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9.2-29 世界樹29

 家に帰ってきたランディーに対し、事情を説明しようとしたテレサたち。その時点で、テレサによる説明は、ほぼ終わっていたものの——しかし、ランディー側の話を聞く準備が整っていなかったらしく——


「……えっと……」ぷるぷる


——彼女はそこにいたテレサたちを目の当たりにしてからというもの、固まって……。そしてなぜか、小刻みに震えていたようである。おそらくは、この夜更けに、テレサたちが自宅に来ているとは思っていなかったために、自身が男装している理由をどう説明して良いものかと、考えあぐねていたのだろう。


 それを見たテレサが、助け船(?)を出す。


「……ふむ。まぁ、お主の趣味(?)についてはとやかく言わぬ。こんな夜更けに、どこで何をしておったのかについても、の?」


「えっと……これには深い事情がありまして……すみません……」


「いや、謝らねばならぬのは、むしろこちらの方なのじゃ。勝手に、家に上がって装置を使ってしまい、申し訳なかったと思っておるのじゃ。それともう一つ。……諸事情があって、この装置はもう使えぬのじゃ。後で新しい装置を作るゆえ、どうか許して欲しいのじゃ?まぁ……どうしてもこの装置が使いたいというのなら、止めはせんがの?」


 そう口にするテレサの横で——


カサカサカサ……

ぷぅ〜ん……


——と、今も蠢く大量の虫たち。そんな彼らは、半無限機関の燃料として、装置に備え付けられていた竈の中で、絶賛、燃え続けていた。

 それを見たランディーが、どこか納得げな表情を浮かべながら返答する。


「……良いんですか?その……もう1台作って貰っちゃっても……」


「もちろんなのじゃ?妾たちが使った結果、こうなったというのに、このままこの装置をお主に使って貰うというのは、忍びなさ過ぎるからのう……」


「じゃぁ……お言葉に甘えさせていただきます」


 そう言って、苦笑を浮かべるランディー。さすがの彼女も、虫まみれになっていた装置から出てくる蒸留酒は口にしたくはなかったようである。


 それからランディーは、改めて、テレサに対し質問した。


「それで、皆さん、どうしてここに?」


「やはり聞こえておらんかったか……まぁ良いのじゃ。実は早急に、大量の木酢液が必要になってのう?ベガ殿のために必要なのじゃ。じゃが、お主がおらんくて、しかし急がねばならぬ要件じゃったゆえ……無断で上がらせて貰って、装置を使わせてもらった、というわけなのじゃ?他、使ったのは装置とスコップだけで、薪などの消耗品は、一本たりとも、拝借しておらぬのじゃ」


 と、再び事情を説明するテレサ。その際、イブが、ビクゥッ、と全身の毛を逆立て、ゆっくりと後退し、手にしていた木の棒を、そこにあった薪の山へと戻していたようだが——幸い、ランディーは、その様子に気付いていなかったようである。


「そういうことでしたか……。装置は元々、テレサ様方に頂いたものなので、自由にお使いいただいて構いません。そこにある薪も使っていただいて、構いませんよ?」


「そう言って貰って幸いなのじゃ。じゃが、木酢液の材料になる薪に関しては、こちらで用意したのじゃ。……のう?ユリアよ」


「えぇ。マリーちゃんとダリアと一緒に、森で伐りまくってきました!」


「……というわけなのじゃ?」


「分かりました。他に使いたい道具などがありましたら、ご自由にお使い下さい。それでは……申し訳ありませんが、私は先に休ませていただきます……」


 そう言って、その場を立ち去るランディー。その表情や後ろ姿が、とても疲れているように見えていたが——


「(追求しない、って言ったからのう……。まぁ良いか……)」


——ランディーが戻ってきてから、最初に彼女へと言った言葉を思い出して、テレサは事情の問いかけを止めておくことにしたようだ。


「さてと……それでは作業を始めるのじゃ?」


 気を取り直したようにそう口にして、皆の方を振り向くテレサ。

 それからその場にいた虫たちを退治した後で……。彼女たちの木酢液作りが始まった。



 視点は変わり、王城と世界樹との間の空間に広がっていた戦場へと場面は移る。


「ふぬっ!」


スパパンッ!!


 双頭槍と水魔法を巧みに操り、大きな水の刃を作り出して、それを黒い虫たちの側面から滑らせ、彼らを上下に切断していく女性——水竜。

 それを真似るかのように、同じく槍を持った5人のメイドたちが乱舞していて——


スパパパパパパ……


——まるで人力ミキサー(?)のような刃の嵐が、虫たちに襲いかかっていたようである。水竜の手下のメイドたち5人組だ。


「……すごい」


 その様子を見て、感心した様子でそう呟くリア。

 それから彼女は、両手を黒い濁流へと向けると、自身も得意(?)の魔法を使って、その戦闘へと参加することにしたようだ。


「負けて……いられません……!」


「無理してはいけませんよ?リア。先ほども言いましたが、限界が近くなってきたら後退するのも必要な事です」


「はい、勇者様。分かって……います……!」


ズドォォォォン!!


 そして再開する、リアによる後方火力支援。


 といったように……。

 そこではまだ、世界樹からやってくる黒い虫たちから、王城を守るための戦闘が続いていたようだ。

 

 

今週のすーぷは……牛肉無し"びーふしちゅー"、なのじゃ!

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[良い点] 1060/1842 ・牛肉なしビーフシチューうまそう。
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