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転生

目を覚ました時に目に入ってきたのは、全く知らない天井だった。


(あれ、ここどこだっけ?なんか見たことない場所だしやけに古そうだな。えっと、さっきまで何してたんだっけ?確かいつもみたいに図書館で三国志を読んでたはずなんだけど……どう考えてもここは図書館じゃないな、うん。なんだかよくわからんけど、とにもかくにも現状把握が最優先だな。)







(なるほどなるほど、まずここは図書館ではないことは分かったぞ。そしてこの体はどう考えても子供、いや赤ちゃんだな。つまりは小説であったような転生ってやつか?ま、今できることはあんまりなさそうだし気楽に行くかな。)


 何とか混乱しそうになる頭を押さえて一通りの現状が理解できたあたりで、人が何人かやって来た。

 やって来た人は何か話しかけてくれているが、言葉が分からないためいみがさっぱりだ!


 はぁ、時間をかけて情報を集めるしかないのか、厄介なことだ。だが生きていくためには必要であるだろうし頑張るしかないか。
















 転生してから十五年が過ぎて、今は十五歳になっている。


 どうにかその間に現在の自分の状況について把握することと、ここで使用されている言葉を理解できるようにはなった。


 まず、僕が転生したのは三国時代であり、父親があの有名な袁紹(えんしょう)であることが分かった。そして、僕自身は袁紹の二男の袁煕(えんき)になっていることも合わせて知ることができた。実際に会ってみた袁紹は、ちょっと強面だが結構なイケメンであった。体全体から男らしさがにじみ出ているようで、想像以上に風格があった。

 そのおかげなのか、僕もそれなりにイケメンになっている。少なくとも前世と比べたら明らかに今の方が容姿がいいだろう。

 とにかく、転生することになった袁煕とは歴史において袁紹の息子の中の一人であるが、父親から柔弱であると評されて袁紹の死後にあった後継者争いにも絡むことはなかった。その後、あれよあれよという間に時代の波に流されていき、最後には逃走先で殺されてしまうといった人生を送った人である。自分の知識からすると、印象が薄くあまり有能ではなさそうだ、というイメージを持っていた。

 そして残念なことに、僕が転生した人物こそがその袁煕であったようなのだ。

 つまり何もしなかったら、将来殺されて死んでしまう可能性が高いということになる!


 このことを理解してからは、袁煕の運命を歴史とは変えられるように書物を読んだり体を鍛えたりと努力してきた。

 ただ、周囲の人々の前では自分の知っていた袁煕の人物像から離れすぎないようにふるまうことを心掛けていたので、周りからの評価は今の所高くはない。

 何より、子供時代は宦官と士人との闘争の真っただ中だったため、目を付けられるのを極力避けるようにしていたという意味もありはするのだが。


 そのように過ごしてきたが、昨年になって大きな変化が訪れた。

 董卓(とうたく)による宮中の掌握である。

 董卓は当代随一の猛将である呂布(りょふ)を配下に引き入れ、圧倒的武力を背景として政治をほしいままにするようになっていた。その董卓を首都である洛陽らくように呼び寄せたのは袁紹であったが、董卓の振る舞いを見て次第に対立するようになったのだ。

 結果、袁紹は洛陽から逃亡する羽目に陥り、冀州きしゅうへと行くことになった。

 しかし袁家の影響力を懸念した董卓が袁紹を太守に任命したことによって、袁紹が犯罪者とされることは無かった。

 そのため袁煕も、現在はそれなりに平穏といえる状況で暮らしている。




 そのように冀州で暮らしていた袁煕に、やっと待ちに待っていた機会がやって来た。

 それは、父親との長期にわたる確実な別離である!

 ………とはいっても戦争に行くだけなので、それがどれ程の期間にわたるのかについて確実なことは言えない。それでも袁煕の予想としては、最低でも一年以上会うことはないだろうとは考えている。

 もちろん戦争に行くということで心配している面もあるが、歴史から考えてみると生きて帰ってくる可能性が濃厚だと思われるので、心配する気持ちが薄いだけだ。


 ちなみに戦争とは反董卓を目的としたもので、袁紹の軍はまず諸侯連合に参加するために出陣していくことになる。

 これは、年の初めに東郡太守である橋瑁(きょうぼう)から呼びかけがあり、それによって諸侯が兵をあげたのに合わせて出陣していくためだ。


 とにかく、袁煕はそれに合わせてできるだけ今後の対策をしておきたいと思っており、袁紹のいない間に少しでも自分に有利にしようといった目論見を抱いている。

 とりあえず行いたいこととしては、何よりも人材を集めることである。

 史実では、曹操(そうそう)が積極的に数多くの名臣を集めたことよって建国の大きな礎としている。ならば、それによって人材が流れてしまう前に人を集めよう、という考えなのだ。

 しかし、現状ではお金の問題などもあるためあまり多くの人を連れてこれない。加えて、現在の袁紹の配下のなかに『これは』と思うような人材もいないため、できることはたかが知れている。

 そのため袁煕は、将来性を重視して何人かの手足となって動いてくれるような人材を探そうと考えていた。そうやって集めた人材を、時間をかけて使える人材へと成長させていこう、といった程度の計画しかないのではあるが。




 とりあえずはその程度かなと考えながら、慎重にかつ有意義な時間になるよう過ごしていこうという決意を固めた袁煕は、袁紹軍の戦支度が終わり出陣していくのを待っていた。


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