルクリオの件が終わったらなんだけど、勇者たちに渡す船として、同じ船をもう1隻。それと特別なのをもう1隻作るわよ」


『はいっ!』


こうして、ワルツパーティーメンバーによる本格的な戦艦の建造が始まったのだった。

眠い・・・

なので、後で修正が入る可能性大・・・

これも今更か。

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