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4後-02 化装・・・

「・・・さてと」


食事を終えたワルツは今度こそ(くち)(?)で言葉を放った。


「いよいよじゃな」


と、テレサ。

念のため言っておくが、魔王城に突入する勇者パーティーではない。


「じゃぁ、変装の件なんだけど・・・」


と、ワルツは以前と同じ魔女に変身して、やめた。


「ダメね。ユリアに見られたってことは、別の人にも見られてる可能性があるし・・・」


「透明になるのはダメなのですか?」


「嫌よ。みんなが変装してるのに、私だけしなかったら、なんか仲間外れにされた気がするじゃない?」


日本人のようなことを言い始めるワルツ。


「それじゃぁね・・・」


と、今度は盗賊(シーフ)っぽい格好になる。


「盗賊は拙いのでは?」


「え?そういう職業無いの?」


「・・・国家試験を合格していない者は、つまり単なる盗賊なので・・・」


討伐対象になる。


(何か、特別な格好でもしてるのかしら・・・)


「うーん、難しいわね・・・顔を適度に隠せて、目立たない服装ね・・・」


と、今度は甲冑を着こみ・・・やめる。

更には、ミイラになって・・・やめる。

何故か、野球のアンパイアに変身して・・・あまりに怪しいと止められる。


「もう、私には魔法使いしか残されてないのよ!」


結局、帽子で顔を隠せる魔法使いの格好に戻ってきた。


「同じカッコは拙いですね。例えば色を変えるとか如何でしょう?」


「うーん・・・」


(白・・・はダメね。赤・・・も目立つわね。灰・・・うーん、あまり好きじゃないし・・・)


ワルツが色々頭の中で考えた色が、自分のローブの色に反映されていく。

(さなが)ら極彩色の着物といった様子だ。

その様子を見た大半の仲間達が呆れる一方、ルシアとユリアは次々と変わっていくワルツのファッションショーに釘付けだった。


「んじゃ、これ!」


そう言って彼女が選択した服装は魔法使いのそれと、随分毛色が違っていた。


頭には真っ白な大きなつばがついて、中央部が真っ直ぐに尖った真っ黒なハット。

ローブは、ルシアのようにマントのように背中だけを隠す、内側が白、外側が黒のもの。

身体にはこの世界の甲冑と現代世界の複合素材が融合したような近未来的デザインの灰茶色の防具。

首の周りには対爆スーツのように顔を半分まで隠すような襟のようなものが付いている。

手や足には、指の先端まで身体と同様の防具が装備されており、関節部が自由に動くような作りになっていた。


・・・魔法使いではあるが、剣で戦うようには見えない。

・・・だが、何かしらの近距離武器を持って戦いそうな魔法使い。

そんな印象である。

魔法剣士・・・とは少し違うだろう。


一言で言うなら、異常に目立つ姿、である。


『・・・』


皆が絶句する。


「・・・すみません、調子に」


「かっこいい!」


調子に乗りました、と言い終わる前にルシアが割り込んだ。


「いいですね〜、その格好」


「うむ、嫌いではない」


「私も欲しいな・・・」


と、口々に感想を述べる。

もちろん、常識的な感想を述べる者もいた。


「・・・絶対、目立ちますよ?」


「お姉さま、厨二病ですか?」


「うぐっ・・・」


厨二と言う言葉がグサリと来たようだ。

まぁ、こういった防具の(たぐい)は、故意に格好悪くしない限り、どんなものでも厨二デザインになるのではないだろうか。


「・・・もう、私はこれで行く!」


考えるのが面倒になったようだ。


「なら妾は・・・」


テレサも変身する。


「使い魔なのじゃ!」


が、いつも通り、ワルツには特に変わったようには見えなかった。

その代わり、ルシアがテレサの見た目を口にする。


「狐?」


「・・・どうしてそうなったの?」


普通は、剣士や弓使いなどの選択肢があると思うのだが、テレサは何故か明後日の方向へ向かっていったようだ。


「いやの?流石に動物に化けているとは思わないじゃろ普通?」


「いや、狐の獣人っていうのは分かるんだけど、狐に化けることはないんじゃない?普通逆でしょ?」


人間としてのプライドは無いのだろうか。

もしかすると、狐側も同じことを考えているのかもしれない。


「そうですね。ワルツさんはこの世界の人間じゃないので分からないかも知れないですが、私達狐人にとって狐とは、神に等しい存在なのです。同じように、猫人にとっては猫、犬人にとっては犬といった感じですね。なので、私にとっては狐に化けられるテレサさんがすこし羨ましいくらいです」


