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9.6-22 扉4

ポタッ……ポタッ……


「うぅ?!さ、さっき地下に降りたときに、こんな水の(したた)りなんてあったっけ?!」


「……無かったわね」にやぁ


「おっ?ユリアがサキュバスっぽいな?」


『……みんな?気を抜くなよ?いつ何時(なんどき)、エクレリアの連中がやってくるとも分からないからな』


 そんな会話を交わしながら、地下につながる道を降りていくダリア、ユリア、狩人、それにクマの人形アトラスの4人。彼らの目的は、地下にあるという大きな金属製の扉の内側を確認することで……。真っ暗な地下道に不気味な気配を感じ取っていたようだ。——主にダリアが。


「えっと、すみません……。でも、ミッドエデンで起こったという恐ろしい出来事の話を聞いた後だと……ついつい想像しちゃって……」


『大丈夫だ。俺たちはそんな事にならないように……いや、させないように、これから止めに行くんだ。頼りにしているぞ?ダリアさん』


「は、はい。でも、あの……よろしければ、私のことはボタンって、呼んでいただけませんか?」


 ……と、何故か顔を赤らめながら話すサキュバスの言葉を聞いて、従姉妹のユリアがボソッとつぶやく。


「……何を考えてるのか分からないけど、アトラス様、ボタンよりも遙かに年下よ?(0歳?)」


「と、年下……!」にぱぁ


「あっ……ボタン、そういう趣味……」


 と、従姉妹の発言を聞いて、何かを察した様子のユリア。なお、彼女が何を察したのかは、さして重要な事でもないので、ここでは省略する。

 そんなユリアのつぶやきを聞いて、今度は狩人が反応した。


「……ってことは、ユリアは逆に年上がいいのか?」


「え?いえ、ワルツ様一筋ですけど?」


「ほう?奇遇だな……」


「えっ……(何この人たち……)」


『まぁ、気にしないでくれボタン。いつものことだ。それより……ほら、見えてきたぞ?階段の終わりが……』


 先頭をトテトテと歩いていた青いクマの人形の眼に写ったのは、壁で小さな魔道具のランタンが輝いている薄暗い地下空洞の姿だった。そこには最近出来たばかりとおぼしきクレーターや、何かで引っ掻いたような傷跡が地面に生々しく残っていて、狩人たちの戦闘の激しさを物語っていたようである。そしてその一部には、壊れた都市結界の魔道具の姿も……。

 それを見つけたアトラスは、割れた水晶のような見た目の魔道具へと近づくと、それを人形の腕で突きながら、感想を口にした。


「これか……。何か固いものがぶつかった、って感じの割れ方だな……。さすがにこんな割れ形をしていたんじゃ、直すのは無理か……」


 そのつぶやきに対して、ユリアでも狩人ではなく、戦闘に参加していなかったはずのダリアが、申し訳なさそうにこう返答した。


「すみません……。身を守るのが精一杯で、魔道具を守ることまで気が回りませんでした……」


『いや、良いんだ。都市結界の魔道具は換えが効くけど、ダリアやユリア、それに狩人姉の命はたった1つしかないからな。自分たちの身を守ることを優先して当然だったと思う』


「そ、そうですか?」


「ちょっと、ボタン?あなた、いつまで猫被ってるつもり?」


「ユリア……。猫は獰猛な生き物だ。被っていても猫は猫だ。可愛くても肉食動物なんだ……!」


「えっと……いや、確かにそうなんですけど……でも、そうじゃなくて……」


 と、猫の獣人である狩人を前に、なんと返答して良いものかと頭を悩ませるユリア。そんな彼女は、どう答えても、狩人に失礼な言葉になる気がして、その次の言葉がなかなか口に出来なかったようである。

 すると、そんな彼女の苦悩を察したのか……。魔道具から視線を上げ、その先に見えていた大きな扉を見上げながら、アトラスが口を挟んだ。


『さて、扉を開けてみよう。果たして、この中に、何があるのか……。何があったとしても、心だけは強く持っていてくれ』


「ああ。そうだな」

「そうですね」

「は、はい!」


『じゃぁ、狩人姉。頼めるか?この扉、おそらく魔道具だとは思うんだが、開け方が分からない。ひと思いに斬ってしまってくれ』


「あぁ、任せておけ!」


 狩人はそう口にすると、バッグの中に手を入れて愛用のダガーを取り出して——


「すぅーーーっ…………はっ!」


ズドォォォォン!!


——その短い刃で大きな扉を左右に斬った。


 その結果——


ギギギギギ……ドゴォォォォォン!!


——という大きな音を上げながら、斜めにスライドして倒れる金属製の扉。その際、手前に倒れてきた扉を、ユリアが幻影魔法の腕で受け止めて……。そしてその向こう側が露わになる。


 そこは、アトラスたちがいた空間と同じように、壁に何点かのランタンが備え付けられていた大きな空間で……。どこかジメッとして、空気がよどみ、すこし息苦しさを感じる——そんな空気が漂っていた。

 ただ、アトラスたちが想像していたような最悪の光景は広がっていなかったようである。とはいえ、何も無かった、というわけでもなく——


「「「…………」」」


——そこには少なくない数の人々の姿があったようだ。

 それも意識を失って倒れている悪魔族の者たちばかりの姿が……。



プランAで行くか、プランBを選ぶか……。

少し悩んでみようと思うのじゃ。

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