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9.2-24 世界樹24

「……やったかしら?」


『もう〜……どうしてすぐ、そういうフラグを立てるのですか〜?お姉様は〜』


 転移魔法を伴って飛んできた火球を、マクロファージから放ったビームと共に、元の場所へと押し戻したコルテックス。その光景を見て、ワルツは決まり文句とも言うべき言葉を口にしたわけだが——


『……何も無さそうだな?』


——そんな狩人の言葉通り、今度こそ、火球は、飛んでこなくなったようである。相手がもしも健在だったとしても、反撃されることが分かって、手を出しにくくなったのだろう。


「どうでしょう……。まだしばらく待ってみないと分かりませんけどね?」


 そう言って、どこか疲れたような様子で溜息を吐くワルツ。彼女はそう口にしながらも、張っていた気を、緩めることにしたようである。


 それからワルツは、狩人に対し、こんな質問を投げかけた。


「そういえば狩人さん」


『ん?何だ?ワルツ』


「寝なくても良いんですか?もう3時ですよ?」


『?!』


「いつも起きてる時間が朝の5時頃だから……もう、睡眠時間が2時間しか無いような……」


『ごめん、ワルツ!もう寝なきゃならない!コルテックス?これどうやって終われば良いんだ?』


『えーとですね〜、マウスの右側のボタンを押してメニューを開き、”ログアウト”を選んで下さい。そうすれば、画面が暗転するはずです』


『あー、これだな』ぽちっ『……ん?”ログアウトできない”って出るんだが……』


『あ〜、すみません。アトラスをいじめるために、設定を変えたのを忘れていました〜。あとは私の方で片付けておきますので、狩人様はそのまま寝て貰って結構ですよ〜?』


『お、おう、そうか……。じゃぁ、おやすみ!ワルツ』


 そう言ってヘッドセットを外し、物理的にログアウトした狩人。その前後でコルテックスが何やら不穏な発言を口にしていたようだが、それに対し、ワルツも狩人も突っ込もうとしなかったのは、何か言い知れぬ地雷臭を感じ取ったためか……。


 その後、コルテックスは、マクロファージ1号と2号を再び合体させて、大きなマクロファージの姿に戻すと……。外への移動を再開しながら、姉に対して、今後の行動について問いかけた。


『さて〜、お姉様〜?どうします〜?これから、増槽(たべもの)を確保して、宇宙(そら)に上がりますか〜?』


「そりゃ無いわね」


『どうしてですか〜?』


「外に出てからも攻撃を受けるって言うなら、本気で考えなきゃならないけど、樹の中にいるときだけ攻撃を受けるって言うなら、ぶっちゃけどうでもいいと思うのよ。誰かは知らないけど、単に自分の居場所を守りたかっただけ、って可能性もあるしね?それに、外に出たら、あの黒い虫にも対応しなきゃならないし……」


『そうですか〜。ようするに、面倒くさくなったのですね〜』


「言い方がちょっと気に食わないけど……まぁ、大体そんな感じね」


 そう言って、世界樹の幹にできた亀裂を、マクロファージと共に、外に向かって歩いて行くワルツ。

 

 結局、彼女は、その言葉通り、外に出ても、世界樹の頂上にいる襲撃者のところへは行かなかったようである。それが後に、一つの問題を引き起こすことになるのだが……。そのことをワルツもコルテックスも予測できなかったのは、この国、アルボローザを、表面的にしか知らない彼女たちにとって、仕方の無いことかもしれない……。



 その頃、アルボローザの城の敷地内にあった鍛錬場では——


「……眠い」


ズドドドドォォォォン!!


——と、睡魔に襲われつつも、光魔法を連射していたルシアの姿があった。

 そんな彼女の隣には——


「ごめんね。ルシアちゃん。こんな夜更けまで、手伝って貰っちゃって……」


——なにやらジョウロのようなものを手にしながら、そう口にするカタリナの姿もあって……。2人は、自分たちに任せられた役割である除虫菊(?)の育成に取り組んでいたようだ。

 なお、ルシアのその光魔法は、なにも、植物に与えるためのものではない。植物を食い荒らそうとしていた黒い虫たちに向かって放たれていたものであることを、注記しておく。


「まだ、頑張れそう?」


「うん……かなり眠たいけど、皆頑張ってるから、まだ頑張る!とくに、テレサちゃんには負けられないし……」


「そうですか……。もう少しだから、頑張ってください」


 そう言いつつ、ジョウロの中身に入っていた液体——ルシア製のマナを、一見して何もないようにしか見えない地面へと、何気なく注ぐカタリナ。

 すると、マナによって湿った地面から——


にゅにゅにゅっ!


——と、大量の双葉が芽を出して……。急激な速度で成長を始めた。


 それは瞬く間の出来事だった。

 種から芽を出した”植物”は、あっという間に30cmほどの背丈になって、花を咲かせたのである。それをカタリナが人工的に受粉させ、そしてさらにマナを与えると……。植物たちは、どういうわけか、見る見るうちに枯れていった。しかしそれは、単なる死では無い。”種”を残した結果の寿命である。

 そんな植物たちが完全に死ぬ前に、それを刈り取るカタリナ。種は、次の世代を育てるために……。そして、そのほかの茎や根の部分は、殺虫剤を作るための材料として回収し、白衣の中にいたシュバルに飲み込ませた。


 カタリナとルシア(とシュバル)は、そんな単純作業を繰り返し、相当量の植物を確保していたようである。



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