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9.6-20 扉2

 それから狩人たちは——


『アトラス。残念な報告だ。都市結界が……戦闘でダメになった。すまない……』


——いったん、無線機が通じる場所、具体的には地下道の入り口まで出て、外で虫たちと戦っていたアトラスに、現状の報告をしていた。


『そうか……。なら仕方ないな……。違う方法を考えよう』


『アトラスの方はまだ大丈夫か?』


『それなんだが……急に町に上がる火柱の数が減ったんだ。おそらく、虫たちの増援が来なくなったんだと思う』


『……来なくなった?』


『あぁ。いい加減向こうさんが諦めた、というのは少し楽観的な考えかも知れないが、雰囲気としてはそんな感じだ。もしかして……狩人姉の方で、何か大きな出来事でもあったのか?そっちで起こっていた”戦闘”というのが気になるんだが……』


 その問いかけに対し、狩人は、「ん゛ー」、と難しそうに唸り声を上げてから……。少し迷いつつ、事情の説明を始めた。


『どこから話せば良いのか難しいんだが……まぁ、時間も無いし、手短に話そうと思う』


『あぁ、助かる』


『……都市結界の魔道具がありそうな地下道を見つけてそこに入ったら、なぜか兄貴と地竜に襲われて、倒したら”ばくしゅくれんず”とかいう爆弾が転移魔法で飛んできて、その衝撃で都市結界の魔道具が壊れた……って説明で分かるか?分からないよな……。ああ、そうそう。状況が状況だったから、私もこっちに飛んできた。エンデルスに頼んでな?』


『兄貴って……つながりは全然分からないが、状況は分かった。時間のあるとき詳しく説明……いや、ちょっと待ってくれ?爆縮レンズ?!』


『何だ?ユリアもさっきチラッと言ってたが……そんなに拙いものなのか?』


 と、爆縮レンズが何に使われるものなのか分からなかったためか、不思議そうに問いかける狩人。

 一方、アトラスは、深くため息を吐いてから、狩人に対し、こう問いかけた。


『なぁ、狩人姉。一応、確認しておきたいんだが、転移魔法で飛んできたものがどうして爆縮レンズだって分かったんだ?』


『ああ、それは……』


 と、狩人が返答しようとしたところで、彼女の側で話を聞いていたユリアが、一歩前に出て狩人に目配せすると……。彼女は自身のポケットから無線機を取り出して、狩人の代わりにアトラスへの返答を始めた。


『えっと、アトラス様?ユリアです。判断したのは私です。コルテックス様のところで偶然見かけた資料に書かれていたものにとても似通っていましたので……』


『コルテックスのやつ、なんて資料を……まぁ、分かった。エクレリアの連中、アレを作ろうとしてんのか……』


『アレって……何なんです?』


『私も気になるな……』


「(私は2人が持ってるその銀色の板の方が気になりますけどね……)」


 無線機(ぎんいろのいた)に向かって話しかけている従姉妹たちの様子を眺めながら、一人蚊帳の外状態だったダリアが、人知れずそんな感想を抱いていると……。そんな彼女にも分かる説明を、アトラスが口にし始めた。


『……アレは、本来、この世界にあるべきではない兵器だ。すべてのものを一瞬で焼き尽くしたあげく、その地を人の住めない土地に変えてしまうんだ』


『なんだそれ……』


『もしも狩人姉が見た爆弾が本当に爆縮レンズだったとすれば、俺も”どうしてそんなものをこの世界に持ち込んだ”って、作ったやつに聞きたいよ……(あまり人のこと言えないけどな……)。でも、爆発してもこの町ごと世界樹が吹き飛んでないってことは、多分、失敗したんだろう』


『「世界樹が吹き飛ぶ……」』


『……やはり、とんでもない代物だったようですね。ですが、どうします?2回目、3回目と飛んでこないとも限りませんよ?』


『どうだろうな……。あの兵器——原子爆弾を作るのは、それなりの手間暇がかかるはずだから、1日や2日の間に、そう何発も飛んでくるってことは無いと思うぞ?失敗したなら失敗したなりの反省や改善などがあるはずだからな』


『そういうものですか……』


 と、アトラスの言葉に対して相づちを打つユリア。その際、彼女は努めて平静を装っていたようだが、さすがに”世界樹ごと吹き飛ぶ”というアトラスの言葉には耳を疑ってしまったようで……。唇を青くさせていたようである。


 そんなユリアの内心を察したのかは定かでないが、アトラスはこう続けた。


『まぁ、そんなに深刻に考える必要はないさ。姉貴たちに報告しておけば、何かしらの対策をするはずだからな』


『お願いします。こんな時、私たちは無力ですね……』


『むしろ、ほいそれと簡単に対応できたら、逆に困るけどな?……カタリナ姉あたりなら、素でできそうだけど……』


『ですね……』


『報告は以上か?なら、虫退治に戻ろうと思うんだが……』


 と、アトラスが通信を終了しようとした時だった。


『そうだ、アトラス!もう一つ言わなきゃならないことがある!』


 狩人が不意に声をあげる。


『何だ?狩人姉』


『さっきも行った通り、私たちは地下で戦っていたんだが……そこに例の扉があった。ミッドエデンの地下にもあった、あの巨大な扉だ』


 狩人がそれを口にした瞬間——


『……マジか』


——と、戸惑うような色を載せた返答を口にするアトラス。そんな彼にとって、狩人の”扉”についての報告は、エクレリア王国がもしかすると原子爆弾を作ろうとしているかも知れない、という報告よりもショックが大きかったようである。

 それから彼は、急遽予定を変更して、火柱の消火と虫退治を切り上げると、狩人たちと合流することにしたようだ。


登場人物の数が多くなると、地の文を書くのが大変になる……のじゃろうか……。

もうこれは開き直って、違う書き方を模索すべきかも知れぬのう。


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