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*3*

 拓也たちはこっそりと靴を履いて校舎の裏庭へ移動した。

「リアルなドロケイかよ……」

 拓也と東はこっそりと校舎の影から十メートル程先にいる生徒たちの様子をうかがった。

 二十人程の生徒たちは縄で腕を縛られ、座り込んでいる。

 その生徒たちを見張るように黒スーツの男が二人立っている。

「よし、東。捨て身で行ってこい!」

「ふざけんなよ!!」

「やっぱり無理か……」

「当たり前だ!」

 拓也は深くため息をついた。

 どうすれば、捕まらずに生徒を逃がせるか。

 残念ながら拓也は頭が回る方ではなく、成績も悪かった。

 いい案が思いつかないまま数分が経過する。

「……東」

「何?」

「全然思いつかねえ……」

「俺もだよ……」

 東もお手上げというように肩をすくめた。

 更に考え込む二人は忍び寄る人影に気がつかなかった。


*****


 少女は泣き腫らした目を擦って屋上のフェンスを掴んだ。

 何故、私ばかりがこんな目にあうのだろうか。

 死ねばいいのに。

 小さく呟いてみる。

 誰に対してかもわからない。

 いや、今のはきっと自分に対しての言葉だ。

 長く伸ばした髪が追い風に吹かれ、なびいた。

 空を見上げる。

 鬱陶しいくらいに綺麗な青空だ。

 久しぶりに見た空すら心一つ動かず、けれども最初の一歩が踏み出せないから、しばらく空を睨んでいた。

 何故かわからないけれど、また視界が歪み始めた。

 涙が溢れる前に少女は目を擦った。

 その涙が、空が眩しかったからなのか、悲しかったからなのか、やはりわからなかった。

 そのとき、急に運動場に大勢の生徒が出てきた。

「!?」

 今は授業中のはずだ。

 少女はわざわざ授業を抜け出していたのだから。

 どこからか、破裂音や悲鳴が聞こえてくる。

「……何?」

 少女はただ運動場を見下ろした。

 生徒たちは何かから逃げているようだ。

 では、何から?

 少女は生徒たちから目を離して生徒たちが出てきた方向を見る。

 そこには、三人の黒い服を着た男が立っていた。

 よく状況がつかめないが、とにかく少女にとって、都合の悪いものには違いない。

 少女は唇をきつく噛み、フェンスを乗り越えようとした。

 そのとき、コツンと後頭部に何かが軽くあたる。

「!?」

 少女は驚いて後ろを振り返った。

 少女の後頭部に当たったのが何か、すぐに理解できた。

「動くな。言う通り動け」

 後ろには黒いスーツを着た男が立っていた。

 少女の額には、銃口があてられている。

 少女は少し眉を動かしただけで、まっすぐと黒スーツの男を見据えた。

 そして微かに呟いた。

「そうしたら、私は死ねるの?」

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