合成生物2
「……で、わざわざ俺を呼び出した訳は何?」
小柄な少年は不機嫌そうに目の前に立っている青年たちを睨んだ。
「ほらほら。俺らが中学生として乗り込むのは無理だろ?」
「ラビアは確実に……おぶほぉっ!!」
少年が何かをいいかけると、青年の隣にいた金髪の女が少年の腹を思いきり殴った。
「なんで私だけなのよ!! 本当に、要らないところだけバティに似るんだから!!」
「ラビア、落ち着いて」
話が進まないのにうんざりしたのか、もう一人の青年が口を挟んだ。
「とにかく中に入り込んだら、拓也君を見つけてくれればいいから。……君にしかお願いできないんだよ」
「……。わかったよ」
少年は青年の真剣な眼差しに負け、頷いた。
*****
悲鳴があがり、拓也と俊明は反射的にそちらの方向に目を向ける。
拓也より身長の高い俊明は何かを見たらしく、珍しく動揺した。
「やばっ! おい、逃げるぞ!!」
「え!?」
「とにかく向こうの気の影まで走れ!!」
俊明は人混みの外の大きな木を指差した。
拓也はよくわからなかったが、どんどん大きくなる怒号やら悲鳴やらから逃げるようにして俊明に続いて人混みから抜け出した。
そして、木の影へ滑り込む。
俊明は余程焦っているのか、息を潜めて人混みの方を見つめた。
拓也も人混みを見つめる。
俊明と拓也が動いたのをきっかけに、人がバラバラと四方八方に逃げ出した。
そして、残ったのは……。
「なん……だ? あれ……」
拓也は掠れた声を搾り出した。
「あれが『合成生物』だろ」
拓也と俊明は人混みのあったところに残っている三体の獣を見つめた。
遠くからでは犬のようにしか見えないが、それは何かを貪り食っていた。
それが何か理解した瞬間、拓也は口を手で塞いだ。
「うっ……」
「……」
その獣らが食べているものの残骸が周りに散らばっていた。
地面は、まるで赤い雨が降ったあとかのようだった。
獣が加えているものは、長いチューブのようなものだった。
俊明もそれから目を離して拳を強く握った。
足が僅かに震えている。
二人はしばらくそこから動けなかった。