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9.1-20 黒い虫20

『ぎゃぁぁぁぁぁ?!』


 到底、女性が発するとは思えないような叫び声。しかしそれは、紛れもなく女性の声で、さらに言えば、アルボローザの王城の中にいたメイドが発した悲鳴だった。

 その声を来賓室の中で聞いていたワルツは、眉を顰めながら、カタリナたちに対し、問いかける。


「……何の声?」


「「さぁ?」」


「ま、いっか。で、さっきの話なんだけど——」


『うわぁぁぁぁぁ?!』


「——うるさいわね」


 ワルツが話そうとすると、断続的に飛んでる、断末魔のような悲鳴。

 正直なところ、部屋の扉の外で起こっている出来事については、あまり首を突っ込みたくなかったワルツだったが、いい加減、悲鳴を無視できなくなったのか、彼女は扉を開けて、外の様子を確認することにしたようである。


ガチャッ……


 そして、彼女は開けた扉から首だけを出して、廊下を覗き込んだ。

 するとそこには——


「うおぁぁぁぁぁ?!」

「ひぃぃぃぃぃ?!」

「うひゃぁぁぁぁぁ?!」


——と奇声を上げながら逃げ惑うメイドたちの姿が……。


ガチャリ……


 メイドたちが一体何から逃げ惑っていたのかは、ワルツには分からなかったが、彼女はそっと扉を閉じると、部屋の中で心配そうな表情を浮かべていたカタリナと水竜たちに対し、何が起こったのかを推測しながら、その説明を始めた。


「これ多分ね……まずいことになったわ」


「「えっ……」」


「王城に誰か攻め込んできた、って感じよ?それでみんな逃げ回ってるみたい。さっきの悲鳴は、もしかすると——誰か殺られて上げた断末魔だったのかもしれないわね……。よく分かんないけど……」


「……エクレリアですか?」


「どうかしら?扉から覗き込んだ感じだと、相手の姿までは見えなかったから、分からなかったわ……。城まで攻め込まれてる時点で、もうこの国はお終いかもしれないわね……」


 そう考えている内に、ふと、他の者たちのことが心配になってきたワルツ。隣の部屋いる勇者たちのことは、とりあえず置いておくとして、彼女が一番最初に心配したのは——やはり妹たちのことだった。

 というのも、先ほどの無線機での会話では、ルシアたちがまもなく王城にやって来る、という話だったのである。それを考えれば、外からやってきたと思しき侵略者とルシアたちが衝突する可能性が非常に高かったのだ。


 結果、ワルツは、再び無線通信システムを使い、妹たちに問いかけた。


『ルシア?貴女たち大丈夫?』


 するとややしばらくあって、ルシアから返答が戻ってくる。……ただし、なぜか言葉に詰まりながら。


『な、何のことかなぁ?』


『……もしかして何かした?』


『…………』


『……何かしたのね?』


 問いかけても返答しないルシアの様子から、事の次第を察した様子のワルツ。どうやら王城の中が騒がしかったのは、侵略者がやってきたから、というわけではなかったようだ。


 それからワルツは、先ほどの無線の内容を思い出して、思い当たる原因を口にした。


『……なるほど。虫ね?』


『んぐっ?!』びくぅ


『虫に……逃げられたんでしょ?』


『え、えっとねぇ…………うん……』しょんぼり


『王城の中、すっごい騒ぎになってるわよ?』


『でもこれ……やらないとダメなことだから……。お姉ちゃん、後はお願い!』


ブツッ……


 そして切れるルシアとの通信。

 一歩間違えれば、彼女のたちの行動は、アルボローザ側に侵略行為と受け取られてもおかしくなかった。それを危惧したワルツとしては、どうやって誤魔化そうかと、必死なって考え始めたようである。


「どうしよう……この騒ぎ。ルシアたちが虫を放したことが原因らしいわよ?」


「どうしようって……もしかして、この騒ぎを、アルボローザ側が問題視するかもしれない、ってことですか?」


「そう、それよ……」


「何か悩むことがあるのでございますか?主様なら、楯突くモノなど、皆殺しにしてしまえば良いと思うのでございますが……」


「いやね?水竜。政治的、問題って、そういうわけにもいかないのよ……。駆け引きって言うモノがあるからさ?あること無いこと、いつまでも引きずられて、未来永劫、昔のことを根に持たれて恨まれる国、ってあるのよ……」


「そういうものでございますか……」


 元はドラゴンで、力だけがすべてだった水竜にとって、人の国同士のやり取りというのは、少々難しい話だったらしく……。彼女はワルツの言葉を聞いても、よく理解できていない様子だった。なお、ワルツが口にした”根に持たれて恨まれてる国”というのがどこの国なのかについては、言うまでも無いだろう。


「まだ今なら、有耶無耶にできるかしら?」


「有耶無耶にする気なんですね……」


「正面から”私たちが悪かったです、すみません”なんて、間違っても言えないわよ……。そのせいで、謝罪と賠償を求められても嫌だし……」


「……何の話ですか?」


「ううん、なんでもない。まぁ、とりあえず、火消しに行きましょうか?」


 そう言って、椅子から立ち上がるワルツ。その後ろをカタリナと水竜が続いて……。彼女たちは、ワルツのホログラムを使って透明になりながら、王城の中に逃げ出したという黒い虫の退治と、騒ぐ者たちの口封じ(?)に出かけることにしたようだ。



ちょっと諸事情があるゆえ、1日に書く文量の調整を行わせてもらうのじゃ。


・ 『円舞曲』の最新話の投稿

・ 『円舞曲』の次話の原稿作成

・ 『円舞曲』の修正

・ 『テンキュウノアメ』の最新話の投稿

・ 『テンキュウノアメ』の原稿作成


これらを毎日書いておるゆえ、色々と限界なのじゃ。

……主に時間がの?


というわけで、苦渋の選択として、毎日更新は止めること無く、1話あたりの執筆量の下限を2000文字まで減らさせてもらうのじゃ。

修正とアメの話を隔日更新にしたのでは、いつ書き終わるか分かった物では無いからのう……。


誠に勝手ながら上記の件、ご了承いただけると幸いなのじゃ?


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