静かな夜 3
目の前に、真っ赤な炎。
燃え上がる赤い壁の向こう側に幼い少年の姿が見えた。
「――友莉!!」
「――!?」
友莉はガバッと勢いよく起き上った。
「……友莉?」
火の番をしている凌と目が合った。
「どうかしたのか?」
「え……あ、ごめん。ちょっと夢見てた」
笑みを浮かべるが、上手く笑えなかった。
服の下に汗を掻いていて、少し寒かった。
「……そっか」
凌はあえて深く追求はしなかった。
代わりに、話題を切り替える。
「……なあ」
「え?」
「……ここにはさ、色んな奴がいると思うんだ」
「うん」
「えーっと、なんて言うのかな。だからさ、あんまし……」
そこで凌は友莉から目をそらした。
「……あんまし、人を信用しない方がいい」
「……いきなり、どうしたの?」
「多分、この中に外と通じてる奴がいるよ」
「……え?」
そこで凌は黙ってしまう。
――外と通じてる。
それはつまり、友莉たちをここに連れてきた側の人間がこの六人の中にいる。
凌はそう言いたいのだろうか。
「凌は……知ってるの? 誰がそうなのか」
「……なんとなくな」
凌はそう言うと通信機を見る。
「おっと、時間だな。友莉も寝れなくても横になっといた方がいい。……おーい、拓也」
凌が軽く拓也の方を揺らすと、拓也は少し呻いて目を開けた。
「交代」
「ん……。あ、そっか……。ありがと」
拓也はまだ眠そうだったが、数回目を擦って体を起こした。
凌は拓也が体を起こすなり、すぐ横に寝転がっていびきを掻きはじめた。
友莉も静かに横になった。
……けれどしばらく寝ることはできなかった。
拓也はすぐに眠りについた凌を少し見て肩をすくめた。
よくこんな状況ですぐに寝付けるものだと感心してしまう。
いくらいつもは能天気な拓也でも、今回ばかりはあまり眠れなかった。
――これでやっと一日か。
まるでもう一ヶ月が経ってしまったかのような感覚になる。
いつ、ここから出られるのだろうか。
……それとも出る前に死んでしまうのだろうか。
一人で過ごす静かな夜は少し怖かった。
*****
「……役立たず」
一人の青年がぼやいた。
「いや、なんでかわかんねーんだよマジで」
パソコンに向かっていたもう一人の青年が慌てて言い返す。
そんな二人のやり取りを見守りながら、金髪の女がため息を吐いた。
「……きっと大丈夫よ。私たちは自分たちができることをやりましょう」
静かな夜が明けようとしていた。




