表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1075/3387

9.3-13 悪魔13

ズドォォォォン!!


「もう、キリが無いっ!」


「そうですね……(ユキさんのおかげで、時々途切れていますがね……)」


 ある一時を境に、大量にやってくるようになった虫たちを、片っ端から退治していくユキと賢者。ユキはその場にあった岩や瓦礫などを投げ……。そして、賢者は天使モードに変わって、手の先端から無数のビームを発射していた。どうやら2人にとっては、その戦い方が、最も消耗の少ない戦闘方法だったようである。


 そんなこんなで、2人は文句を言いながら(?)、虫たちの襲来に対応していたわけだが……。そんな折り、2人の所へと、助っ人たちが現れた。


「お待たせいたした」


 自身の身長よりも長い槍を手にした水竜と——


「「「「「お待たせしました」」」」」


——彼女の後ろから付いてきた部下たち5人組である。


 ユキは後ろから飛んできたその言葉に気付くと、その手に持っていた岩を——


ズドォォォォン!!


——と、虫たちに向かって軽々と投げつけてから……。水竜たちの方へと振り返って、こう口にした。


「もう良いのですか?まだ、休憩されていても構わなかったのですが……交代の時間は、もう少し先ですよね?」


「いえ、戦場を前に、いつまでも休憩するなど、戦士の名折れ。休息はもう十分にございます」


「そうですか……。これは失礼なことを言ってしまいました。お忘れ下さい」


「失礼など……そのようなことはございませぬ。これが儂らの生きる道にございますゆえ」


 水竜はそう言うと、装備の確認をして、双頭槍を持ち直してから、手下のメイドたちに対し——


「さぁ、行くぞ!者どもよ!」


——そんな掛け声を向けた。


 すると、その声に呼応して——


「「「「「はっ!」」」」」


——とメイドたちが返答するのだが……。

 それから彼女たちが虫たちに向かって、魔法や武器で攻撃を加えようとした瞬間、突如として異変が生じる。


カサカサカサ……

ぷぅ〜ん……


 と、その場を大行進していた虫たちが——


ガサッ……ガサガサガサッ!!

ボタボタボタッ!!


——と、これまでになかったような、乱雑な動きを見せ始めたのだ。


 それはまるで、息が出来ずに悶えている、といった様子だった。地面をまっすぐに進んでいたはずの虫たちは、ジグザグに動き始め……。そして空を飛んでいた虫たちは、背中を下にして真っ逆さまに地面へと墜ち……。そこにいた虫たちは例外なく、皆が地面で苦しみ悶えているように見えていた。


 そんな虫たちの姿を目の当たりにしたユキは——


「急にどうしたのでしょうか……」


——と、思わず、何かが起こるのではないか、と身構えてしまうのだが……。その隣にいた賢者の方は、なにやら思い当たる節があったらしく、冷静にこんな推測を口にした。


「おそらく……ワルツ様が散布している殺虫剤が、効果を出し始めたのではないでしょうか?……ほら、あの煙です。あの黒い煙の中に、殺虫剤の成分が含まれていたのでしょう」


 と、先ほどユキと交わした会話の内容を思い出しながら、そう話す賢者。


 実際、彼のその推測は、まさにその通りで……。虫たちが奇行を始めたのは、ワルツたちが世界樹の中へと送り込んでいた殺虫剤の成分が、効果を出し始めたからだった。それ自体は、ワルツたちが考えた通りの展開だったと言えるだろう。そう、ここまでは……。


 だが……。

 世の中というのは、思い通りにならないことに溢れていて……。早速、この場でも、誰も予期していなかった問題が生じることになる。


 その始まりは、水竜の部下の一人が——


「…………っ!」


バタッ……


——と、急に倒れて、苦しみ始めた事だった。


「っ!アビス?!」


 まだ戦ってもいないというのに、急に倒れてしまった手下の様子に気付き、彼女の名前を呼ぶ水竜。


 しかし、異変は、それだけに留まらない。


バタバタバタバタッ……


 他の4人の部下たちも、一斉に倒れてしまったのだ。


「ミア?!ヴィオール?!ディスケ?!プラキス?!皆、どうしたのだ?!」


 その姿を見て、部下たち全員の名前を呼ぶ水竜。


 そして彼女本人も——


「……ふぐっ?!く、くるしっ……」


バタッ……


——その場に崩れ落ちてしまう。


「「?!」」


 その様子を見て、身構えるユキと賢者。2人は当初、水竜たちが、虫たちから何らかの攻撃を受けたのではないか、と考えたようだが……。しかしすぐに、そうではない、と賢者がその原因に気付く。


「攻撃ではない……?いや、まさか……ワルツ様が散布してる殺虫剤の影響か?!」


「いえ、でも……さっきからボクたちは息をしてますけれど、皆様のように苦しくなったりはしていないですよ?」


「しかし、それ以外に原因が……」


 そんなやり取りをしながら、その場の光景に目をやる2人。そこでは、水竜たちの他に、大量の虫たちも苦しみ藻掻いて……。その状況は、一つの可能性を示唆していた。


「もしかして、ワルツ様が散布してる殺虫剤は……人間には効かないが、変身したドラゴンたちには効くのではないか?!」


 と、水竜たちが、元々は人間ではなく、変身したシーサーペント(ただし部下たちの正体は不明)であることを思い出して、そんな考えに至る賢者。

 もしも彼の推測が正しいとするなら——どうやらワルツたちが殺害しつつあったのは、虫たちだけではない、ということになりそうだ。



もしも異世界にアー○ジェットがあったなら……そんなネタを取り上げておる物語は無いかのう?

というのも、ピレスロイド系の殺虫剤というのは、哺乳類や鳥類に対しては、ほぼ無害なのじゃが、それ以外の虫や爬虫類、魚類に対しては、神経毒として働くゆえ、例えばドラゴンに対して○ースジェットを吹きかけると……後は分かるじゃろ?

人間にとっては、フグの肝を食べるようなものなのじゃ。


もしも異世界にア○スジェットが1本でもあれば、冒険者ギルドでSランクも夢ではないのじゃ!

火炎放射器としても使えるしのう?


……などという、しょうもないネタを考えた今日この頃なのじゃ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 1075/1845 ・ドラゴンに殺虫剤! その発想はなかったw [気になる点] ドラゴンにも『爬虫類タイプ』と『大自然の化身タイプ』と『神のようなナニカ』がありますから、そう上手い話では…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