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9.5-23 正体23

『……最低でも2勢力〜。この国アルボローザは、2つ以上の思惑か勢力によって攻撃されているものと推測します』


「そう来ましたか……」


「何?どういうこと?」


「またまた、お姉様ったら〜。私や賢者様が分かっているのですから、お姉様が分からない訳ないではないですか〜?もう、()()れしいですね〜」


「あ、うん……(分からないって……言えない……)」


 コルテックスはワルツが理解していないことを分かっていて煽っていたようだが、当のワルツは妹の意図が理解できず、目を泳がす他なかったようである。

 それを見たコルテックスは、深い溜息を吐いた後で……。自身の発言について説明を始めた。


『良いですか〜?この国は地理的に、南をエクレリア、東をビクセン、そして西と北を〜……まぁ、何か、別の国に囲まれています。”大河”によって分断されているとはいえ、隣にエクレリアがあるという時点で、侵略され放題ですよね〜?』


「いやまぁ……そりゃそうかも知れないけど、それだけじゃ……」


『えぇ、もちろん、それだけでは何の確証にもなりませんよ〜?では何をもって、2勢力に侵略されていると考えたのか説明しますと〜……まぁ、簡単なことです。それぞれの出来事に、一貫性があったりなかったりからです。……人の姿に擬態できる虫たちをこの地に自由にバラ撒くことが出来るのに、なぜ虫たちを暴走させてこの城を飲み込もうとしたのでしょうか〜?そんなことができるのなら、夜の内に襲撃して、寝込みを襲い、一気に滅ぼしてしまえば良いのです。それに、アルボローザのトップたちが、もうすでに魔神がらみの出来事で壊滅的ダメージを受けていて、そのせいでこの国の指揮系統は大混乱状態だというのに、どうしてわざわざ悪魔族の人たちに危害を加えるような麻痺攻撃をしてきているのでしょうか〜?既にこの国からは、まともな防衛機能が失われているというのに、いま悪魔族の人たちを襲おうとしたら、兵士たちだけでなく、町の人々も、壊滅的な被害を受けてしまうではないですか〜。死体蹴りでもしたいのでしょうか〜?それとも私怨でしょうか〜?この恨み晴らさでおくべきか〜、でしょうか〜?』


 と、ガトリングガン(?)が喋るように説明するコルテックス。

 それに対し、ワルツは、というと——


「えっと……うん……そうね……。私もそうだと思うわ……」


——そう口にして、その場から見えるはずの無い高く遠い空に、視線を向けたようである。やはり理解できなかったらしい……。

 一方、賢者の方は、コルテックスが何を言わんとしていたのか、おおよそ理解できたようである。


「そういうことですか……。では、何者が攻撃してきているのでしょう?我々が”チップ”と呼んでいる小さな魔道具を使っているのは、技術力的に、おそらくはエクレリアかと思いますが、別の勢力……そうですね、例えば、メシエ様を昏睡状態に陥れた者たちは、どこの誰なのでしょう?」


『それはですね〜……』


 そう口にした後で——


ちらっ……

ちらっ……


——と同時に、それぞれワルツの方を振り向くコルテックスと賢者。2人とも、ワルツなら知っている、といったような雰囲気を出していたようだ。

 まぁ、ワルツは違う意味に捉えたようだが。


「……いや、私じゃないわよ?」


『えぇ、そんなことは分かっています。そうではなくて、ちょっと調べてきて欲しいと言っているのです。まぁ、直接言った訳ではないですけど〜』


「えぇ、ワルツ様にしか頼めないことですので。私も天使モードになれば、自由に空を飛ぶことは出来ますが、上昇できる限界がありますから……」


 そんな2人が何を言わんとしているのか、今度は理解できたらしく……。ワルツは腰に手を当て、そして眉を顰めながらこう口にした。


「つまり見て来い、って言いたい訳ね?世界樹の天辺に何があるのかを……」


 文字通りに”空より高い”世界樹。その天辺にいる者から、メシエは長距離攻撃を受けて、そして昏倒してしまったのである。さらに言うなら、魔神(?)が世界樹を倒そうとしているのは、その天辺に巣くう者が原因らしいので、その者をどうにかすれば、世界樹や魔神に関連する問題は、解決するか、大きく改善するはずだったのだ。


「やっぱ、行かなきゃダメか……宇宙……」


『何か行きたくない理由でもあるのですか〜?』


「まぁ、色々あるのよ。私が私たるために、色々諦めちゃいけないものが、さ?」


『……なるほど〜。つまり、一人で行きたくない、というわけですね〜?……どんだけコミュ障ですか〜?お姉様は〜……』


「いや、だって……相手は敵かも知れないわけでしょ?っていうか、敵そのものでしょ?何て会話すれば良いのよ……。こんにちは、って?あ、分かった。”こんにちは、さようなら”って言えば良いのね?これなら行けるわ」


『……それ、本気で言ってます〜?』


「…………うん」


 そう言って、静かに頷くワルツ。どうやら彼女は、一人で敵地に乗り込むのが、どうしても嫌だったようである。

 

 その結果、ワルツが一人で宇宙に上がるというプランは、キャンセルとなるのだが……。しかしそれでも、世界樹の天辺にいる者に会いに行くという計画まで変更されることはなかったようだ。




アレを————出すのじゃ!


ズドォォォォン!!


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