この世界特有の価値観なのかもしれない。

そうなると、犬の獣人は魔物退治の際、狼型の魔物とどうやって戦っているのだろうか。


・・・それはさておき、


「私はいつも通り、適当な人間に変身しますね」


ユリアが今までの中では一番まともな変身をしたようだ。


「・・・他の人には化けられないの?」


ルシアが疑問を口にする。

以前と同じ人間の姿になったのだろうか。


「えっと・・・ほくろの位置とか髪型は変えるとかはできるんですが・・・輪郭や骨格を変えるのは私には無理です」


「ま、ほくろの位置を動かせるなら大丈夫でしょ。最悪、双子の兄弟って言い張ればなんとかなるんじゃない?」


「あ、それ、何回か使ったことありますよ」


「うまくいったの?」


「兄弟って言うと、尋問を受けたりしますね。なので、遠い親戚って言うことにしてます」


「ふーん」


ユリア(サキュバス)には彼女(サキュバス)なりの苦労があるようだ。


さて、ここからが問題である。


「どうやって、残り4人を変身させるか・・・。テレサやユリアの魔法って、他人には掛けられないの?」


「出来なくはないですが、ずっと魔力を送り続けなければならないので、長時間は難しいです。あと、離れてしまうとどこに魔力を送っていいか分からなくなるので、それでも魔法は解けてしまいます」


「うむ。妾も同じじゃ」


「そう・・・みんな同じね・・・魔力のことを考えるなら、私がやったほうがいいかしら」


するとワルツは、ホログラムを使って、ルシア、カタリナ、狩人、テンポの姿を変えた。

順に、町娘、僧侶、賢者、普通の冒険者といった感じだ。


「これでよしっ!」


「・・・なんか、普通・・・」


「そうだよなー。なんかワルツだけズルいっていうか・・・」


「そうですね。ワルツさんだけ浮いてますよね」


「お姉さまだけ厨二装備ですか。・・・そうですか」


皆の視線は冷たかった。


「・・・ああ!もう!分かったわよ!」


すると、ワルツは全員の装備を厨二仕様に変えた。


ルシアはドラゴンの革のような素材で作られた黒いマントとワルツと同じように顔だけ出した全身甲冑、そして巨大な帽子。

カタリナは真っ白なミトラと真っ白なローブに金色の刺繍が施された司祭服に、顔を隠すベール。

狩人は焼いたチタンのような虹色の風合いが出ていて、頭まで隠されている全身甲冑と黒いマント。

テンポは全身黒い革装備に、巨大なアイアンクローを装備した上で、ヘルメットのようなマスク。


といった装備に変更した。

もっと簡単に言うなら、ルシアが武装魔術師、カタリナが天使、狩人は黒騎士、テンポは吸血鬼+バーサーカーといったところだろうか。


「これで文句ないわよね?」


重力制御で光を曲げて簡易的に鏡を作り出し、仲間の姿を映す。


「うわぁ、お姉ちゃんとお揃い?」


「司祭・・・ですか。まぁ、これはこれで・・・」


「黒、騎士・・・だと?!」


「・・・普段とあまり変わってない気がするのですが」


「いやいや、どういう基準で考えてるのよ・・・」


・・・というわけで、文句は出なかったようだ。


だが、


「ぐぬぬ・・・妾達の影が薄くなってきたのじゃ・・・」


「そ、そうですね・・・このままじゃダメです!イノベーションが必要です!」


おや?仲間達の様子が・・・


「・・・これでどうじゃ!」


「・・・私もどうです!」


と二人とも変身し直した。


「ふぇ、フェンリル・・・」


「それに、イビルアイ・・・」


どうやら、ユリアは人間をやめたらしい。


「私も使い魔で行くことにしました!」


パタパタと空を飛びながらそんなことをそんなことを言うユリア。


「そ、そう・・・」


ワルツにはユリアが常にサキュバスにしか見えないので、使い魔と言われても、しっくり来過ぎて何故か釈然としなかった。

一周回って、違和感が出てきた、といった具合だ。


「それ、疲れないの?」


必死になって飛んでいるように見えるユリアに疑問を投げかける。


「え?何がです?」


「いえ・・・何でもないわ・・・」


どうやら、ユリアの翼には流体力学以外の未知の力が加わっているのか、疲れないらしい。


「テレサもなんで幻獣・・・」


狐は彼女らにとって神同然の存在だったのではなかったのか。


「いやのう?皆が強そうな格好をしているというのに、使い魔が戦えないような姿では困るじゃろ?」


とワルツの目に映った獣人の姿の彼女は、二足歩行でいつも通り立ちながら答えていた。


「・・・ねぇルシア?今、テレサの姿って、四つん這い?」


「うん。そうだよ?」


変身魔法というよりも、周りの者達の認識を変える幻術系の魔法なのかもしれない。


「そう・・・まぁ、いいわ。じゃぁ、いきましょうか」


最早、ハロウィンパーティーも出かけるんじゃないだろうか、という格好で王都に向かって歩き出すワルツ達。

このままでは間違いなく検問を抜けられないだろう。


だが、妙に目立っていることを誰も指摘しないのだった。


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