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9.4-34 本物34

「いくら私が情報局の局長をやってるからって……従姉妹の訃報を紙面に書いてもねぇ……」


 ミッドエデン情報局。それは、諜報活動を行うことだけを目的として設立された組織、ではない。その名の通り、情報という情報を集め、新聞というメディアを使い国民に知らせる、という役割も持っていた。なお、言うまでもないことかもしれないが、政府に不都合な情報を、局がニュースとして知らせることはない。なにしろ彼女たちの存在意義は、情報という情報を集め、そして操作することにあるのだから……。


「まだ死んでないわよ……」


「似たようなものでしょ?でもまぁ、それはともかくとして……どうなの?どうにかなりそうな策とか、(つて)とかってありそう?」


「今ある策は……地下に身を潜めるくらいしかないわね。でも、伝なら、1つだけあるわ」ちらっ


 そう言って、抱えていた頭を上げ、従姉妹に対して視線を送るダリア。

 それがどんな意味を持った視線なのか、ユリアにはすぐに分かったようだが……。それが分かったからと言って、すぐに答えるかは、また別の話だったようだ。


「……ん?私の後ろに、誰か知り合いでもいた?」ふいっ


「マーガレット……。あなた、分かっててやってるでしょ?」


「……まぁね?もう、しかたないわね?これ、貸しよ?絶対に後で返してね?」


「えぇ、もちろんよ?私も貸しっぱなしっていうのは、気持ちが悪いし、いつか必ず返すわ?ちなみにだけど、いま所望するとしたら、どんな対価?」


「…………アーデルハイトお婆様の暗殺?」


「それ、結局、死ぬじゃない……それもほぼ確実に……」


「ダメ?難しいことを言うわね……。まぁ、今は思いつかないから、とりあえず保留で。それまでは雑用係でもやって貰おうかしら?」


「…………まぁ、いいわ」


 ユリアの言葉を聞いたダリアは、一瞬だけ、言い返そうかどうかを悩んだようである。しかしそれを口にしなかったのは、何か納得できる理由があったからか、それとも藪の中にいる蛇の気配を感じ取ったためか……。


「でも、困ったわね……。頼られるのは(やぶさ)かじゃないけど、バラの苗木を夕方までに調達するとか……そう簡単じゃないと思うんだけど?」


 そう言ってユリアがそこにいた者たちに視線を向けると……。その先から、元気よくこんな回答が戻ってきた。


「カタリナ様にお願いするかも?」

「コル様にお願いして、バラの苗木を取りに行くです!」

「ストレラ様に飛行艇(ひこーてー)を借りるですー?」

「でもナノ?それだとバラの在処(ありか)が分からないと、行っても仕方ないと思う……」

「…………zzz」


「……なるほどね。大きく分けると方法は2つ。カタリナ様に頼んで苗木をたくさん作って貰うか、あるいは何かしらの方法で遠くまで取りに行くか、ってところね」


 と、少女たちの提案を要約するユリア。その選択肢の内、後者は、ケルベロス(ポチ)3姉妹の1人であるピコの言葉通り、バラの苗木が何処にあるのか分からないと回収のしようが無かったので、ユリアはカタリナ案(?)を採用しようと考えたようだ。

 そんな折、イブが不意にこんな疑問を口にした。


「ところで、ユリア様?ベガ様の所に持っていかなきゃならないのって、どうしてバラじゃなくちゃいけないかもなの?」


「えっ?」


「だって……バラだって、除虫菊(じょちゅーぎく)だって、その辺に生えてるペンペン草だって、みんなお花を咲かせるでしょ?バラだからと言って、何か特別な植物っていうわけでもないかもだし、だったら、別に、バラじゃなくても良いかも、って思うかもなんだけど?」


 ベガが()から魔力を供給されているというのなら、バラにこだわる必要はないのではないか。もしもそうなら、この町の周囲を皆で手分けして探せば、必要な量の()()が確保出来るかもしれない……。イブは道ばたに生えていた雑草の事を思い出しながら、そんなことを考えていたようである。そしてそれと同時に——雑草の方が、むしろ虫食いには強いのではないか、とも……。

 それに対して、依頼を出したダリア本人が返答する。


「……アルボローザ政府が私に依頼したのは、飽くまで()()の苗木の納品よ?たとえそれが何かしらの品と代用できて、その上、そっちの方が優れたものであっても、依頼通りの品を納めなければ、依頼の達成とはならないの。おかしな話って思うかも知れないけど、そういうルールなのよ」


 その言葉を聞いて——


「ふーん……」


——という複雑そうな表情で相づちを返すイブ。その反応を見る限り、納得し切れていない、といった様子だったが……。ギルドの依頼で違うものを納品したら確かに問題になる、と考えたのか、どうにか彼女なりに飲み込むことができたようだ。


 それから程なくして——


バタムッ!


「こらっ!ポチたち!どこ、ほっつき歩いてるの!」

「「「…………!」」」びくぅ


——ストレラたちが冒険者ギルドへとやってきた。



2つ以上の呼び名を持っておる者が多くて、申し訳ないのじゃ。

念のためその一覧を以下に記しておくのじゃ?

(だたし、あまりにあだ名が多いゆえ、今話に出てきた登場人物に限定するがの?)


(正式名⇔別名)

ケルベロス⇔ポチ

ナノ・ピコ・フェムト⇔ポチ3姉妹

フェムト⇔フェム

ダリア⇔ボタン

ユリア⇔マーガレット

イブ⇔いぼんぬ(?)・いぬ(?)

ローズマリー⇔マリー

アーデルハイト⇔アリサ(ユリアとダリアの祖母)


まぁ、一部の呼び名については、殆ど呼ばれなかったり、呼ばれても補足を書くようにしておるゆえ、きっと分からなくなることが……無いと言い切れぬのじゃ……。

その場合は、どうか、話の流れからお察しいただけると幸いなのじゃ?


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― 新着の感想 ―
[良い点] 1136/1893 60%の境界越えぇぇぇ!!! やったぜ。 ・情報操作。当たり前ですよね。国民全員が賢すぎると難易度跳ね上がるかもですが。 [気になる点] イボンヌが死語になりつつあ…
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