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9.4-25 本物25

 一方、その頃。

 勇者たちを除いた他のメンバーたちは、というと——


「zzz…………む?…………はっ?!」がばっ

 

「あ、水竜さん。おはようございます」


——少し離れた場所にあった客間にその姿があった。この1ヶ月の間、水竜たちが長期滞在している団体客用の大きな部屋である。

 そこには、水竜と彼女の部下たち、そしてダリアを含むユリア班の面々の姿があって……。ミッドエデン情報局の事実上の行動拠点となっていたようだ。


 そんな部屋で、今日も水竜アルゴは目を覚ましたわけだが……。どうやら彼女には、朝から血圧が上がってしまうような出来事が襲いかかっていたようだ。


「ね、寝過ごした?!」


 窓の外から部屋の中に入ってくる太陽の角度。それがどう考えても鈍角で……。普段の朝とは異なる雰囲気を放っていたようである。なお、言うまでもないことだが、天変地異が生じて、太陽の位置が変わったわけではない。

 そんな彼女の寝坊には、どうやら理由があったようである。それについて、ユリアが話し始めた。


「今日くらいは良いと思いますよ?部下の方々もまだ寝ていますし……」


「い、いや、しかし……儂にはワルツ様を影ながら護衛するという任務が……」


「それなら、ワルツ様ではありませんが、カタリナ様から、休みを取るように、と指示を受けています。水竜さん方は、散布していた薬剤のせいで体調を崩してからというもの、殆ど休憩なく警備をされていたではないですか?治療によってケガや病気は戻っても、体力までは戻らないので、朝、起きれなくて、当然だと思いますよ?」


「カタリナ様が、儂らに休むよう指示を……?それはまさか……噂に聞く”お暇”というやつではなかろうな?!」


 噂に聞く”お暇”——すなわち免職。本来それは雇用側ではなく、労働者側が使う言葉なのだが、寝起きで混乱していた水竜にとっては仕方の無いことで……。彼女は、役に立たない自分たちがクビにされてしまったと思ってしまったようである。なにしろ、カタリナに治療を受けて、無理に警備に戻った彼女たちが出来たことは、結局、なにひとつとして無かったのだから……。

 とはいえ、カタリナの指示は、解雇通知だった、というわけではなく……。水竜たちの身体のことを考えたカタリナによる半強制的な休息勧告(?)だったようである。尤も、ワルツたちには警備など必要なく、水竜たちが自発的に警備をしているだけなので、カタリナにも水竜たちをどうにかする権限は無いのだが。


「カタリナ様は一方的にそんな酷いこと言いませんよ。とにかく今は、あまりお仕事に根を詰めすぎないことです。それに、もしも何かあったら、そのときは手伝うように指示があるはずですし……。それとも水竜さんは、また倒れて、カタリナ様のお世話になるつもりですか?」


「…………いや、そうだな。今日くらいは良いか……」


 そう言って、肩の荷を下ろすように、小さく溜息を吐く水竜。その後、次々に目を覚ました彼女の部下たちが、彼女とほぼ同等の反応を見せていたことは言うまでもないだろう。


 そんな部屋の中には、水竜たちやユリアの他にも、2人のサキュバスたちと、メイドもどきの少女もいて……。彼女たちは、水竜たちが目を覚ますのに合わせて、少し遅めの朝食の準備をしていたようだ。……そう。この宿泊施設(?)に食事のサービスは無いのだから。


「今日の朝食は鳥肉のソテーとサラダとパンと、あと野菜のジュースです。美味しいんですよ?このジュース」


「ダリアお姉ちゃん……毎日、ご飯がすごいです!」


「ありがとう、マリーちゃん」


「イブもダリアお姉ちゃんがすごいって思うかも。イブが朝食を作ったら……いつも大体、うどんかパンになるかもだし」


「それはそれで……すごく手間が掛かってると思いますけどね?」


 と、朝からうどんやパンの生地を練るだろうイブの姿を想像して、関心半分、呆れ半分な反応を見せるダリア。なお、そんな彼女も、早朝からパンの生地を練っている一人である。

 

 それからまもなくして、10人分の食事の準備が整った。


「朝食の準備、できたわよ?マーガレット(ユリア)?」


「あぁ、ありがとう。ダリア。でも……なんか量、多くない?」


「マーガレット……もしかしてダイエットでもしてるの?」


「いや、そういうわけじゃないけど……」


「だって、ほら。そこにいる戦士(水竜)さんたちが、沢山食べると思って。それに合わせて作ったら、ちょっと量が多くなっちゃったのよ」


「あぁ、水竜さんたちのことを考えたのね。でも、人の姿をしている内は、私たちと同じくらいの量しか食べないわよ?」


「ふーん、そうだったの…………えっ?人の姿?」


「あれ?ダリア、知らなかったっけ?」


 と、ユリアがそう口にした瞬間だった。

 その場にあったベッドで、最後まで眠っていた水竜の部下の一人が——


「zzz……」ボフン!「zzz……」べちゃぁ


——夢でも見ていたのか、不意に元の姿に戻ってしまったのである。具体的には巨大な軟体生物、もといクリオネの姿に。それも、バッカルコーンを展開した状態で……。


「「「「?!」」」」びくぅ


「アビス!いつまで寝ぼけている!さっさと起きよ!」


 ベッドどころか、部屋自体を壊してしまいそうだった部下のことを叱責するように起こそうとする水竜。

 その結果、アビスという名の部下は、ようやく目を覚まし、彼女は自分の姿に気付いて、猛烈な勢いで謝罪を始めるのだが……。幸い、朝食に影響はなく、その後で彼女たちは無事に食事を始めることになった。


 まぁ、無事だったのは朝食だけで、部屋の中やダリアの心境(?)も無事、というわけにはいかなかったようだが。



すこしだけ寄り道したのじゃ。

あとは、勇者たちの事を書くかどうか悩ましいところではあるのじゃが……どうしようかのう……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 1127/1892 ・やはりアルゴさんはドラゴン。 ・カタリナがパワーワード化してるのは気のせいではないはず。 [気になる点] クリオネ!? 色々あるんですね! [一言] 今日は久しぶ…
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