*5*
俊明は何回か屈伸運動をしてから地面を強く蹴りあげ、黒スーツの男達の横を通りすぎた。
迷うことなく、黒スーツの一人が俊明を追いかけた。
そのまま、俊明は校舎の中に姿を消した。
拓也はそれを見送ってから深く息を吸った。
「東、上手くやれよ」
「わかってる。そっちも気をつけて」
「おう」
拓也は俊明と同じように黒スーツのもとへ走った。
黒スーツの意識が拓也の方へ動いたのを見計らって東は生徒たちの中へ紛れ込んだ。
そして、上手く人の影に隠れながら一人一人の縄をきっていく。
東は黒スーツが拓也を追わない可能性の方が高いと考え、合図を出して一斉に生徒を逃がそうと考えていた。
しかし、あっさりと黒スーツは拓也を追いかけていってしまった。
「……どういうことだ?」
嫌な予感がしたが、東は二人と再び合流できることを願いながら生徒の縄を切っていった。
「速いって!!」
拓也は後ろから追いかけてくる黒スーツを見ながら叫んだ。
拓也は俊明と同じように校舎へ潜り込んでいた。
恐らく残っている人は少ないと思うし、廊下の曲がり角でふりほどけるかもしれないという俊明の意見だ。
そのとき、少し遠くで銃声がなった。
「!?」
拓也は驚いて思わず上を見る。
一階で物音がしないため、上でなったのだろう。
拓也は二階へと続く階段を上った。
校舎に残っている生徒は少ないはずだ。
つまり、俊明が撃たれた可能性が高いということだ。
二階へ上がると、少し奥の方で黒スーツと俊明の姿を見つけた。
俊明は腕を庇いながらじりじりとあとずさっている。
そのとき、俊明が叫んだ。
「おいっ! 後ろ!!」
「……え!?」
拓也は慌てて後ろを振り返ろうとするが、それより先に頭に強い衝撃が走り、拓也は意識を失った。