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9.1-29 黒い虫29

「……今晩は王城にてパーティーを開く予定ですので、皆様も是非ご参加いただけると幸いです」


 ランディーの酒屋——もとい、メシエの酒屋で、この家の本当の家主メシエから、今晩のパーティーの誘いを受けていたルシアたち一行。メシエとしては、ワルツたちだけで無く、ミッドエデンから来た全員をもてなしたかったらしく、本来、王城に招待されていないはずのユリアたちにも声を掛けていたようだ。


 その誘いを聞いて——


「パーティーかぁ……。ちなみに、ダンスとかあるんですか?」


——と、メシエに確認を取るルシア。そんな彼女は、姉のワルツと同じく、ダンスの踊り方が分からなかったようだが……。

 メシエはそんな彼女の事情を察したらしく、優しげな笑みを浮かべて、こう返答した。


「もちろんでございます。もしもダンスに自信が無い場合でも、当方のダンスに秀でた執事たちがエスコートいたしますので、ご安心ください」


「ふーん。でも……私はエスコートされなくてもいいかな。テレサちゃんと踊ろうと思うし……。テレサちゃんなら……少しダンスが下手でも、魔法でどうにかしてくれると思うから」


「……すまぬ、ルシア嬢。お主が何を言っておるのか、まったく意味が分かr」


「譲りませんわよ!ルシアちゃん!先約があるんですから!」ガシッ


「……いつ約束したのじゃ……」げっそり


「じゃぁ……3人で踊る?」


「えぇ、それなら構いませんわよ?」


「3人で踊るって……どうやるのじゃ?」


 と、実のところ、3人どころか、2人で踊る方法すら知らないテレサ。そんな彼女は、言霊魔法を使って、ルシアたちの踊りを上手くする——のではなく。自分たちの拙い踊りを見た周りの者たちの記憶をいかにして消そうかと頭を悩ませていたようだ。


 一方で——


「イブ……1回でいいから、社交ダンス、っていうものを踊りたかったかもなんだよねー。マリーちゃんは?」


「奇遇ですね?イブ師匠。マリーもです!」


——その場にいた年少2人組は、ダンスパーティーの開催を好意的に受け止めていたようである。

 ただまぁ、ダンスについて、何か誤解していたようだが。


「確か……お互いの尻尾を追いかけて回るかもだよね?」


「それ、ドッグファイトじゃろ……」


「マリーは……女性が男性の背中に回って、首に腕を引っかけて、こう、グイッ、ってやるやつしか知らないです?」


「それプロレスか、CQCか、暗殺術なのじゃ……。お主たち、パーティー会場で、何をする気なのじゃ?」


「いえ、テレサ様。それがボレアス式のダンスです」


「……メシエ殿?多分、このままじゃと、死人が出る気しかしないゆえ、パーティーには参加するが、妾たちは見ておるだけでも良いかの?」


「……承知いたしました。ミッドエデンの代表とも言えるテレサ様がそう仰られるのでしたら、非常に残念ではございますが、そのように手配いたします」


 と、テレサの目が、冗談を言っているように見えなかったらしく、重々しく頷くメシエ。

 そんなテレサの言葉を聞いていた他の者たちは、事情を理解していたユリア以外、皆が抗議をしたげな表情を浮かべていたようだが……。結局、その場で、反論する者は出なかったようである。どうやら皆、どさくさに紛れて勝手に踊るつもりらしい。


 そんな中。

 ユリアは横にいた従姉妹に対し、小声でこんなことを問いかけていたようだ。


「(で、ダリアはどうするの?)」


「(どうするって……さすがに今回は無しね。っていうか、私、ミッドエデンの人間じゃないし……)」


 と、ダリアが、ユリアに対して首を振った——そんなときだった。


「あの……もしよろしければ、ダリアさんもいかがですか?」


 まるで、ダリアの退路を絶つかのように、メシエが彼女のことをパーティーに誘ったのだ。


 その際、ダリアの姿は、元のサキュバスの姿ではなく、悪魔族の女性のような格好に変装していたようである。何しろ、彼女たちが今いた建物は、アルボローザの重鎮であるメシエの屋敷の一部。ボレアス特有の種族であり、諜報に秀でた能力を持ったサキュバスが、土足で足を踏み入れて良い場所ではなかったのだ。

 ……そのはずだった。


「いつも妹が贔屓にさせていただいている、()()()()()万屋(よろずや)の方です。ミッドエデンの皆様ともお知り合いの様子なので、今宵は是非、共に、宴をお楽しみいただきたいのですが……」


「……ダリア。あんた、ボレアス出身だってこと、思い切りバレてるわよ?っていうか何?万屋って……」


「私、もう……ダメかもしれない……」げっそり


 こうして、1枚1枚と、化けの皮を剥がされていくダリア。

 その結果、彼女も、パーティーへと参加することになり……。それから皆、その場は一旦解散して、着替えることになったようようである。


 それから、ルシアがランディーの酒屋を出ようとした、そんなタイミングで——


『ルシア?いま良い?』


——彼女の無線機に、ワルツから声が飛んできたようだ。



ここら辺が、9章前半で話が最も広がっておる部分なのじゃ。

あとはここから、収束していくだけなのじゃ?

伏線とフラグと駄文を回収しながらのう。


……駄文は回収できぬかもしれぬがの。


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[気になる点] 「私、もう……ダメかもしれない……」げっそり ↑このセリフの汎用性よ。
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