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9.2-27 世界樹27

その頃。家主不在の作業場を間借りしていたテレサたちは、ユリアたちサキュバス3人組(?)が戻ってくるまでの間、なにやら怪しげな作業をしていたようである。

 具体的には、テレサが地面を掘って、テレサが乾留・蒸留装置の配管を調整し、テレサが装置の火力を調整して、テレサが——といったように、主にテレサが1人だけで、乾留・蒸留装置を改造し、何か碌でもないこと(?)を企てていたようだ。その表情に、人の悪そうな笑みが浮かんでいるのが、その証拠と言えるだろう。


ちなみに。

 その場に居合わせた、イブとベアトリクスはというと——


「……やること無いかもだねー」


「テレサがああなってしまっては、どうしようもないですわね……」


——無理にテレサのことを手伝おうとはせず、遠目に彼女のことを観察していたようである。というより、手伝いようが無かった、と言うべきかも知れないが……。


 ただし。彼女たちには、何も役割が無かった、というわけではなったようである。


カサカサカサ……


「うわー……また来たかもだし……」


「……イブちゃん。(わたくし)、目覚めましたの。心を”無”にすれば、何も感じることはない、って!」シュバッ


スパァンッ!!


 と、丸めた紙束のようなものを、勢いよく、やってきた黒い虫の上へと振り下ろすベアトリクス。その動きには一切の迷いが無く、ベアトリクスのその言葉通り、彼女は無の境地に至っていたようだ(?)。


 といったように、ベアトリクスとイブには、作業場にやってくる虫たちへの対処という大役が任されていたのである。もう一言付け加えるなら——テレサによる装置の改造が終わるまでの間、やってくる虫たちの足止めを。


 ただ、ベアトリクスは良いとして、イブの方は、未だ、悟り(?)を開いていなかったようである。


「イブには……ちょっと無理かもだね……」


「ほら、イブちゃんのところにも、虫が来ましたわよ?」カサカサカサ


「はぁ……。イブ、何が悲しくて、虫さんたちのことを潰さなきゃならないかもなんだろ……」


ブチィッ……


「うぅ……!」ぞわぞわ


「ゆっくりやるから、気持ち悪く感じるのですわ?こう、勢いよくひと思いにスパァンと潰してしまえば、音も感触も分からなくなりますわよ?」


「うん……。次からそうやってみるかも……」げっそり


 ベアトリクスのアドバイスを聞いても、その言葉とは裏腹に、納得できなさそうな表情を浮かべるイブ。そんな彼女は、心の底から願っていたようである。……早く、ユリアたち3人が、森から木を切って戻って来ますように、と。


 しかし、現実は無情だった。


「あ、また来ましたわね?いったいどっから湧いてくるのかしら?」


「この虫さん……また、潰さなきゃダメかもなのかな?」


「何でしたら、私が退治しますわよ?」


「……ううん。イブの所に来たんだし、イブがやるかも……」


 イブは、ベアトリクスに向かって、苦々しい表情を向けながらそう返答すると、自身の装備を再確認した。武器になるようなものは、右手にある木の棒1本だけ……。すぐそこにあった少し長めの薪だけである。


「(魔法を使えば、嫌な気分にならなくて済むかもだけど、なんか、あんまり使っちゃいけない、って話かもだし……もう、この薪でどうにかするしかないかもだよね……)」


「さぁ、イブちゃん。応援しています。頑張って下さいまし!」


「じゃぁ、行くかもだよ?」


 イブはそう口にすると——


「……ごめんなさいかも!虫さん!」


ブゥン!


——手に持ったその薪を、足下にいた黒い虫に向かって、勢いよく振り下ろしたのである。


 彼女のその()()な腕力によって振り下ろされた薪は、しかし、虫を潰すのには十分な運動エネルギーを持っていた。結果、彼女の薪は、まっすぐに虫へと吸い込まれ——


ブチィッ……!


——と何か液体を飛び散らせるような嫌な音を立てて、虫を潰す。


 しかし。

 事はそれだけで終わらなかったようだ。


ズドォォォォン!!


「「?!」」


 イブが渾身の力で振り下ろした薪は、虫を潰した後で、勢い余って地面へと当たると……。そこを大きく削り、まるでクレーターができたかのような大穴を開けたのである。


 それを見て、ベアトリクスが驚愕する。


「い、イブちゃん、すごい腕力ですわね……」


「ち、違……」


 と、イブが自身の行動と結果の食い違いについて、説明しようとした——そんなとき。彼女の言葉より先に、穴の奥底から、事情を説明する物体が現れた。


カサカサカサ……

ぷぅ〜ん……


 イブが開けた(?)大穴から、まるで吹き出すように現れる大量の虫たち。ひ弱なはずのイブのことを鑑みると、どうやら、彼女の打撃と、虫たちの登場のタイミングが偶然重なって、彼女が大穴を開けたように見えただけだったようだ。


 そんな虫たちの登場を目の当たりにしたイブとベアトリクスは、焦りに焦った。1匹や2匹程度なら、潰せば何と言うことはないが、それが100匹、200匹ともなれば、退治されるのは自分たちかも知れなかったである。


 だが——そんな最悪の展開にはならなかった。現れた虫たちは、ただの1匹も、イブとベアトリクスには向かうことはなく、一斉に別の場所に向かって移動を始めたのだ。


 そしてその先には、こんなことを口にする狐娘の姿があった。


「ふっふっふ……。うぇーるかーむ、なのじゃ!」


 どうやらテレサが、乾留・蒸留装置を使った仕掛けの準備を終えたようだ。



地の文の量を減らせば、執筆速度は上がるのじゃ。

じゃが、それじゃと、地の文の存在意義が薄れてしまうのじゃ。


かといって、地の文を増やすと、書くのに時間が掛かる上、あまり書きすぎると、読みにくい文章になってしまうのじゃ。

薬も過ぎればなんとやら、というやつかの?

それに、最近は忙しくて、ゆっくりと書いておる時間も取れぬしのう……。


どうすれば良いじゃろう……。

どうすれば、思ったような文が書けるじゃろうか……。


今年こそは、その問いに対する答えを見つけたい……そんなことを考えておる今日この頃なのじゃ。


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