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9.3-38 悪魔38

「おやおや〜?もしかして、お爺さん方、自分が人に変身していたことを、いままで隠していたのですか〜?そうですか、そうですか〜。そんな皆さんに、私は聞いてみたいものです。この世界に、”正真正銘の人間”と呼べる存在が、一体どれだけいるのかを〜。おそらくは一握りどころか、皆無ではないでしょうか〜?それを考えるなら、隠す必要など、無いと思うのですが〜……」


 と、治療が終わった15人の町の人々を前に、そう口にしていたのは、言うまでもなくコルテックスである。この世界にいる人間という人間は、()()例外なく、獣耳が生えていたり、尻尾が生えたりしたので……。同じ感性の下でコミュニケーションを交わしていれば、姿形(すがたかたち)の違いなど、些細な事ではないか、とコルテックスは考えていたようである。なお、そんな彼女本人は、人間どころか生物ですらなかったりする。


 そのコルテックスの発言に対して、先ほどまで地竜系のドラゴンに戻ってしまっていた老人が、ようやく戻れた人の姿で、ゆっくりと返答する。


「人とは……いや、町で生きる者たちは、自分の見た目と大きく異なる存在が近くにいることを酷く嫌がる。自分よりも弱い存在ならば、愛玩動物として許容されることもあるが、大きく危険な存在には容赦が無いのじゃ。儂も若き頃、どれほど大変な目に遭ったことか……。婆さんがいなければ、人に変身して生きようとは思わんかったじゃろうのう……」


 と、かつて自身に降りかかっただろう苦難の経験を思い出しながらそう話す老人。

 対して、コルテックスは、その言葉に反論すること無く——


「そうですか、そうですか〜」


——と言って相づちを打つと……。老人に対して、こんな質問を投げかけた。


「では、お爺さん。1つ、お聞きしたいことがあります。正体を知られてしまったかもしれないお爺さんが、今、懸念していることは、何でしょうか〜?」


「それはもちろん……家に残してきた婆さんのことじゃ。儂自身は人に嫌われることに慣れておるが、婆さんはそうではない。このまま町に戻ったなら、儂はもしかすると、石を投げつけられることになるやもしれぬが……婆さんにもそんな辛い思いをさせとうないのじゃ。もしもそうなったなら……儂はどうして良いか分からなくなってしまうじゃろう……」


「なるほど〜。お爺さんは、奥さん想いなのですね〜」


 と、腕を組みながら、感慨にふけるように、うんうん、と何度も首を縦に振るコルテックス。その際、他の人々も、同じように頷いていたのは、皆が似たり寄ったりのことを考えていたからか。

 そのあともコルテックスは言葉を続けるのだが……。しかしそれは、老人に向けたものではなかったようだ。


「……という話なのですが、彼らの保護について、どうお考えですか〜?メシエ様〜?そこに立っていないで、こちらに来てはいかがですか〜?」


 コルテックスはそう口にすると、王城の入り口の方を振り向いた。

 するとそこには、いつの間にかメシエの姿があって……。彼はコルテックスたちのやり取りを、王城の入り口の影で、静かに聞いていたようである。どうやら彼は、3階にある執務室から、1階に降りてきていたらしい。

 そんなメシエは、首を重々しく一度だけ縦に振ると……。コルテックスの問いかけに対し、こう答えた。


「もちろん、保護させていただく事は可能です。もともとこの国では、むやみに人を傷つけることを法律で禁止しているので、もしもそれを犯すようなことがあれば、その者は処罰の対象になります。しかしながら……皆様は、保護されることをお望みにはなられていないのではないでしょうか?」


 その問いかけに対し、そこにいた人々は返答をしなかった。無言の肯定、といったところかもしれない。どうやら皆、保護されるということがどういうことなのか、その本質を、よく理解していたらしい。

 それを見てから——


「では、アルボローザ政府としては、希望する者に対してだけ、手を差し伸べる〜、ということでしょうか〜?」


——と、追加で問いかけるコルテックス。

 対して、メシエは——


「……その認識で相違ありません。静かに暮らすことを求めるのなら、兵士の護衛など無い方が良いはずです。”保護”とは見方を変えれば……四六時中、兵士に”監視”される事と、似たような状況のはずですから」


——そう言って、彼女の質問を肯定した。


 それを聞いてからというもの、コルテックスは、批判も同意もせずに、複雑そうな表情を浮かべて、考え込んでしまったようである。政府側の立場から考えるなら、ドラゴンたちのことを保護という名の下に監視対象にしてしまった方が、それ以上に余計な問題に発展しないので好都合だ、ということを彼女も分かっていたのだ。

 だがそれでも彼女は考え続けた。安直な答えではなく、もっと別の答えを探そうとしたのである。


 その結果、彼女には、なにやら見えてきたものがあったようだ。


「その辺は難しい問題ですね〜。そう、極めて難しい問題です。どうすれば国や民の平穏を維持できるのかを考えれば、そんな結論に至ってしまっても当然だと思います。……そんなメシエ様に、こんな提案はいかがでしょう?……逆に、ドラゴン様方の変身を禁止するというのは〜」


「「「え゛っ…………」」」


 コルテックスのその言葉に耳を、疑うような素振りを見せるその場の者たち。


 対してコルテックスにそれを気にした様子は無く……。それからも彼女の持論は続いていく。


さすがに、今日一日で最後まで書くのは難しかったのじゃ。

まぁ、しょうもない話なのじゃがの?

じゃが、たまにはこんな風に、頭を悩ませるというのも、悪くないかも知れぬ……などと考える今日この頃なのじゃ。


……なお、話し方は似ておるかも知れぬが、ドラゴン爺と妾は、赤の他人なのじゃ?

もちろん、アメも同様に、の?


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